日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

春まだ浅い北陸へ Returns二日目

2014-03-02 17:52:18 | 居酒屋
頼みの綱の「真酒亭」に首尾よく入店。あとは時間の許す限り盃を傾けます。
この店を訪ねたのは六年前の一度きりです。当時は旅先で呑むという習慣も確立しておらず、教祖の「居酒屋味酒覧」だけを頼りに訪ねたのでした。その時の印象として残っているのは、見るからに頑固そうな店主が営む小さな店だったこと、富山に限らず全国各地の地酒が揃っていたこと、肴の品数は少なめで、どちらかといえば二軒目以降に軽く一杯引っかけるのに向きそうだったことなどです。その後全国津々浦々を呑み歩き、ある程度酒場を見る目が肥えた今になって再訪すると、当時の印象はある程度まで正しかったと再認識します。それとともに、当時は気付かなかったこの店の美点難点も見えてきました。

まずいただけないのは、店内の片隅にダンボールや新聞雑誌などが無造作に積み上げられていることで、この点は完璧に整理整頓された「親爺」「あら川」のカウンターに一歩も二歩も譲ります。しかし肴については、地味なものが多いという印象だった前回に対し、品数は少ないながらも酒の進むものが多く、なおかつ季節感と郷土色が表れ、的確に吟味されているというのが今回の印象です。黒板にその日のおすすめが数種、その他の品が手元の短冊に綴られた中から、まず注文した鱈の子付けは、600円という価格以上に気前よく盛られてきました。一人前がこれなら、一人客は同じ値段の刺盛りを選んだ方がより楽しめそうです。次いで頼んだかぶら寿しはこれまた北陸らしく、高岡から取り寄せるという油揚げは、昨日福井で食した本場の逸品にも引けを取りません。器と盛り付けは平凡ながら、どれも良心価格で盛りも十分という点では、実質本位と形容するのが合っています。

そして何より感じたのが、最良の状態で酒を呑ませるための周到な配慮です。禁煙なのもそのためでしょう。酒は五勺と一合が選べ、一合なら背の高い筒状の片口で、五勺なら背丈を半分にした片口で供されます。一杯目を供する際には、手元のぐい呑みに半分満たして呑むようにとの導きが。深めのぐい呑みを使い、あえて半分しか酒を満たさないのは、香りが最も立つようにとの配慮でしょう。
酒はずらりと貼り出された短冊から選んでも、店主に見繕ってもらってもよし。二杯を空け、時間的にもあと一杯となったところで、自分も富山の地酒をおまかせで見繕ってもらいます。すると今度は、あと何杯呑むかと聞かれました。他の客にも必ず聞いていることからして、序盤から終盤までの流れを考え、最善の順序で提供するためなのは明白です。
店内の設えはごく平凡、品書きもやや地味とはいえ、心地よく酒を呑みたい向きには、ある意味最高の店ではないでしょうか。富山に数多ある名酒場の影に隠れがちながら、いぶし銀の名脇役とでもいうべき味わいがこの店にはあります。この店がある限り、富山の酒場は日曜でも盤石といえそうです。

真酒亭
富山市桜町2-6-20 福沢ビル2階
076-441-0399
1700PM-2200PM(月曜他不定休)

琥珀ヱビス・成政・みゃあらくもん
三笑楽(おごり)
突き出し(蕪と大根の酢漬け)
鱈の子つけ
かぶらすし
焼き油揚げ
あら汁

コメント    この記事についてブログを書く
« 春まだ浅い北陸へ Returns二日目 | トップ | 春まだ浅い北陸へ Returns二日目 »

コメントを投稿