日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

汽車旅in東北 2016 - ふく郎

2016-01-09 17:07:53 | 居酒屋
「ふく郎」の店先を通り過ぎ、酒屋に立ち寄ってから戻ってくると、ヱビスの看板に明かりが灯っていました。本日の時間配分はまことに理想的です。長袖二枚と雨合羽でもさほどの寒さを感じなかったはずが、暖簾をくぐるやいなや安堵感が押し寄せてくるのは、なんだかんだで外が寒いということなのでしょうか。前回接客してくれた、店主の娘さんと思しきお姉さんに迎えられて着席します。
秋田の回転寿司と同様、開店直後につき先客の姿はなし。どこの席でもお好み次第という状況の中、半ば無意識のまま着席したのはカウンターのやや左寄りです。ともすれば中途半端に思える位置ではありますが、結果としてはこれが正解でした。常連なら別段、中央に立つ店主の正面というのはおこがましく、だからといって右端の玄関寄りでは、真横にねぶたのお面が鎮座し、すぐそばではTVが流れて少々落ち着きません。その点中央のやや左寄りなら、店主、お面、TVのいずれからもほどよい間合い間合いがとれて好都合です。昨年末から呑み屋では好位置に当たるという幸運が続いています。

一杯目から酒も辞さない自分にしては珍しく、ここではまずヱビスを注文。これも偏に当店のビールが秀逸だからに他なりません。ヱビスといえば細身のグラスに注ぐ店が多い中、この店では専用のジョッキになみなみ注がれ、なおかつ泡はきめ細かく、最後の一滴までおいしく呑める逸品です。これを受けるお通しには、大振りな鮭の切り身を酒蒸しにしたものが出てきました。以前出てきた豚汁にしてもそうですが、それ自体一品料理として成立する温かいお通しには毎度ながら感心させられます。酒をグラスに注いで溢れさせ、受け皿にも溢れんばかりに注ぐなど、何かにつけて気前がよいのがこの店の特徴といえそうです。
教祖をして「西のさきと、東のふく郎」と言わしめた当店ですが、語弊を恐れずいうなら「西の瀬戸際、東のふく郎」といってもよさそうな気がします。地物の魚介を中心に二十種ほど揃えられた経木の品書きが、先日訪ねた徳島の名店にどことなく通ずるものがあるからです。産地とともに書かれた品々に目移りしそうになっても、まずは刺身のちょっと盛を頼んでおけば間違いはありません。その名とは裏腹に十分すぎる分量なのが当店のちょっと盛で、本日はソイ、油目、活タコ、帆立、イカ、ホウボウの豪華六点。一見すると紛らわしい白身の三品だけ指を差して教え、あとは言わずもがなといわんばかりの客あしらいには、清水の「新生丸」に通ずる老練さがあります。
この刺身の次を何にするかと考えたとき、目に留まったのは深浦産の糸モズクでした。というのも、矯正治療の間はこのモズクが装置にからまって、どうにもうまくいただけなかったからです。散々煩わされた矯正装置から解放された今、渡りに船とはこのことでしょう。こうして注文したもずくは輪切りにした酢橘とともに供されて、瑞々しさと歯切れのよさが半端ではありません。一年半に及んだ艱難辛苦から解放された喜びを、しみじみ実感せずにはいられませんでした。帆立、イカ、タコ、舞茸までも盛り込んだ具沢山の貝焼きも食べ応えがあり、延々一時間半滞在の後席を立ちます。

ふく郎
青森市安方1-10-12
017-777-3988
1700PM-2300PM
日祝日定休

ヱビス・愛娘・田酒
お通し
お刺身ちょっと盛
糸モズク
津軽貝焼みそ

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