楠クリーン村のブログ

山口県宇部市・楠クリーン村のブログです。

大学前の畑を再生し、 農業を楽しく面白くプロデュース!!

2009年05月01日 | 若者の見る田舎の景色~インターン奮闘記~
 「学生耕作隊さんですか?農地を再生させていると聞いたのですが…」、突然SOSの電話が鳴りました。学生耕作隊では、山口県宇部市のお茶園、周防大島町の田んぼ、畑やミカン園、萩市の古民家など、様々な再生活動に取り組んできました。これらの活動を通して、様々な方々から畑の再生といったお話が舞い込んでくるようになりました。

今回、持ち主の方からお電話を頂いたこの畑について詳しく話を聞くと、「草刈の作業や管理も大変になってきたものの、大事な畑だから悩んでいます」とのこと。そしてお話をうかがうにつれ、驚きの事実が発覚します。なんと、この畑は山口大学の東門のすぐ前にあるというのです。


↑今回管理することになった山口大学東門前の畑

現実的に考えれば、大学の目の前の土地ですから、学生アパートを建て、借家にすれば収入としては決して悪くはないはずです。また、この時期ちょうど山口大学の裏側の道路では工事をしており、立ち退きや土地を売った後には、すぐに新築の物件が立ち並ぶような場所です。ですから、「まさか話ほど大学の近くに畑はないだろう…」と思いつつ、実際に現場を見に行きました。すると、本当に山口大学の東門の目の前の畑だったのです!!これなら、大学の空き時間にちょっと農作業なんてこともできるのではないか、活かせる可能性を考えることで、大学生が気軽に農業に入り込めるフィールドになっていくに違いないと確信しました。

「農地として守りたい」持ち主のその気持ちを引き継ぎ、耕作隊に任された畑は、6a、4a、7a、3a、17aの5か所で計37a(約4反)です。いずれももともとは水田でした。しかし、ただ稲作をしていては、この畑の持っている可能性は埋もれてしまいます。何を植えようか、どう面白くやろうか、そうして考えだされたのが、「食っていくための基本主食近代5種」です。ここでの近代5種とは、農作物の代表例である、「小麦、大豆、とうもろこし、じゃがいも、米」です。有名な作物ではありますが、日本での自給は低いものばかりです。うどんも醤油も、味噌も、パンも、自分たちが日頃食べているものです。しかし、これらを自給できるかと考えると、実は、主食すらもできないかもしれません。まずは、この基本となる主食を押えようと、現在はじゃがいもを畑に植えています。

具体的な作業としては、みんなが交代でトラクターに乗り、畑の耕耘を行いました。初めて乗るトラクターにどんな操作したら良いのかなど、ワイワイと楽しんでいました。また、雨で湿ってトラクターを畑に入れられない時や畦の近くなどは自分たちでクワやスコップを使って耕しています。水はけの悪い土地で排水路をつくるにしても、土地の高低差を考えたり、ぬかるむ中、長靴がハマったりと、初めての作業の中でバタバタとしながらも、少しずつ畑を形にしています。

「昔の人は、本当にこんなところを機械も使わずに耕していたのか」「最初に畑を切り開いた人はどんな心境だったんだろう」「すごいなぁ」と、黙々と作業する中、みんな同じようなことを考えていて、休憩時間に「それ私も思った!」なんて話しています。

現在、ここで計画中のものが「もったいないパーティ」です。パーティに講師の方を呼んで話を聞いたり、もったいない野菜を食べたり、食べながらもったいない野菜のエピソードについて語ったり、活用方法を考えたりと、楽しく農業について学べ、深められる場所にしていきたいと考えています。たとえば、カセットコンロでもったいない野菜をその場で調理してふるまいます。もったいない野菜の味を知る、実際に体験してみることから発見できるものは多いのではないかと思います。

大学に近いという利点を生かし、ビニールハウスやパイプ車庫を建て、そこを部室やみんなが集まれる場所として、いろいろな会議や集まりを開いていきます。学生を対象にした軽トラの移動式野菜市「学生マルシェ」を開いたり、ビニールハウスで農作物の実験を行ったり、農業用の機械の使い方講習会やIT講習会、収穫したものの試食会や料理会を開いたり、山羊を飼って自給自足を目指したり、チームを作って、どこが立派な農産物を育てることができるかを競走したり、お茶園のお茶でお茶会を開いたり、なかなか機会がないからできないこと、やりたいことをできる空間にしていけたらと考えています。

4月、大学の入学式が終わり、学生耕作隊に新しい会員さんが現れました。「農業やったことありません。実家は非農家です。あ、でもおばあちゃんの家は畑やってます!手伝いしてなかったんですが、でも興味はあるんです。どうやってやるんですか?」クワを使ったことも土の中に入ったこともなく、農業の経験とえいば小学校で植えたサツマイモだけですと真新しい長靴で援農にやってくる女の子。作業後には、「大変で疲れますね…でも、なんかやりましたね!」と達成感を伝え、仲間たちといろいろ話しています。


↑畑での作業の様子

自然の中で活動すると、農業のきつい部分や達成感を知ることができます。作業を通し、いろいろな学生と話す機会もあります。じゃがいもや、ニンジンを畑に植えた次の日に、大雨が降り、もう水をあげなくても大丈夫だろうと思った翌日、「今日は晴れましたね。水やり大丈夫ですか?もし必要なら、授業終わった後に水やりをしたいんですが…」というメールが届きました。さらには、「畑は今どんな感じですか?あの子たち(畑)を放っておかなきゃいけないのは残念です」と、自分で何かを育てていく責任に、喜びを感じるメンバーも出てきました。「アズキ植えてみたいんですが」「サツマイモ植えて、焼き芋パーティしようよ」「キュウリ、ナスなど自分的にはよく食べるのだと助かるな」と、さまざまなメンバーがそれぞれの農業への関わり方を示します。発見から生まれる喜びや、何かに挑戦してみたいという好奇心、向上心、農業への問題意識、その解決策をどう実践していくのか、たくさんの思いをここに巻き込んでいきたいと考えています。

今、食の安心・安全、自給率、高齢化、過疎化といった多くの農業関連の話題が世間を賑わしています。一方、農業に興味を持つ人は確実に増えています。何か変わったことやっている、でも何か面白そうだなと、まずは感じてもらえるよう、楽しく作業をしたり、イベントを開いたりしたいと思います。

田舎の豊かな財を活用していく仲間が増えれば、まだまだ使われていない土地や機械も農産物も知恵も、間違いなく私たちの想像を超えて、農業を面白くて楽しいものへと変えていきます。たくさんの人を巻き込み、たくさんの人が考えていく、そんな自分の関わり方をつかんでもらいたいと思います。農業を楽しく、面白く、プロデュース。"農を大事に“ミッションに向けて、今日も活動しています。