日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

東北縦断花見の旅 2021続編 - 加津

2021-04-16 20:17:54 | 居酒屋
「加津」の女将から聞かされたのは、先客の一人が車を待っており、10分も経たないうちに空くだろうということでした。それなら宿へ一旦戻るまでもありません。店の周囲でやり過ごし、言われた通りの10分が過ぎたところで暖簾をくぐると、カウンターの一番奥が空いていました。店主の定位置の前にあたる特等席に腰を下ろし、これでようやく一安心です。
当店で特筆すべきは、割烹然とした堂々たる店構えと、平凡な居酒屋然とした品書きの対比です。ただしそれらの品には一仕事が加えられ、この店構えも伊達ではないと得心できます。それは初めて訪ねたときから一貫した印象ですが、ようやく気付いたこともあります。揚物が店主の十八番らしいということです。ホワイトボードの品書きには、天ぷら、唐揚げを始め揚物各種が並ぶ一方、煮物は肉豆腐がせいぜいで、焼魚は丸干し、ホッケの二者択一です。それが居酒屋然として見える所以の一つでしょう。郷に入りては郷に従えの格言に倣い、所望したのは山菜天ぷらです。
品書きにはタラ、コゴミとあったにもかかわらず、実際に出てきたのはタラの芽とコシアブラの天ぷらを盛り合わせたものでした。しかし、話が違うと目くじらを立てるつもりはなく、むしろこちらにとっては好都合でした。というのも、コシアブラの天ぷらこそ、花見の旅には欠かせないものだったからです。夏井から会津に駒を進めて連泊する行程は、比較的初期の頃から既に確立されていました。その当時とりわけ楽しみだったのが、「麦とろ」でいただくコシアブラの天ぷらです。しかし、様々な誤算が続いて、近年は全くいただけなくなりました。誤算も続けば想定内の出来事です。今回またもや逃したものの、惜しまれて仕方ないということはありませんでした。それだけに、全く期待していなかった状況で、往年を思い出させる品が出てきたことを、しみじみありがたく感じたという次第です。
続いて選んだのは春巻です。当店のそれは一風変わっています。ざっと挙げてもカニかま、きゅうり、人参、キャベツ、とうもろこし、干し海老といった様々な具材が使われるのです。限界と思われるほどに細長く刻まれているのは、春雨の代わりでもあるからでしょうか。ベトナム風の生春巻に近いものの、あれとも全く似て非なる独創的な一品です。品書きに添えられた「自」の文字は、「自家製」のことだと思っていました。実際のところ、そのように捉えたとしても誤りではないのでしょう。しかしこれを、「自慢の品」に掛け合わせたものと捉えることもできます。そのように思うのは、「自」の文字を付した焼売、塩辛、春巻の三品が、いずれも感嘆させられるほどの逸品だからに他なりません。「籠太」の焼鳥、塩辛、塩豆腐になぞらえて、当店における「三種の神器」と勝手に名付ける次第です。

加津
米沢市大町4-4-29
0238-23-2833
1700PM-2130PM
日祝日定休

ヱビスビール
香都
若の井
お通し(くきたち)
カナガシラ
もずく酢
塩から
山菜天ぷら
春巻
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