日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

冬枯れの京都を行く 2019 - きのした

2019-12-04 21:10:56 | 居酒屋
去年に比べわずかに減りはしたものの、今年も五度にわたって京都を訪ねることができました。しかし、年内はおそらくこれが最後です。慣れたところで締めくくろうと思っていました。宿から一本道を下り、まず訪ねたのは「きのした」です。
今年は店主の療養による長期休業という開店以来の危機がありました。自分が知る限り三代目の助手が去って以来後釜も決まらず、最近は店主一人での営業です。来たるべき10周年を目前にして、苦境に陥ったかのようではありますが、ご本人はむしろ意気軒昂なのかもしれません。そのように思うのは、店のfacebookが毎営業日更新されるようになったからでもあります。しかもその投稿が秀作です。一押しの品を選んで写真とともに紹介するという、一見ありがちな内容ではありますが、その品に込められた仕事を、過不足のない字数で解説しているところに特徴があります。おおよその調理法だけでなく、その調理法を採ることによる効果が明快に述べられており、料理人としての見識の深さが窺われるという仕掛けです。これ以上長ければ、当代全盛を極めるスマートフォンでは見にくくなり、毎日更新し続けるのも一苦労です。さりとて短ければ、いわゆる「インスタ映え」するだけの月並みな投稿にしかなりません。試行錯誤を重ねた末、今の形に落ち着いたのでしょう。
この試みが奏功したか、今夜は非常に忙しそうです。二つあるテーブル席こそ空いているものの、七席あるカウンターには三組五人の先客がおり、間にある二席分が残っているだけでした。個室でも宴会が催されているようです。それぞれからの注文を店主一人で捌く以上、必然的に時間が要ります。それでいながら間延びしたように感じないのは、入っている注文がいくつあり、今どの品を調理していて、各人の注文が何番目になるのかをそれとなしに伝えることで、どれだけかかるかおおよその見当がつくという効果によるところが大きそうです。腕はもちろん、客あしらいも冴えています。渾身の仕事ぶりは一見の価値があるものでした。
一時は長期療養していたにもかかわらず、これほど根を詰めて大丈夫なのかという老婆心が頭をもたげてくるところではありますが、ともかく繁盛していそうなのはよいことです。次までは多少の間が開くと予想されます。近年の通例に従えば来年の梅雨時になるでしょうか。店が10周年を迎えた直後です。次なる十年、いかなる進化を遂げるのかも楽しみにしておきましょう。

旬味きのした
京都市中京区二条通寺町東入ル榎木町92-7 佐野ビル1F
075-213-2929
1730PM-2200PM(LO)
火曜定休

鹿鳴・遊穂
突き出し二品(おひたし・胡麻豆腐)
煮込風鴨ロース
ぶり大根炊き合わせ
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