好物と健康

2005-06-11 04:22:41 | Weblog
 以前にも書いた記憶があるが、「食い物のおいし
さ」というものの本質は食い物の内側にあるのでは
なく、味わうこっちの方の問題である。真夏の満腹
時、脂こってりの家系ラーメンなど拷問用具にも等
しいが、それと同じものが真冬のさなか、腹ペコで
どうしようもない時すすりこむであればそれこそ天上
の美味であろう。

 だからこそ体調を整えないとうまいものが食えな
い。無頼派気取って体を酷使するのもたしかにひと
つの生き方だが、自らの我慢強さを誇るより飯がお
いしく感じられる方がなんぼかいい。そしてありがた
いことに、食い物のうまさと価格の高さは相関関係
にはない。味付け海苔と白いご飯だけでも十分「美
味」というものは体感できる。「おいしさ」というものが
食べ物本体に内在するものでない以上、これは当然
のことなのだが。

 しかし年をとると、おいしいものばかり食べていると
体調を崩す、という、なんとももどかしい矛盾点が露わ
になる。先般、健康診断の結果が出たのだが、血中
コレステロールと肥満度が要注意であった。産業医の
先生のご指導は、「運動しろ。脂モノ減らせ」。あまり
にごもっとも過ぎて文句もない。しかしあつあつのポテ
トフライやら、タレの味がジワッとしみ込んだやわこい
豚の角煮、備長炭でじわわ~っと焼いたカルビ肉など、
医者の小言くらいで断てるものではないのだ。

 しかも、季節はもうすぐ夏なのだ。夜の暑さに掛け布
団蹴飛ばして眠る夜も徐々に多くなってくる。汗ばむ夜、
風呂上がりにグイッと傾ける生ビールで満たされた中ジ
ョッキ。つまみはチーズかポテトフライ。あるいは焼き鳥。
そばに気の置けない、バカ話ができる知り合いがいれば
まさにサイコー。「生きる喜び」など、キャバクラ以外では
普段滅多に感じぬわたしではあるが、このような状況は
「至福」と呼ぶ以外言葉を知らない。

 「至福」と「健康」のどっちをとるかという微妙な問題。若
い頃なら、暴飲暴食してもなんの痛痒もないのだが、いや
はや、年はとりたくないものである。「塩」か「脂」か「砂糖」
について、命がけで断たねばならない日が、そろそろ近づ
いてきているのかもしれない。その日が来るまで焼き肉た
くさん食べよっと。