MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯25 サイン(sign)について ②

2013年07月01日 | 文化

 進化の過程で蓄積された経験というものが、幾世代にもわたる時を超えて人の脳の中に様々な回路を作っているという話を聞きました。脳へのちょっとした情報の入力が、ある種のサインとして身体の反応を引き起こす、このようなことがままあるのはそのためだということです。

 例えば、赤信号の赤い色はまさに「血の色」。人間の脳は赤い色を危険な色だと関知して大きく反応するのだそうです。また、洋の東西、老若男女を問わず蛇があれだけ嫌われるのは、森林や草原などでの暮らしの中で相当ひどい目にあったトラウマだとか。だからミミズや芋虫のような手足のない細長いものが嫌われるのだとか、そういう話も聞こえてきます。

 黒板やガラスをひっかく音には人種や民族に関係なく約90%の人間が強く反応するといいますが、これは進化の過程にあった人類が仲間に危険を知らせるときの叫び声の周波数と同じだからだという説が有力なのだそうです。

 我々の身体は、無意識の内にもこうしたサインを見逃しません。

 人は、情報の8~9割を視覚から得ていると言います。人間の脳は、網膜に映し出された映像を様々な記憶と照らし合わせ、それが何者かを「認識」しようと努力します。

 人は黒い点が3つあるとそれだけで「人の顔」として認知するようにできているそうです。そう言えば小学校に上がる前など、親戚の家に泊まりに行ったりすると天井板の節穴がお化けの顔に見えて、怖くて仕方がなかったことを思い出します。

 かつて、攻撃のすべを持たない脆弱な人類は群れを作って外敵や自然環境から身を守り、また狩猟や採集や農業をしながら何万年にもわたって生き延びてきました。そうした生活の中で、同じ群れの個体の表情をサインとして受け取りその情報に的確に対応することは、集団の中で生きていくための大切な知恵であったはずです。

 特に女性(雌)は、子育ての必要などから集団生活になじむことが求められる機会が多かったため、こうした「サイン」(人の気持ち)を読む能力が、男性(雄)よりもかなり高度に発達したと考えられています。

 そして何万年もの時を超えた現代、一般的に言えば男性はやはり「察することが」苦手です。「どうして私の気持ちが分からないの?」とパートナーから嘆かれ、呆れられている諸兄も多いのではないでしょうか。

 男性が「言ってくれなきゃ分からないだろ」といくら語気を強めて主張しても、そうしたいらだちは女性には普通通じません。そう言えばメールの顔文字も、女性の方がずいぶんと表情豊かに使いこなしています。

 「何でわからないの?」「デリカシーがない」と非難される貴方の背景には、人類の進化とともに何万年にもわたって蓄積されてきた、そういう長い長い物語があることを心した方がいいということです。



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