日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

房総半島縦断ツアー 2013二日目

2013-10-27 21:46:40 | MOS
市内に三軒あるとされた赤看板のMOSのうち、土気駅前店は若干遠いため見送り、残る二軒に絞りました。まず立ち寄るのは千葉小倉町店です。

この店を訪ねたのは、記憶する限り十数年前の一度きりです。このところ十数年ぶりの再訪という店が多いのは、近年安普請のMOSが濫造された副産物として、かつて何とはなしに立ち寄ったMOSのよさが、今更ながら認識できるようになったからでもあります。そして、当時はごくありふれた郊外型店舗という印象しかなかったこの店舗も、改めて訪ねると驚くほどに凝った造りをしていました。
まず、沿道の彼方に見えてきたのは、事前情報とは違う緑色の看板です。しかしここで落胆する必要はありません。というのも、店の造りはそのまま残し、看板だけを取り替える事例が近年増えてきたからです。そのような展開を期待しつつ店先から中をのぞくと、腰壁とレジカウンターは後年改装されたと見え、残念ながら店内も往年のままではないようです。しかし、観察を続けるうちに、この店舗の周到な設計が明らかになってきます。

道と同じ方向に建物の長手を配して妻面に玄関を置き、 ドライブスルーの走路が建物の裏手を半周するというのが、遠目に見たこの店舗の造りです。つまり、遠目には何の変哲もないドライブスルー店舗であり、以前訪ねたときもそのような印象しかありませんでした。ところが、今回改めて観察すると、この建物が単純な箱形や三角屋根などではなく、全体的には三つの箱をコの字型につないだ構造であることに気付きました。
まず玄関部分は、長方形のファサードから奥に向かってまっすぐ屋根が下りるという、MOSの店舗で伝統的に用いられてきた造りをしています。しかしここからが違うのです。玄関入ってすぐ右手にあるレジカウンターから奥へと続く厨房は、長手方向へ延びた二つ目の箱に収められています。その箱は、建物の裏側から表側へまっすぐ下りる屋根を持ち、玄関部分の屋根と複雑に交わっているようです。そして、この厨房が奥手に突き当たると、今度は切妻屋根を戴いた三番目の箱が、道路と直交する向きに延びていきます。
このようにして三つの箱がコの字型に配された結果、道路側には小さな中庭ができるとともに、屋根はいずれも中庭へ向かってまっすぐ下りることになります。そして白眉というべきなのは、この中庭に木が四本ばかり植えられ、さらには色とりどりのプランターで埋め尽くされていることです。しかも、道路側から玄関まで回廊を巡らせることにより、三つの箱をあたかも一つの箱のように見せ、その中から木が飛び出しているかのような外観を創り出す周到さには、全くもって感嘆するほかありません。中庭を効果的に使った名建築という点では、去年再訪した長野安茂里店と並ぶ双璧ではないでしょうか。

以上の説明を聞いて、何が何やらさっぱり分からないとおっしゃる方も多いのではないでしょうか。実際のところ、建物の造りが凝りすぎて、言葉だけで表現することはできません。たとえ写真を交えても、この建物の造りを説明するには一枚では足りず、様々な角度から捉える必要があります。私自身、入店する以前に店舗の外を何周もしながら観察してしまいました。端から見れば完全な不審者に映ったことでしょう。
外観からしてこれほど凝った店舗ですから、店内の造りも推して知るべしです。玄関の区画、厨房と平行な区画、奥の区画のどこからでも中庭が見え、しかも中庭に面した部分には大きな一枚窓が床から立ち上がり、その窓は洋館風に木の窓枠で縁取られています。丸いランプシェード、造り付けのテーブルと椅子、レジカウンターにあしらわれたステンレス焼き付けのMマークなどにも古きよきMOSの名残が。再訪しない限りこんなよさにも気付かなかったのですから、今回千葉に寄った甲斐はありました。今後はここが千葉市における必須の立ち寄り場所の一つとなりそうです。

モスバーガー千葉小倉町店
千葉市若葉区小倉町871-18
043-226-6177
700AM-2400PM
第1848号

コメント    この記事についてブログを書く
« 房総半島縦断ツアー 2013二日目 | トップ | 房総半島縦断ツアー 2013二日目 »

コメントを投稿