トーキング・マイノリティ

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軍縮問題 その②

2006-06-29 21:13:17 | 読書/欧米史
その①の続き
 平和運動家たちは依然として軍縮が進まない理由を、覇権国家や拡張主義的政治家に責任を着せようとする。タカ派政治家はよく彼らの槍玉に挙げられるが、ことはそう単純ではない。戦前の軍縮が頓挫した背景をまた紹介したい。

「軍備縮小はこのように様々な難問にぶつかったが、ありとあらゆる駆け引きが行われ、ことに高給をもって抱えられた兵器会社の手先がしきりに活躍した。 現代資本主義社会では兵器や破壊のための器物の製造は、最もわりのよい商売に数えられる。これらの兵器は諸国の政府に売りつけるために製造される。原則と して戦争するのは政府に限られているが、しかもおかしなことに、兵器を造るの方は私企業が担当するよう仕組まれているからだ。これらの兵器会社の主な所有 主は莫大な富を抱え込み、多くは諸国の政府と緊密な関係を結んでいる…高額の配当金を生む兵器企業の株は往々にして争って買い込まれ、公の生活を営む多くの名士たちが、これらの兵器会社の株主に名を連ねている

 戦争及び戦争の準備は、これらの兵器会社の利益を意味する。彼らは大仕掛けに死を取引し(それゆえ彼らは「死の商人」と呼ばれる)、彼らに金を払うものなら誰にでも、破壊の機械を売りつける。国際連盟が日本の中国侵略を非難している時にイギリス、フランスその他の兵器会社は手放しで日本と中国の双方に兵器を供給していた。もしも、本当に軍縮が実現されたとしたら、これらの兵器会社は倒産してしまうに決まっている。だから彼らは彼らの立場から見て、「破局」を意味する事態を防止するために全力を傾ける。しかもそれだけで満足しない。

 国際連盟で私企業による兵器の生産状況の調査のために特定された一委員会は、これらの諸会社が戦争気分を煽り、自国に好戦的な政策を採用するように説得している、という結論に達した。またこの種の諸会社が、様々な国の陸海軍事費に関する偽造の報告書を流布して、その他の国の軍事費支出の増大を誘おうとしていることも判明した。彼らは巧妙に各国を咬み合わせようと企て、さらに政府官吏に贈賄し、また新聞を買収して世論に影響を与えた。こうしておいて彼らはさらに、兵器その他の価格を引き上げるために国際トラストや独占企業を組織した。国際連盟は兵器の私的製造の禁止を示唆したり、またこの件は軍縮会議にも上程されたが、これもイギリス政府側の頑強な抵抗に遭遇した。

 これらの諸国の兵器会社は相互に緊密な連帯を保っている。彼らは愛国主義を看板にし、死を弄びながら、しかも彼らのやり方は国際的である。―「秘密インターナショナル」と、彼らは呼ばれる。この連中が軍縮に強硬に反対するのは道理で、事実あらゆる協定の成立を妨害した。彼らの手先は政界、外交界の最高の舞台までに出没し、ジュネーブでは物陰から糸を操ろうとするこれらの陰険な連中の活躍が目立っている。
  往々にしてこの「秘密インターナショナル」と諸国政府の「情報部門」、或いは「諜報機関」が緊密に結びついている。各国政府の抱える手先は、外国から秘密 情報を入手するためにスバイとして活動する。たまたまスパイが捕らえられると、彼らは直ちに自国の政府から関係を否認される…」

※以上『父が子に語る世界歴史8巻-新たな戦争の地鳴り』みすず書房、J.ネルー著、から抜粋

 まるで21世紀の現代について記されているかのようだ。共産主義国家でも軍縮不可能だったのを見れば、軍縮など叶うことのない永遠の夢物語と思えてくる。核廃絶運動はピースメーカーのカーニバルに過ぎないし、反核団体も分裂してる始末だ。

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