日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2020 - 独酌三四郎

2020-10-23 21:17:44 | 居酒屋
去年の旅は出来過ぎでした。あれを再現しようとは、端から思っていませんでした。しかし今年も健闘が続きます。一昨日までは連日秋晴れに恵まれました。しかも、それぞれの日にズバリこれだといえる収穫があったのです。天候が振るわなかった今日でさえ、夜の部に山場が訪れました。
振られて元々、ともかく「独酌三四郎」には行ってみようと決めていました。ただし、繰り返す通り強い意欲はありませんでした。席数がわずか四つに減らされたにもかかわらず、神懸かり的な強運で滑り込めた前回の再現を期待するのは高望みといものでしょう。金曜という条件を考えても、入れる気は全くしていませんでした。とはいえ、宿から店は一本道で徒歩二分です。行くだけ行って、入れれば儲けもの、入れなくとも空き次第一報もらえるように交渉するという戦術を採りました。その結果は暖簾をくぐるまでもなく判明します。少しだけ開け放たれた障子からカウンターの様子が窺われたのです。案の定満席という返答を受け、九時までに空くようなら一報をと願い出てから引き上げました。しかしその九時になっても電話は鳴らず、自身にとって初となる敗退が確定。とはいえ、覚悟していた通りの結果でもあります。この非常時に一度とはいえ行けたことに感謝しつつ、代わりの店へ行ってみようとしたところ、10分ほど回ったところで電話が鳴るという経過です。
九時で期限を切ったのは、注文が打ち止めになる九時半を見据えてのことでした。席に着くなり仕舞いではいかにも落ち着かないからです。しかし、今すぐ行けば20分の猶予があります。看板まで小一時間滞在できれば、二度目としては必要にして十分です。渡りに舟とばかりに店へ舞い戻ると、手前のカウンターには四日前にもお見かけした老紳士の姿がありました。一番手前はおそらく一見客でしょう。手前の二席に関していうと、最初に断られたときから入れ替わっています。自分と同様、空き次第の案内を待っていた先客がおり、九時過ぎになったところで自分の番が来たのかもしれません。先客の帰りがあと数分でも遅ければ、結果は変わっていたわけであり、前回に勝るとも劣らない強運です。土壇場の大逆転に救われました。

四日にわたり道東を旅する間に天候が崩れ、今日にいたっては季節外れの暖かさでした。障子が開け放たれていたのもそのためでしょう。しかし季節は着実に進んでいます。日替わりの品書きの筆頭に重ねられていたのはにしん漬け、当店における冬の風物詩として教祖も絶賛する一品です。その一方で〆さんまと落葉おろしもまだ残ります。秋と冬とが入り混じる晩秋らしい品書きです。
時間が限られるなら酒は一択しかあり得ません。ただ「酒」あるいは「燗」と頼めば出てくるのは、寸胴の器で直燗された麒麟山です。実は前回男山をいただいてみました。予想通り、酒としての味わいはあちらの方が上だったものの、「酒」とは別に厨房で湯煎され、徳利で供されるのが物足りなくも感じられました。器も含めて味わいのうちと考えれば、やはりこちらの方が上です。
終盤でようやく落ち着いてきたということもあるのか、厨房から女将が顔を出し、定位置の椅子に腰掛けて、御常連の相手を始めました。店主在りし頃を偲ばせる光景です。それを横目に酒を三本飲み干して、看板とともに席を立ちました。

独酌三四郎
旭川市2条通5丁目左7号
0166-22-6751
1700PM-2130PM(LO)
日祝日定休

酒三合
お通し
ししゃも
にしん漬け
落葉おろし
〆さんま
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