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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2660 地元を離れていく娘たち(その1)

2024年10月31日 | 社会・経済

 少し前の調査になりますが、ボートレースの売上金をもとにNPOへの資金助成を行っている「日本財団」が、2020年の8月に若者1000人を対象に行った「18歳意識調査」で「将来暮らしたい場所」を聞いたところ、「都市部」が56.5%、「地方」43.5%となり、都市部が10ポイント強上回ったということです。

 都市部で暮らしたい理由(複数回答)で過半となったのは、「生活がしやすい」が63.4%、「娯楽が多い」が51.2%で、全体的に「選択肢が多い」ことが若者にとって都市の魅力と映っていることが見て取れます。

 「東京一極集中」が指摘されるようになって久しいものがありますが、それでは実際どんな人たちが東京に集まってきているというのでしょうか。

 「グローバル都市不動産研究所」の調査によれば、1958年から2018年までの60年間における東京都への転入超過数を男女別に見ると、2008年頃から女性の転入超過数が男性を上回るようになり、2018年には女性4.8万人、男性3.4万人と、女性のほうが1.4倍以上も多くなっているとのこと。年齢的には、20〜24歳が第1位であることは過去数十年変わっておらず、2018年の女性4.8万人の内訳でも、20〜24歳が3万人強と、年齢別で最も多い世代だということです。

 そして調査では、東京での暮らしを選んだこの20〜24歳女性がどういう属性の人たちかについても、さらに深堀りしています。

 東京都への転入超過者を細かく見ていくと、20〜24歳という転入超過人口が最も多い世代において、横浜市、札幌市、仙台市、福岡市、新潟市など全国に20ある政令指定都市からの転入が顕著とのこと。しかも、特に女性のほうが男性より人数の多い傾向がはっきり見られるということです。

 これは言いかえれば、東京に一極集中している人口の大きな部分を占めているのが、全国の政令指定都市を経由して東京に転入してくる20〜24歳の女性だということ。つまり、「大都会東京」を目指して上京する若者たちの中核を担っているのが、(言葉は悪いですが)「本当の田舎」出身者ではなく、(ある程度)都会暮らしの楽しさを知っている地方の大都市で育った女性たちだということになるでしょう。

 「親元を離れたい」「新しい生活を始めたい」、そして「出るなら「今しかない」といった思いが、(想像ですが)20歳前後の未来ある彼女たちを東京へと突き動かしているのでしょうか。大学進学、一流企業への就職、そんなタイミングに合わせて上京していく彼女たちを、親たちもまた「仕送り」などで応援しているのかもしれません。

 とにもかくにも、若年世代の人口移動を都道府県別で見ると、この10年間で全国33の道府県で男性より女性が多く流出しているとのこと。栃木県2.4倍、富山県2.1倍、鹿児島県2.1倍など、中には男性の2倍を超える女性が去っている地域もあるのが現実です。

 (この地域が「特に」ということではないでしょうが)地方では今でも「男の仕事と女の仕事」といった固定観念の下、性別による役割分担をしている企業なども多いと聞きます。仕事の内容ばかりでなく、男女関係なく多様なライフデザインを組み立てられ、のびのびと暮らせる社会があってなんぼのこと。自分がかなえられなかった「東京の都会暮らし」に憧れて、娘の背中を押すお母さんなども多いことでしょう。

 いずれにしても、地元の高校を卒業した女性にとって「大学進学」が普通の選択肢となっている現在、自らの将来を考えれば東京への進学はまさに「キャリアの王道」と言えるかもしれません。

 そして、東京で4年間の学生生活を謳歌した後、彼女たちが魅力を感じることのできるような労働市場が、親元から通えるような場所にあるとは限らない。結果、自らのスキルを生かせる選択肢が多く、多様な働き方ができ、様々な人との出会いがあって刺激的な東京に、20代前半の女性が集まる傾向が続いているということでしょうか。

 少子化の原因を東京一極集中に求める声が高まる中、そんな彼女たちに責任を押し付けるような声が上がっているのは極めて残念な話。少子化の問題は別にして、もしも地方が若い女性を取り戻したければ、できることは判っているはず。

 まずは地域のオジサンたちが心から深く反省し、彼女たち若い女性が魅力を感じられるような街づくり、社会づくりを進めることしかないと思うのですが、果たしていかがでしょうか。



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