goo blog サービス終了のお知らせ 

MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2805 米国発の大波を浮上の機会に

2025年04月20日 | 国際・政治

 人気芸人グループだった「ダチョウ倶楽部」の持ちネタ(「聞いてないよー」)ではありませんが、トランプ米政権が発表した関税の大幅な引き上げへの相手国や市場の反応は、まるで突然「熱湯風呂」に突き落とされたようなものだったと4月16日の日本経済新聞のコラム「大機小機」は記しています。(「日本株、浮上の機会を生かせ」2025.4.16)

 もちろん米国政府にとって、税収増が狙いならこんなショックは必要なく、徐々に引き上げればいいはず。ただ、それだとじっと我慢するうちにゆでガエルになる国もあり、経済は長期にわたり停滞する可能性が高まるだろうとコラムの筆者は指摘しています。

 ということは、米国が世界に対しただ不意打ちのような今回の高関税率発表の狙いは別にあるのではないか。(敢えて言えば)そこには、同盟国を世界の枠組みを大転換させる試みに引き込むことにあるのだろうというのがこのコラムにおける筆者の見解です。

 2013年、当時のオバマ大統領が「米国は世界の警察ではない」と演説して以降も米国の「双子の赤字」は悪化が続き、新型コロナ禍以降の財政拡張政策や金利上昇も加わって状況をさらに苦しくさせていると筆者は指摘しています。

 そんな中、筆者が感じているのは、冷戦終結後の自由貿易体制を維持する耐え難い負担感が今の米国を突き動かしているのではないかということ。新しい世界の枠組みでは、メリットを享受する国が相応の負担を担うべきで、高まる地政学リスクへの対応力も高めておく必要があると考えているのではないかということです。

 このように、今回の措置を「大転換」を一気に進めるためのショック療法だと考えれば、米国の極めて高い関税の引き上げ率もわからないではないと筆者は言います。(まあ、本当にトランプ氏本人がそう考えているかどうかは別にして)ホワイトハウスの経済スタッフの中には、これを機会に第二次世界大戦後の世界経済を担った米ドルを基軸通貨とした「ブレトン=ウッズ体制」の見直しを図りたいという思惑が、少なからずあるのかもしれません。

 (いずれにしても)日本はこの大転換を(追加的な負担への)防戦一方で終わらせるのではなく、新たな飛躍のための挑戦の機会だと捉えることはできないだろうかというのが、このコラムで筆者の指摘するところです。

 1980年代の日米貿易摩擦では、米国は自動車への高関税で圧力をかけてきた。日本企業は米国での現地生産に踏み切り、世界的企業への飛躍を手にするきっかけとなったということです。

 世界の消費は、米国、欧州、中国や日本を含むアジアが大半を占めると筆者はしています。こうした機会に(一定の)「地産地消」を進めることで、有事への対応力も高まっていくと筆者はしています。

 分散する生産拠点の品質のブレをなくし高め続けるには、投資と新たな工夫(人工知能を活用してエンジニアのノウハウを瞬時に現場にフィードバックするなど)が求められるだろう。しかし、日本企業には大転換を成長のきっかけとするために必要な生産現場の知恵があり、(幸いにして)投資を支える充実した内部資金も企業や金融機関に蓄積されているということです。

 確かに筆者も言うように、戦後の日本は、ニクソンショック、プラザ合意、自動車を巡る貿易摩擦、リーマンショックなどの様々な問題が起こるたび、米国の一方的な「宿題」をタフにこなしながら、それをジャンピングボードとして成長してきたと言っても過言ではありません。内部改革がなかなか進まない日本では、「外圧」はシステムの変化を促し日本を変える力になるということでしょうか。

 実際、米国との連携の強化・見直しは、日本経済の(根本的な)問題であるエネルギーや食料の調達の不安を抑制し、安全保障面を含め地政学リスクへの対応力を高めるだろうと筆者はコラムの最後に綴っています。

 今でこそ日本株は不透明さが増しているが、バリュエーション(投資尺度)の割安さもある。トランプ関税が世界を揺さぶっている今こそが、中長期的に浮上するチャンスに目を向けるタイミングなのかもしれないとコラムを結ぶ筆者の指摘を、私も興味深く読んだところです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。