日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

新春の四国を行く 2019 - 酒甫手

2019-01-04 21:13:28 | 居酒屋
自力で開拓した店には、教祖の推奨店に対する以上の愛着が湧きやすいものです。四国でそれに相当する店の一つに「おふくろ」があります。今回いの一番に目指したのもここでした。しかし、何やら様子が違います。行灯の明かりが見えてこないのです。不穏な空気を感じながらもさらに歩くと、明日から営業との張り紙がorz
日曜定休の店が明日から開くということは、一日だけ営業して翌日再び休むということです。それはさすがになかろうと思い込み、営業日の確認を怠ったのが災いしました。とはいえ捨てる神あれば拾う神ありともいいます。「美人亭」が早仕舞いというさらなる誤算に見舞われながらも、流れ着いたもう一つの推奨店が秀逸でした。訪ねたのは「酒甫手」です。

電車通りを境に趣が大きく変わる天文館と同様、高松の繁華街の様相は国道11号線を境に一変します。大雑把にいえば、「おふくろ」「美人亭」を始めとして古い呑み屋が点在する南側、スナックが密集する猥雑な雰囲気の北側という違いです。しかし、その猥雑な北側を西の方へ歩いていくと、新しい店が集まる静かな一角があり、その外れの路地に佇むのがこの店です。古くから推されてきた「美人亭」と違い、「ふらり旅 いい酒いい肴」により知った店で、「居酒屋味酒覧」への掲載も最新版からでした。ただし、取材のため新たに選んだ店ではなく、それ以前にも何度か訪ねたことを窺わせる話しぶりだったと記憶しています。そうなると自ずと期待も高まるというものですが、その期待に違わぬ名店です。
大胆に例えるなら、高松の「せくら」とでもいえばよいでしょうか。働き盛りの店主と女将が仕切るところに加え、繁華街の外れに近い路地に佇む現代的な店構えもどことなく似ています。それに加えて品書きも。郷土色はそれほど感じず、品数も決して多くはないものの、さりとて不足も感じさせない、店主の創意工夫が窺われる献立は、眺めるだけでも楽しいものがあります。
とりわけ感心したのは酒です。「せくら」の場合、酒は小富士か雪雀と決まっており、あくまで肴の引き立て役という位置付けにとどまります。それに対してこちらでは、写真帳の品書きに各地の酒が並びます。一頁につき短冊を七枚貼ったものが五頁もあり、値段も600円から900円まで百円刻みと分かりやすく良心的。ただ数を揃えるだけでなく、四国の酒とその他の酒の配分が絶妙です。熟成の濁り酒に燗をつけたり、和らぎ水の代わりに白湯を添えるところなどにも一家言が感じられます。禁煙なのも酒を楽しむための配慮でしょう。地酒空白地帯の讃岐にあっては貴重な店です。頼みの綱に振られながらも立て直し、勝るとも劣らない名酒場に出会ったという経験は、昨秋の長崎以来となりました。

酒甫手
高松市鍛冶屋町6-4 福崎ビル
087-851-1511
平日 1800PM-2300PM
土曜 1500PM-2100PM
日曜定休

久礼・山笑・山陰東郷
突き出し(ツナ大根)
地だこ刺身
鴨鍋
粕汁

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