思いつくまま

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新井素子著『ひとめあなたに・・・』(創元SF文庫)を読む。

2009年10月16日 23時53分53秒 | 読書
この本は、昨年の5月に再び文庫本になったが、文庫でも解説を含めると350ページもあり読み応えがあった。
一週間後に地球に隕石が激突し、人類に逃げ延びる道がないという設定のSFだが、内容は全く違う恋愛小説だった。
あと一週間しか生きられないという状況で、主人公の圭子が東京・練馬から神奈川・鎌倉にいる別れた恋人・骨肉腫で腕を切断せざるをえない朗のところまで、最後にどうしてももう一度会いたくて、そこまでひたすら歩いて(途中バイクを運転して)行く間に起こった・出合った人達との物語。
死を目前にして、気がおかしくなった人間の異常な行動が数々描かれていた。

自分のダンナを愛人に取られたくないという思いで、ダンナを刺し殺して、それを食べて自分の肉体と同化・一体化させようとする女性。
最初は母親の言いなりになって、レールに乗ったままひたすら受験勉強してきたのに、死ぬことがわかっても、加速度がついてしまってずっと勉強がやめられずに、バイクにひかれても参考書を握り締めたまま、しあわせよと笑って死んでいった女子高生。
寝ていて目が覚めれば、夢の世界から覚めて現実に引き戻されるが、またその現実だと思っている世界も、そこで再び目が覚めれば夢の世界だったというように、現実の世界と夢の世界がこんがらがって、今が現実なのか夢の中なのかわからない小学生の女の子。
子供を妊娠して、何とか生まれてくる子供だけは助けたいと思って、ダンナをほったらかしにして、元カレのところにある核シェルターに入らせてもらって何とか自分の子供だけは守りたいという女性。

この4人らとの絡みがあって、最後は何とか鎌倉の朗のところにたどり着く圭子の恋愛物語。

朗が圭子のことを「あんた」って呼ぶのがちょっと違和感があったり、新井素子さん自身が、男の肩を噛むってことが好きなんじゃないのかと思ったり。(噛まれるほうはイテェ~~よ。)

あと一週間で自分が死ぬことがわかったら、いったい何をするだろうか。
う~~ん、むずかしいなぁ。
誰かと会いたいとか、今までやりとげられなかったことをやったりとかするんだろうか。
それとも、この本に書いてあったように車をぶっ飛ばして、人を殺しまくる。(コワッ~~
いやいや、たぶん自分はひたすらパソコンでゲームをやりまくって終わるってのもありぃだな。

とにかくこの本を読みながら、なぜ人は生きていくのかということも含めて、死んだら自分では使えなくなるカネをなぜあくせく稼いで貯めているのかとか、はたまた、一時の快楽に身を任せてそういう行為に及ぶのかとか、あれこれいろいろ考えさせられた。


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