この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#763 スタンダール「恋愛論」(大岡昇平訳)3 (12世紀の恋の法典2)

2012年02月16日 | フランス文学

前回に引き続き「12世紀の恋の法典」を引用する。

第11条 結婚せんとすれば恥となる女に恋すべからず。

第12条 真の恋人は愛する女のほか愛撫されることを欲せず。

第13条 公けの恋は永続すること稀なり。

第14条 あまりにも容易なる成功はまもなく恋の魅力を奪う。障害は恋に価値を与う。

第15条 すべて恋する者は己が恋する人を見て蒼ざむ。

第16条 思いがけず恋する人を見れば戦慄す。

第17条 新しき恋は古き恋を逐(お)う。

第18条 君子のみ恋に値す。

第19条 衰う恋は速やかに消え、甦ること稀なり。

第20条 恋する者は常に怖る。

(以下 第21条から第31条までは次回に記載)

(新潮文庫 スタンダール「恋愛論」大岡昇平訳より 345ページ~346ページ)

各条それぞれに、何となく意味がわかるような気がする。ただ、第12条はよくわからない。「愛する女」ではなく「愛する男」と書いてあれば何となくわかるし、「愛撫される」が「愛撫する」ならわかるような気がする。まあどうでもよいことではあるが。

第15条、第16条は一見分かりにくいようであるが私にはよくわかるような気がする。

今から半世紀以上前、私が大学生のころのことである。授業が終わって下校し電車に乗った。同じ電車の中の遠くの方に私が憧れていた美しい女子学生が乗っていた。それだけでまさに第15条、第16条の場面であった。私は緊張のあまり顔は蒼ざめていたであろうし、体がこわばってしまった。胃が痛くなった。普通に用いられる表現では「心臓が高鳴った。」というのであろうが。

何も珍しいことではない。誰でも経験していることであろうが。

第18条は大いに異論があるところである。「君子のみ恋に値す。」とは何たることかと言いたくなる。

この「恋の法典」はフランス王の王付司祭のアンドレという人の1170年ごろの著書の中に出てくるそうである。

1170年ごろというと、私達はすぐ日本史におきかえ鎌倉幕府が開かれる直前のころ、別な言い方をすれば、今NHKの大河ドラマ平清盛で演じられている殺伐とした遠い昔の世界を思い浮かべるのだが、「恋の法典」は何と違った世界だろう。  (つづく)

 

画像:筆者撮影

 

 

 

 

 


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