10年ぐらい前、就職活動を意識し始めた頃、社会勉強のために買った本。
伊藤先生は、伊藤塾という司法試験塾の塾長なのだが、この本を読むと、金儲けのためではなく、本当に社会のためになる法曹家を育てたい、また専門外の学生、サラリーマンにも憲法の理念を理解をしてもらいたいという、高い理想を掲げて執筆された教科書だと思います。この誠実さは、早稲田セミナーの成川先生でも、かなわないかもと思うくらい。
なぜ、再び読んだかというと、「歌声喫茶ともしび」でもらった、「九条世界会議」のパンフレットに参加者として名前を連ねてたから。直接対話をしたことがなくても、こういった出会いで人間はつながっているのです。
内容について、印象的なのは以下
憲法は、帝国主義などの国家権力の行き過ぎを反省し、国家権力を制限するもの。基本は国家が守るもの。ドイツは、ナチスの反省もあり、国民も守るものと書いてあるが、日本は国民の守るものとは規定してない分、自由を尊重している。(もちろん、国民は、民法や刑法や道路交通法は守らなければダメですよ)
日本の憲法は、英米独仏などのごちゃまぜで難しい。まあ、だからこそおもしろいと先生は断言してましたが。
人権について、最重要視して、テキストを編集。
ダブルスタンダードという考え方で、人権の重要視する順位を規定する構造。
精神的自由が最重要
経済的自由は二つにわかれ、自由国家的と社会国家的
自由国家は個人の財産の自由で、社会国家より重視
社会国家的自由は、農業の政策保護などで国民を守る手法であるが、法律は専門ではないので、最低限の規定をさだめ、経済、社会の専門家に任せる裁量を与えている。
しかし、終わりにの意見が一番印象的。
「憲法とは、キリスト文化圏の個の尊重の価値観をまとめたものであり、今後は、地球や自然の融和について考えた、法体系、いや、それより大きい世界秩序が必要なのかもしれない」
といった、ニュアンスの記述。
伊藤先生は、平和や人類の幸福についての高い理想をもっていることが、感じられ、改めて深い感銘を得られた。
全ての日本の大人にお勧めの一冊(まあ、難しいと思われる人も多々いるだろうが、大げさに書く)。