少しばかりの未練を残して花見を切り上げ、呑み屋街へ移動してきました。満を持しての登場はもちろん真打ちの「籠太」です。
今回特筆すべきは、なんといっても名物の塩豆腐が復活したことでしょう。脱サラして会津に移り住んだ主人が一人で造っていたというこの豆腐ですが、そのような経緯からして当人にはどこか浮き世離れしたところがあり、ある日突然店をたたんで行方をくらましてしまったと女将から聞きました。それが最近渡り鳥のごとくに舞い戻って、この店の品書きに再び塩豆腐が並んだわけです。
その塩豆腐の正体とは、一見すると何の変哲もない木綿豆腐に、薬味も添えず塩だけを軽く振りかけたという単純きわまりないものです。私自身、豆腐というものが特別好きなわけではなく、呑み屋で冷奴や湯豆腐を頼むことなどほとんどありません。しかし不思議なことに、この塩豆腐だけは、焼鳥ともども来れば必ず注文してしまいます。風来坊の店主が造る豆腐だけに、再び品書きから消え去る可能性も少なからずあるとはいえ、久方ぶりにこの豆腐と再会できたことをまずは喜びたいものです。
県外からの常連客が多いのはこの店の特徴で、旅人同士意気投合することもままあります。今回は、奥方の実家を訪ねてきたという右隣の御仁から、非常によい質問が投げかけられました。その質問とは、「そもそも旅と酒のどちらが好きなのか」というものです。何分機転の利かない性分だけに、その場では的確に返答することはできなかったものの、後々反芻した結果として明確な答えが出てきたため、今更ながらお答えすることにしましょう。
結論から言えば、「旅が先か酒が先か」という問いに対しては、かなりの自信を持って「旅」と答えます。そもそも酒が呑みたいだけなら、都会にも全国津々浦々の地酒が集まるわけです。それにもかかわらず、わざわざ旅費を注ぎ込み遠方へ赴くのは、その土地で味わってこそ旅情があるからです。そうだとすれば、楽しみの本質は酒よりも旅にあると言い切って差し支えないでしょう。
とはいえ、旅先での呑み食いが牛丼やらコンビニの軽食に終始してしまっては、楽しみも半減するのは紛れもない事実で、旅ができれば酒は要らないというものでもありません。このような関係をなぞらえるなら、投手と捕手の関係が最も近いのではないかと思います。
野球における主役は投手か捕手かと問われれば、おそらく十人中十人が「投手」と答えるでしょう。野球における投手の役割とはそれほどまでに別格であり、それとの関係からすれば、捕手はあくまで脇役ということになります。しかし、投手の状態、打者の癖、さらには試合の流れなどを見極めつつ、状況に応じた的確なリードができる捕手がいなければ、どんなにいい投手も最大限の力を発揮することはできません。
この理は旅と酒の間にも同様に成り立つと考えます。その土地の文化と風土、四季の移り変わりといったものを体感する上で、酒が果たす役割の大きさは計り知れません。自分にとって酒とは、旅において欠かすことのできない相棒なのです。
★籠太
会津若松市栄町8-49
0242-32-5380
1700PM-2300PM(日曜定休)
泉川・国権・奈良萬・風が吹く
お通し(切り干し)
塩とうふ
ネギマ・つくね
いかの塩辛
山菜春野菜天ぷら
今回特筆すべきは、なんといっても名物の塩豆腐が復活したことでしょう。脱サラして会津に移り住んだ主人が一人で造っていたというこの豆腐ですが、そのような経緯からして当人にはどこか浮き世離れしたところがあり、ある日突然店をたたんで行方をくらましてしまったと女将から聞きました。それが最近渡り鳥のごとくに舞い戻って、この店の品書きに再び塩豆腐が並んだわけです。
その塩豆腐の正体とは、一見すると何の変哲もない木綿豆腐に、薬味も添えず塩だけを軽く振りかけたという単純きわまりないものです。私自身、豆腐というものが特別好きなわけではなく、呑み屋で冷奴や湯豆腐を頼むことなどほとんどありません。しかし不思議なことに、この塩豆腐だけは、焼鳥ともども来れば必ず注文してしまいます。風来坊の店主が造る豆腐だけに、再び品書きから消え去る可能性も少なからずあるとはいえ、久方ぶりにこの豆腐と再会できたことをまずは喜びたいものです。
県外からの常連客が多いのはこの店の特徴で、旅人同士意気投合することもままあります。今回は、奥方の実家を訪ねてきたという右隣の御仁から、非常によい質問が投げかけられました。その質問とは、「そもそも旅と酒のどちらが好きなのか」というものです。何分機転の利かない性分だけに、その場では的確に返答することはできなかったものの、後々反芻した結果として明確な答えが出てきたため、今更ながらお答えすることにしましょう。
結論から言えば、「旅が先か酒が先か」という問いに対しては、かなりの自信を持って「旅」と答えます。そもそも酒が呑みたいだけなら、都会にも全国津々浦々の地酒が集まるわけです。それにもかかわらず、わざわざ旅費を注ぎ込み遠方へ赴くのは、その土地で味わってこそ旅情があるからです。そうだとすれば、楽しみの本質は酒よりも旅にあると言い切って差し支えないでしょう。
とはいえ、旅先での呑み食いが牛丼やらコンビニの軽食に終始してしまっては、楽しみも半減するのは紛れもない事実で、旅ができれば酒は要らないというものでもありません。このような関係をなぞらえるなら、投手と捕手の関係が最も近いのではないかと思います。
野球における主役は投手か捕手かと問われれば、おそらく十人中十人が「投手」と答えるでしょう。野球における投手の役割とはそれほどまでに別格であり、それとの関係からすれば、捕手はあくまで脇役ということになります。しかし、投手の状態、打者の癖、さらには試合の流れなどを見極めつつ、状況に応じた的確なリードができる捕手がいなければ、どんなにいい投手も最大限の力を発揮することはできません。
この理は旅と酒の間にも同様に成り立つと考えます。その土地の文化と風土、四季の移り変わりといったものを体感する上で、酒が果たす役割の大きさは計り知れません。自分にとって酒とは、旅において欠かすことのできない相棒なのです。
★籠太
会津若松市栄町8-49
0242-32-5380
1700PM-2300PM(日曜定休)
泉川・国権・奈良萬・風が吹く
お通し(切り干し)
塩とうふ
ネギマ・つくね
いかの塩辛
山菜春野菜天ぷら
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