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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2293 人は何歳くらいで死ぬのか?

2022年11月12日 | 日記・エッセイ・コラム

 ソ連共産党最後の書記長としてペレストロイカを推し進めたミハエル・ゴルバチョフ氏(享年91歳)、そして、それに続いた英国のエリザベス女王(享年96歳)の逝去の報は、世界中の人々に一つの時代の終焉を告げました。

 さらに国内でも、不慮の凶弾に倒れた安倍晋三元首相をはじめ、政治家の武村正義氏、落語家の三遊亭円楽師匠、京セラの稲森会長、そしてプロレスラーのアントニオ猪木氏など、昭和・平成の時代を第一線で駆け抜けた各界の巨星たちが次々と永遠の眠りについています。

 人は「いつかは死ぬ」というものの、それが何時かは誰にも分からない。「超高齢社会」「人生100年時代」という言葉に(それなりに)リアリティはあったとしても、人が自らの死を自覚できるのは、結構直前になってからのことなのかもしれません。

 実際のところ、私は(そしてあなたは)いつごろどのように死ぬのでしょうか。10月10日の総合情報サイト「PRESIDENT Online」に、統計データ分析家の本川 裕氏が『平均寿命よりリアル…80代後半でしか死ななくなった日本人』と題する論考を寄せているので、(参考までに)その一部を小欄に紹介しておきたいと思います。

 日本人の平均寿命は驚異的に伸び、2021年には女性が87歳、男性が81歳と主要先進国の中ではトップの地位にある。しかし、この「平均寿命」という数字は、一見分かりやすいようで実は誤解を招きやすいデータでもあると本川氏はこの論考に記しています。

 平均寿命は、(実は)寿命が延びていくことをほぼ想定していない動植物に適用される「生命表」の概念に基づくもの。毎年の年齢別死亡率から仮想計算された、「ゼロ歳児の平均余命」(←確率的にあと何年生きるか)だというということを理解しておく必要があるということです。

 なので、2021年に生まれた男の子が実際に何歳まで生きるかは、(今後の死亡率がさらに低下することが予想されるため)2021年の平均寿命である81歳よりも長くなることが見込まれると氏は言います。

 また、例えば65歳の男同士が、今後何年生きるかを話し合っているとき、平均寿命が81歳だから、あと16年と考えるのは、もう1つの意味でも間違っている。というのは、65歳の平均余命は男の場合は19.85年であり、そういう意味からは、65歳まで生きた男の平均寿命はいわば85歳だからだということです。

 そこで、氏はこの論考で、(加工指標である「平均寿命」ではなく)生データである「死亡年齢」から、ヒトは何歳ぐらいで死ぬのかについて考察しています。

 本川氏によれば、昨年(2021年)の死亡者のピーク年齢は、男が85歳、女が92歳。それぞれ、その年齢で男性が3万330人、女性が3万4506人が亡くなっていると氏はしています。

 この死亡ピーク年齢は、男女の平均寿命(男性81歳、女性87歳)よりも4~5歳高くなっている。ちなみに、男女ともに73歳にもう1つのピークがあるが、これはこの年齢が団塊の世代のピークに当っているから。当該年齢の母数が多いので、死亡数も多いためだということです。

 それでは次に、こうした死亡ピーク年齢が近年、どのように推移(変化)してきているかについてです。データの推移を見ると、男女ともに、高年齢化と死亡数増加傾向が同時に進んでいることが一目瞭然だと氏はしています。

 特に近年の男性では、女性よりもり高年齢化の進捗度合いが大きいことが特徴となっている。

 2000年から2021年にかけて男性はピーク年齢が74歳から85歳まで11歳も高くなっている一方で、女性は(もともと高年齢化が進んでいたこともあり)86歳から92歳へと6歳しか高くなっていない。男性の死亡のピークがそんなに前でない2000年には74歳と、今よりかなり若かったというのはかなりの驚きだということです。

 おそらく2000年当時の男性は、(現在と異なり)70歳を超えたら死を意識する人も多かったのではないかと氏は言います。ちなみに、2000年時の平均寿命は男性77.7歳(女性は84.6歳)で、2000年の男性の場合はピーク年齢の方が2.2歳も短かったということです。

 最近、時代の変化を表す用語として「多死社会」という言葉が使われるようになったが、現在の日本は「多死社会」というより、むしろ「高齢死社会」が特徴だと氏は話しています。

 かつては、赤ん坊の時から何回も訪れる人生の危機を、その度、乗り越えることができた者、そしてどんどん少数になる者だけが老人となった。しかし今では、ほとんど誰でもが老人になり、しかも、だいたい予測される年齢に死ぬ者が大半となる状況が生まれているというのが氏の認識です。

 こうした状況は、食料供給、保健衛生、医学、平和、治安、労災対策、安全な生活環境、社会保険(雇用保険、医療保険、介護保険、年金保険)などの総合効果によるもの。一言でいえば人類が目指してきた福祉社会がほぼ実現してきた証であると氏はしています。

 生まれたばかりの子どもを失うことはほとんどなくなり、また、飢えて死んだり、戦争や震災で死んだり、けんかなどで他人に殺されたり、酒の飲みすぎや伝染病、食中毒で死んだり、仕事で無理して死んだり偶発的な事故で死ぬことも非常に少なくなったということです。

 さてそれでは、こうした「高齢死社会」において日本人は、一体どんな病気や死因で死んでいくことになるのか。少なくなった幼児期の死は、小児がんや種々の小児疾患が多く、やはりかつてと比べて非常に少なくなった青年期の死因では、「自殺」の割合が多くなっていると氏は現状を説明しています。

 一方、中高年期に入ると、年齢とともに癌、心疾患、脳血管疾患という三大成人病によって死ぬ者が増えていく。ところが、65~69歳の時期を境に(心疾患や脳血管疾患は相変わらず多いままであるのに対し)癌の割合は減少に転じ、一方で、肺炎(誤嚥ごえん性肺炎を含む)や老衰が年齢とともに増加するということです。

 結局のところ、一番死亡数が多い85~90歳以降は、これらのいずれかで死ぬ確率がほぼ同等となる。また、これらほどではないが、腎不全や転倒などの不慮の事故で死ぬ場合も一定程度あるというのが氏の指摘するところです。

 確かに、ゴルバチョフ氏もエリザベス女王も、死因は「老衰」のようなもの。どんな優秀な頭脳や精神力、そして肉体を備えた人でも、(寿命としての)体力の衰えに逆らうことはできないということなのでしょう。

 何で死ぬかはともかくとして、とりあえず男性で85歳、女性で92歳が高齢者の死亡のピークということ。この年齢まで元気で楽しく過ごすのは結構大変そうですが、その辺りを目標にまずは頑張ってみようかと、本川氏の論考を読んで私も改めて覚悟したところです。

 



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