子どもとうさぎとねこと音楽のある風景

息子いっちゃん(2006年3月生)と3匹のうさぎと3匹のねこのいる歌と琴が好きな主婦の記録

本の紹介 「どこかに生きながら」小川未明・作 

2022年01月29日 | みじかうた
「どこかに生きながら」
( 小川未明・作
  いもとようこ・絵
  白泉社 
  写真 Amazonより )

このごろ、いもとようこさんの絵本を借り続けている。

私にとって、いもとようこさんの絵本は、「かわいいだけの絵本」と言ってもよいぐらいの位置づけだった。

小さい子どもたちが好きなかわいらしい絵、とってもかわいいけど、どこかキャラクターという感が否めなかった。

しかし、オスカー・ワイルド原作の「幸福の王子」のよい絵本を探していて、なかなかよい絵の本が見つからず、人から紹介してもらったのがいもとようこさんの「しあわせの王子」だった。

ほとんど王子とツバメしか映し出されていない絵。
しかし、深い愛と深い悲しみが絵本からにじみ出て流れ出して私の涙もともに流れた。

子どもたちに冬ごとに必ず読み聞かせしているが、毎回、涙を抑えられない。

私の中では、いもとようこさんは胸を打つ作品を描く芸術家となった。

そして、こんなにかわいい作風のいもとさんだが、実は悲しみの極まった無常を描いた絵本もたくさん出されている。

だから、この「どこかに生きながら」を借りたとき、私は緊張してドキドキしながら読み進めた。正座して覚悟をもって読んだ。

胸をつかまれるような場面はなくてほっとしたけれど、絵が別の世界へとにじんでゆくような最後の場面で、何とも言えない寂寥を覚えた。

どんなに過酷な中でも子ねこを守ろうとする母ねこの愛を描いている。
にじんだ絵の寂寞感に覆いかぶさる愛の深さ、尊さが果てしなく広がっている。

また、小川未明の格調高い文体にも上質な文学を味わえる。

もう売っていない本のようで、惜しい。

かなしむという言葉が、悲しむ、哀しむ、愛しむ、という漢字をもつのだと感じられる本だと思う。

いもとようこさんは類まれなる芸術家であり、心の深淵を描く方。
ぜひ読んでみてください。
















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