MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯979 「りそにゃ」の目がかわいくないワケ

2018年01月29日 | うんちく・小ネタ


 投票でキャラクター日本一を決める恒例の「ゆるキャラグランプリ」が11月18・19日の両日に三重県桑名市で開かれ、ご当地ランキングでは千葉県の「うなりくん」が、企業・その他ランキングではりそなの「りそにゃ」が2017年のグランプリに輝きました。

 その名の通り金融機関の「りそなグループ(りそな銀行・埼玉りそな銀行・近畿大阪銀行)」のコミュニケーションキャラクターである「りそにゃ」は、同グループが10年の節目を迎えた2013年に誕生したひげがない白猫のキャラクターです

 グループブランドの浸透やPRなど差別化戦略の一環を担うべく、4年間にわたって店頭や窓口のポスターに登場したり「LINE」のスタンプになったりしてきたこともあって、お堅い金融機関のゆるキャラとしては(割と)知名度の高い存在として知られてきました。

 2015年のゆるキャラグランプリで5位となったことから、同社では「りそにゃが天下を狙います」と宣言し、専用ホームページやツイッターを活用した情報発信のほか、東京本社前に毎日順位を表示するほど(その浸透に)力を入れてきました。

 そうしたこともあって、2016年のグランプリでは(りそにゃは)中盤まで独走態勢を敷いていましたが、終盤でまさかの失速。ライバルである日本郵便の「ぽすくま」に栄冠を奪われ3位という結果に涙をのんだ形になっていました。

 そうしたこともあって、今回のグランプリ獲得にりそなグループは意気盛んです。「りそにゃ」本人も19日のクロージングにおいて、「ワタシ、本当にうれしいです。応援してくれた皆さんに感謝の気持ちをお伝えすべく、りそにゃ感謝祭を開催します」とコメントしたということです。

 さて、この「りそにゃ」ですが、お目めパッチリで3頭身ぐらいの愛らしい(まさに)「ゆるい」キャラクターが並ぶ中に立つと、(彼らとは一線を画した)特異なキャラが目立ちます。

 身なりはシンプルで目元はあくまで涼やか。立ち姿もシャープで顧客への媚びがほとんど感じられない清潔感は「さすがに銀行さん」でという感じですが、(例えば)三大メガバンクのキャラクターであるクマの「アカギさん」(三菱東京UFJ銀行)やハリネズミの「みずっち」(みずほ銀行)やカワウソの「ミドすけ」(三井住友銀行)などと比べても、かなりクールな印象は否めません。

 りそなの「りそにゃ」は、何故いつもこんな冷静にしているのか?…ふと抱いたそうした疑問に応えるかのように、11月20日の日本経済新聞では「ゆるキャラ優勝『りそにゃ』」猫の目に込められた思い」と題する興味深い記事を掲載しています。

 「りそにゃ」をかわいいとする意見は決して多くはないものの、実はその「かわいくない目」にこそ意味があるのだと、記事はその冒頭で説明しています。

 まさに「猫の目」のごとく、りそな銀行を取り巻く環境は2000年代に入って激変したと記事は指摘しています。2003年の公的資金注入後、JR東日本出身の故・細谷英二氏の陣頭指揮の下で、りそなは「従来の銀行の発想を変える改革」を進めてきました。そうした中で、夕方5時まで営業や待ち時間ゼロ運動、年中無休店舗など、実った項目も多かったということです。

 そして、公的資金注入から10年が経過した時点で(満を持して)生まれたのがこの「りそにゃ」だったということです。

 記事によれば、当時は大手の銀行で自社キャラクターを持つケースはなく、当初は「かわいくない」「なぜ猫なのか」と、経営会議でもなかなか役員の意見がまとまらなかったということです。

 もともと銀行にとっては、企業キャラクターは支持層を広げる効果は薄いとされてきたということです。その上りそなには、血税で経営支援をしているという世論の銀行に対する(おちゃらけを許さない)厳しいイメージがつきまとっていたと記事はしています。

 さて、記事によれば「りそにゃ」に関する社内のトリセツには、敢えて「りそにゃは、りそなの社員や銀行員ではありません」と明記されているということです。

 顧客向けのポスターでは「銀行って、どうして3時に閉まるのでしょう?」「平日は、なかなか時間ないですよね」など、公的資金投入後に打ち出してきたりそな独自の改革の取り組みをりそにゃが解りやすく問うています。

 銀行目線から顧客目線へ。倒産の苦境に陥った銀行だからこそ、(そこには)第三者の視点である「猫の目」を借りながら、顧客の認知度を上げる狙いがあったと記事は指摘しています。

 りそなホールディングスの東和浩(ひがし・かずひろ)社長は「りそにゃの目がかわいくないのは理由がある」と話していると記事はしています。それは、常に「顧客目線を常に意識し、冷静に自分たちのサービスを見つめ、社員に向上を促す役割を込めた」からだということです。

 足元では、大手銀行、地方銀行に限らず、日銀のマイナス金利政策を受けて合理化・効率化の波が押し寄せています。そうした収益力低下が否めない環境の中であるからこそ、地方を含めた成長強化に向けて、銀行はより涼やかな顧客目線で根を張る必要があると結ばれたこの記事の視点を、私も大変興味深く受け止めたところです。



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