日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

京浜沿線はしご酒 2015初夏 - 麺房亭

2015-05-31 19:15:06 | 居酒屋
教祖によって「居酒屋濃度の薄い県」と評された神奈川ではありますが、なんだかんだで「居酒屋百名山」に五軒を輩出しています。その一角「麺房亭」を本日の二軒目としました。

教祖が居酒屋探訪の集大成として選んだ百軒の中でも、「麺房亭」はかなり異色の存在ではないでしょうか。他の店がほぼ例外なく純和風なのに対し、この店は明らかに洋風です。あらゆる著作で語り尽くされてきた名店ともなると、事前情報だけである程度予想できてしまうことが多い中、この店に関する限り、海のものとも山のものとも分からない部分がありました。今まで食指が動きづらかったのも、そのような事情によるところが多少なりともあります。
事前に分かっていたことといえば、店主が無類の食通で、全国各地の生産者を回って食材を集め、生ハム、チーズ、燻製、パスタなどを自製しているということです。店主のblogを見ても、食材、調理に関する蘊蓄が日々綴られており、一家言を持った人物であることは容易に想像できました。自分の知る中でいうなら、富山は「真酒亭」の亭主のような頑固親爺というのが、勝手に思い描いていた店主の人物像です。
果たして店先を通りがかると、どことなく徳大寺似の頑固そうな店主がカウンターに立っており、しかも店内には先客が一組のみ。全国津々浦々で行きずりの酒場に飛び込んできた自分ではありますが、これは少々入りづらいものがありました。一呼吸置いてから意を決して飛び込むと、店主からは好みの席へつくようにとの第一声が。しかし一見で店主の正面というのも気が引け、結局カウンターの左寄りに着席しました。

通常ならばここで一杯目を注文し、品書きをざっと眺めて組み立てを考えたり、店内の造りを観察したりというところ、何分なじみの薄い洋風酒場ということもあり、今回ばかりは勝手がよく分かりません。教祖の著作にもあった「麺房亭全仕事」と題するメニューブックを冒頭からめくって、ともかく最初の生ビールを選んだ後、前菜代わりになりそうな「生ハム醤」なる品を所望すると、あるにはあるが食べ頃ではないとの返答があり、代わりにリエットなるものを勧められました。右も左も分からぬままに二つ返事で即答し、これでようやく一息といったところです。
店主によれば、品書きにあるものは一例に過ぎず、その日の食材とお好み次第でいかようにも調理は変わるということです。それなら品書きをいちいち眺める必要もありません。ここは店主に相談しつつ見繕ってもらうのが吉でしょう。そのようなとき、教祖の著作を見てきたと有り体に申し出た方が話は早くなります。案の定、一見すると頑固そうな店主も一気に饒舌となり、教祖の話やら食材の話について語らううちにすっかり意気投合。気付けば二時間半も長居してしまいました。

ひとしきり語らって分かったのは、店主が評判に違わぬ食通だということです。年中無休の店をほぼ一人で仕切り、原価と手間を惜しみなく注ぎ込んで、本物だけを提供しようとする矜恃には感服させられました。百名山の中でもひときわ異色といえるこの店を、教祖があえて推すのもそのためなのでしょう。
惜しまれたのは、二軒目だったのに加えて酒ばかり呑んでしまい、いただける品が限られたことです。教祖の著作にも、「この店を極めるには一生かかる」とありました。次の機会が巡ってきたとすれば、腹具合を万全に整え、〆のパスタに駒を進めてみたいものだと思います。

麺房亭
横浜市中区野毛町2-90 桜木町スカイハイツ 1F
045-243-6066
平日 1700PM-2300PM(LO)
日祝日 1700PM-2200PM(LO)

ブラウマイスター
隆・王祿・群馬泉・加茂福
生ハムのリエット
焼き空豆と焼き野菜バルサミコ風
燻製四品

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