日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 19:06:48 | 居酒屋
「ぶんご」に振られてスライド登板を余儀なくされた一昨日に対し、今日は不動のエースが控えています。日曜でも安心して呑めるのはこの店のおかげです。一軒目は「分家無邪気」の暖簾をくぐります。

名物の味噌おでんと、七点盛りの豪勢な鶏刺しの二枚看板を中心に、酒も肴もよりどりみどりで良心価格。初見の人に鹿児島でおすすめの呑み屋はと聞かれれば、私は「菜菜かまど」よりもこの店を推すでしょう。しかし、今日に関する限り、この店で呑むにあたっては一つだけ懸念材料がありました。件の祭のことではありません。本日最終戦を迎えた日本シリーズに関してのことです。というのも、ここの店主が熱狂的な巨人ファンなのです。
かつては選手名鑑が愛読書というほどプロ野球に傾倒していた自分も、近鉄の撤退を発端にした一連の騒動以来すっかり熱が冷め、今では巨人のレギュラーすら知らないという野球音痴になってしまいました。その騒動から生まれた東北楽天が、今年初めて日本シリーズに進出し、王手をかけて迎えた昨日の第六戦で足をすくわれるというまさかの展開を経て、今日の最終戦に至ったのは周知の通りです。当然とるべき第六戦を落として崖っぷちに立たされた楽天が、背水の陣で望む最終戦が戦われるこの日に、巨人ファンの巣窟というべきこの店で呑むのがいささかためらわれたとでも申しましょうか。
もちろん、上記の通り今や完全な野球音痴となった私のことですから、どちらが勝とうとさほどの関心はないのです。しかし、巨人軍はともかく、私はこの「巨人ファン」という人種が、有り体に言えば好きではありません。生来の天の邪鬼としては、ある意味当然のことでしょう。楽天が無残にも巨人の餌食となる中、巨人ファンが歓喜するという状況を想像するだに、今日だけはこの店に足を運ぶことが躊躇された次第です。しかしながら、主義主張を抜きにすれば、この店が天文館でも屈指の名酒場であることは事実であり、何よりここの味噌おでんと鶏刺しをいただかずして終わるわけにはいかなかったため、結局暖簾をくぐったというのがここまでの顛末でした。

こうして暖簾をくぐると、果たせるかな店内では今まさに日本シリーズの中継が流れています。そして、スコアは楽天の1点リードです。宿を出るとき、初回早々得点圏に走者を背負い、楽天選手がマウンドに集まるという危うい光景を目にしていただけに、天文館まで歩く間に状況が一変しているとは思いませんでした。
一喜一憂はしたくなかったにもかかわらず、通されたのはよりによってTVに正対するL字カウンターの一辺でした。その列に陣取るのは、観戦がてら呑みに来た巨人ファンばかりです。何しろ、サイン入りの色紙、バット、ユニフォームにボールだけならともかく、おしぼりがいわゆるジャイアンツカラーなのですから、こうなることはある意味必然でしょう。せめて彼等の喜ぶ顔は見たくないものだと思いつつ、まずはお約束の味噌おでんと串焼きから始めます。

ところが、席についてほどなくすると、楽天岡島の痛打が外野の頭を越えました。虎の子の一点をどこまで守れるかと思っていたところが、これで俄然面白くなってきます。その後も先発美馬の変化球に巨人打線のバットが次々と空を切り、両隣からは聞こえてくるのは溜息ばかりです。絶体絶命の最終戦で見せる力投は、昭和51年の阪急足立を彷彿とさせます。
次は当然鶏刺しを注文するものの、一瞬たりとも目の離せない展開で、酒どころではなくなってきました。昨日順当に決めてくれれば、今日は心置きなく呑めたものをと仮想せずにはいられません。あらかた片付いたところで、今度は一発が飛び出して三点差に。結局、一時間少々滞在して隣客の歓声は一度も聞こえてきませんでした。

どうやら、この続きは勝負の帰趨が決してからの方がよさそうです。腹ごなしと酔い覚ましを兼ねて一旦宿に戻ります。

分家無邪気
鹿児島市東千石町11-4
099-222-4976
1700PM-2300PM(LO)第二・第四月曜定休

不二才・アサヒ・三岳
突き出し(〆鯖ごま和え)
おでん二品
串焼き二品
地鳥刺

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