日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2016 - 豊ヶ岡駅

2016-10-02 10:14:25 | 北海道
開始早々味わいのある駅に出会いました。石狩月形の一つ隣の豊ヶ岡駅です。
今更ながら知ったのは、この駅がいわゆる秘境駅として名高い存在だということです。たしかに、周囲から隔絶され、忘れ去られたかのような存在感という点では、秘境駅としての趣は十分あり、これが宗谷本線の駅だといわれても違和感はありません。

石狩月形から国道を進み、左に折れて1Kmほど走った場所です。しかし、国道沿いには駅へと至る道を知らせる案内板が見当たりません。よくよく見れば、都市部によくある通りの名前を入れるのと同じ看板が建ち、そこに豊ヶ岡駅と書かれてはいるものの、初見で気付くのは難しく、カーナビがなければおそらく通り過ぎていたでしょう。
カーナビを見る限り、駅周辺には他に道もなく、踏切に接した停留所のようにも思えます。しかし、線路と道が交差する地点から、駅が表示された場所までの間に微妙な距離があります。正確な位置関係が不明のまま車を走らせると、やがて線路を踏切ではなく立体交差で越えることが分かりました。跨線橋から階段を下りるのかと推測しつつ、速度を落として跨線橋にさしかかると、南側の少し離れた場所にホームが見えます。そして渡った直後に、駅へと至るであろう砂利道が分岐していました。跨線橋から見た距離感からして、必ずしも近くはありません。砂利道が分かれた地点に車を止め、そこから歩いて駅へ向かうと、左にカーブしつつ下っていく緩い坂の先に、待合室と思われる赤い屋根が見え、さらに進むと四種踏切に接した短いホームが見えてきました。

この待合室がよい味を出しています。切妻の建屋の妻側に、民家の玄関のような木製サッシのガラス戸を設え、その上には駅名を木彫りにした小さな扁額が鎖でぶら下げられています。暗くなるとその上にある裸電球が灯って、より味わいが出てくるのでしょう。
三和土の待合室は、玄関と同じく木製サッシを使った窓で二面採光となっており、そこから注ぐ日差しが暖かです。窓際に寄せる形で木製のベンチがL字に据え付けられており、中央に鎮座する小さな卓には駅ノートが。壁は列車の写真で飾られ、かつてここに石炭の積込施設があったという駅の由来を記した張り紙もあって、玄関の脇に掛かる古びた温度計がよい味を出しています。忘れ去られたようでありながら、この駅も大切にされている様子がありありと窺われました。
石狩平野の只中とは思えない、周囲を樹木に囲まれた鬱蒼とした雰囲気もよく、小一時間の滞在と相成りました。あと少しで新十津川からの上り列車が着くため、それを見送ってから次へ向かいます。

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