日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

汽車旅in信越 2014初冬 -魚仙-

2014-11-08 18:47:18 | 居酒屋
幸か不幸か、入線してきた「くびき野」が3000番台だったため予定通りに見送り、その足で「魚仙」にやってきました。
店先には温泉旅館のごとく「酔法師会の様 三階大広間」と大きく書かれた札が立てられ、呑兵衛たちが外階段を上がって行きます。それを横目にしつつ暖簾をくぐると、やはりカウンターには先客の姿がなく、代わりに宴会客向けと思しき小鉢がいくつも並んで、まさに準備の最中といった様相です。ただし、小上がりには二組の先客がおり、こちらもあっさりとカウンターに通されました。
これは後々分かったことなのですが、今日は小上がりも別室の座敷も予約客で埋まっており、それに合わせて万全の布陣をとっていたため、一人客が飛び込んでも対応できたということのようです。対する去年は、他のお客が全くいない状況で飛び込んだため、あのようなことになったのでしょう。ともかく、酒池肉林に加わるか、カウンターで心置きなく呑むかを最後まで決めかねていただけに、ようやく決着がついて一安心といったところです。

先月訪ねた時点でも、品書きには早くも冬の気配が感じられました。それから一月経った今、ホワイトボードのおすすめは鰤、牡蠣、あん肝、毛ガニといった具合に、すっかり冬へと変わっています。手元の品書きを眺めても、秋らしいのは里芋きのこ寄せだけではないでしょうか。そのきのこ寄せがお通しに出てきました。里芋を裏漉ししてきのこと混ぜ、餡をかけて柚子皮と菜の花を添えたというのがその正体で、お通しというより一品料理の域に達しています。これで最初の一合が空きました。
七行三列の升目が五つ空いているということは、今日の刺身は16種ということになります。当然ながら絞りきれず、盛り合わせを注文する流れが定着してきました。舟形の器を使い、鰤を主役に分厚いネタを盛り合わせるのが当店流。これに続いて注文するのは、毎度おなじみ油揚げです。
馬鹿の一つ覚えと分かっていても選んでしまうのは、一つには魚介以外の品が比較的限られるという事情によります。屋号の通り魚介にかけては百花繚乱の当店ですが、その他の品ということになると、厚焼き、焼きナス、なんばん焼き、氷頭に身欠き鰊といったところです。それらも悪くはないものの、やはり新潟らしいものをということになると、油揚げを選びたくなるのは致し方のないところではあります。そして何より、この油揚げが絶品なのです。陳腐な言葉に頼るのは不本意ながら、サクサクした外側の食感と、溶けてなくなるような内側の食感は、一月足らずという短い間隔でも鮮烈な感動を与えてくれます。
次いで前回逃してしまった待望のなめろうを選び、これでこの店に来た目的を一通り果たしました。しかし、今日はあえて河岸を代えずに続投を選びます。というのは、「酔法師の会」との二者択一だった以上、この店で限界といえるまで飲み食いしてみたかったからです。ただし、既に腹は八分目まで満ちており、選ぶとしてもあと一品が限度でしょう。様々な選択肢がある中、あの酒池肉林に対抗しうるものをと考え、ホワイトボードにもあるぶりかまを選びました。かなりの待ち時間を経て登場したのは、一人客にはもて余すほどの巨大なカマです。そのカマを一心不乱につつき、これでもう何も思い残すことはありません。ただし、限界まで飲み食いするという趣旨を踏まえ、さらに重ねておにぎりを注文。おにぎり二個と、「酔法師の会」でも供されたであろう泡汁を平らげて、三時間の長丁場を締めくくります。

これで予算は八千円台の中盤。もちろん安くはないものの、時間あたりの単価でいえば平均並みではあります。それとともに再認識したのは、「酔法師の会」の一万円という会費は、あながち高くはないということです。今回の腹具合を100とするなら、あのときは120まで飲み食いしており、やはり単価としては互角だからです。
結局、三時間の大半を通じてカウンターに他のお客は来ず、一見と思しき一人客が、終盤に軽く一杯ひっかけただけでした。広々したカウンターを独占し、心置きなく呑むことができたのですから、まさに最高の贅沢です。しかし、人間とは勝手なもので、心から満足したはずだというのに、三階で繰り広げられたであろう酒池肉林のことが時折気になりました。あの宴会なら酒は他にも選べただろう、料理もさらにいくつか出ただろうと考えてしまうのは、まさに「隣の芝は青い」の格言そのものです。とはいえ前回は、帰り際に一階でまったりと呑んでいるお客を見かけ、自分にはやはりこちらが合っていると思ったのは事実でした。今回はこれでよかったのでしょう。

魚仙
長岡市殿町1-3-4
0258-34-6126
1700PM-2300PM
日曜定休

若竹・景虎・村祐・雪月花
お通し
お刺身おまかせ盛り合わせ
特選油揚げ
なめろう
ぶりかま
おにぎり・泡汁

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