
第39話「さらばウルトラマン」(ゼットン回)
観客動員285万人、興収43億円を突破している『シン・ウルトラマン』の大ヒット御礼企画。
7/8(金) ~ 7/21(木) の第33話「禁じられた言葉」に続いて、7/22(金) ~ 8/4(木) は第39話(最終回)「さらばウルトラマン」の特別上映。
ウルトラマンの最終回について、簡単に紹介します――。

第39話「さらばウルトラマン」
空飛ぶ円盤の群れが地球に向かって飛来してきたことを察知した各国の人工衛星が、地球上にSOSの電波を発信した。

科学特捜隊パリ総合本部やニューヨーク支部、ロンドン支部、モスクワ支部、日本支部でも情報をキャッチし、地球全体が恐怖のどん底に叩き込まれた。

パリ本部からの緊急指令が入り、円盤らしき飛行物体群の地球侵入は日本時間午前9時24分で、岩本博士によると地球総攻撃が目的だという――。

『シン・ウルトラマン』の設定の原典
【ゼットンの声】
ゼットンの“ゼットォン”という声は、ウルトラマン第39話 (最終回)「さらばウルトラマン」に出てくるゼットン星人の声です。
『ウルトラマン』のナレーションの浦野光氏が声を担当しており、ハヤタ隊員にマルス133を打たれ、消滅する際の断末魔として発しています。

【スペシウム光線と八つ裂き光輪】
衛星軌道上で、ウルトラマンがゼットンにスペシウム光線と八つ裂き光輪で攻撃しますが、これも第39話のオマージュで、2つとも効かないのも同じです。

ちなみに、ゼットンから放たれる砲弾は、後半は全て第39話のゼットンが発射する赤い怪光線になっています。

【1兆度の火球】
ゼットンの“1兆度の火球”は、元々は大伴昌司氏が少年誌に掲載したゼットンの解剖図に記載した非公式の設定でした。
しかし、そのインパクトから子供達の間に広く浸透したため、公式設定になったようです。

これは、児童誌『ぼくら』の付録などに掲載されたゼットン星人とゾフィの情報が混在したキャラクターです。
この情報は、マスコミ配布用の円谷プロの公式資料に書かれていた誤情報で、“ゼットンを操って大暴れする”という設定がゾーフィ編のモチーフになっています。

金と黒のカラーリングは、1996年の成田亨特撮美術展で発表されたマン、セブン、ヒューマンに続くヒーロー「ネクスト」のカラーリングがモチーフ。
成田氏が「ウルトラマンG」の企画段階でデザインした“ウルトラマン神変 (しんぺん) ”も、金と黒のカラーリングになっています。

【1兆度の火球】
ゼットンの“1兆度の火球”は、元々は大伴昌司氏が少年誌に掲載したゼットンの解剖図に記載した非公式の設定でした。
しかし、そのインパクトから子供達の間に広く浸透したため、公式設定になったようです。

【宇宙人ゾーフィ】
『シン・ウルトラマン』では、天体制圧用最終兵器ゼットンを伴った“ゾーフィ”という外星人が登場します。
『シン・ウルトラマン』では、天体制圧用最終兵器ゼットンを伴った“ゾーフィ”という外星人が登場します。
これは、児童誌『ぼくら』の付録などに掲載されたゼットン星人とゾフィの情報が混在したキャラクターです。
この情報は、マスコミ配布用の円谷プロの公式資料に書かれていた誤情報で、“ゼットンを操って大暴れする”という設定がゾーフィ編のモチーフになっています。

金と黒のカラーリングは、1996年の成田亨特撮美術展で発表されたマン、セブン、ヒューマンに続くヒーロー「ネクスト」のカラーリングがモチーフ。
成田氏が「ウルトラマンG」の企画段階でデザインした“ウルトラマン神変 (しんぺん) ”も、金と黒のカラーリングになっています。
撮影裏話
【ロケ地】
第39話で科特隊本部として使用されたのは、鎌倉にある東レ基礎研究所。
ラストシーンで科特隊が地球を去っていくウルトラマンに手を振るシーンは、建物の右斜め前付近のようです。
なお、科特隊本部の指令室のシーンの撮影は、美セン(東宝ビルト)で行われました。


【実相寺アングル】
ウルトラマンのDVD-BOXのブックレットによると、「さらばウルトラマン」の撮影に実相寺昭雄監督が応援として参加していたそうです。
科特隊指令室のシーンは、画面の手前に物を入れ込む「なめショット」や、パース(遠近感)の効いた映像、シンメトリー配置などが特徴の“実相寺アングル”が多用されています。
もしかすると、科特隊の建物内のシーンは実相寺監督が撮影していたのかもしれません。

【ゼットン星人の宇宙船】
ゼットン星人の宇宙船は、撮影終了後に黒にカラーリングされ、『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊の指令室のオブジェとして使用されました。
ちなみに、自立プログラムが起動される前の天体制圧用最終兵器ゼットンの形状は、母船の形のオマージュと思われます。


[ウルトラセブン第1話「姿なき挑戦者」より]
【ゼットンの名前】
「ゼットン」という名前は、最後の敵ということで、アルファベットとひらがなの最後の文字である“Z”と“ん”を足したものになっています。
また、倉方茂雄氏によると、ゼットンの顔の電飾は「たぶん、メフィラス星人の機電を流用したんでしょうね」と述べています。
なお、ゼットンの後ろ姿はカミキリムシがモチーフになっているとか。

【白黒ゼットン】
ウルトラマンを倒した後、ゼットンが科特隊本部をエネルギー弾で炎上させた次のシーンで、画面が白黒になります。
これは、画面を白黒にすることによって絶望感を醸し出しているとか。

しかし、これは科特隊のアラシ隊員とイデ隊員が黒いバイザーを下した時の視界を現していて、映像を入れる位置を間違えたという説もあるようです。
【ゾフィのスーツアクター】
ゾフィの声優は、『ウルトラマン』のナレーションを務めていた浦野光氏。
ゾフィにはウルトラマンのスーツアクターの古谷敏氏が入っており、自著『ウルトラマンになった男』で「複雑な心境だった」と語っています。

ゾフィのスーツは第1話から第13話で使用されたAタイプのスーツの改造で、マスクは新規造形のCタイプ(覗き穴無し)が使用されています。
また、『完全解説・ウルトラマン不滅の10大決戦』によると、倒れているウルトラマンにはウレタンが入っているそうです。

元々の最終回シナリオ
ウルトラマン第39話「さらばウルトラマン」の脚本が現在のものになるまでには、かなりの紆余曲折があったようです。
以下、『TV Magagin Hero Graphic Library1 ULTRAMAN』から引用します。

【死ななければならない】
最終回の製作にあたって、サンケイ新聞等でストーリーのアイディア募集が行われました。
放送継続を望む声も含めて多数の投書が寄せられ、脚本担当の金城哲夫氏は1967年2月22日付の東京新聞でこうコメントしています。
子供たちの夢は壊したくないのだが、結局ウルトラマンは地上では、物凄い怪獣にやっつけられて死ななければならない。
その場合、負け方に秘密があり、ウルトラマンの心臓だった部分がやられるが、彼の体から電波を発し、“光の国”へ通報される。
その通報を聞いてウルトラマンがの仲間が彼のもう一つの生命を持ってやってきて、その強力な怪獣をやっつけて、さらにウルトラマンに生命を与えようとするが、ウルトラマンは「もしその生命を自分がもらったら、地球人のハヤタが死んでしまう」と拒否。
「地球人は自分の力で地球を守らなければいけない」という結末にする構想を練っている。
しかし、「ウルトラマンが死ぬ」という噂を聞いた子供たちから円谷プロとTBSに「ウルトラマンを殺さないで!」という声が殺到。
撮影はかなり進んでいましたが、「ウルトラマンは負けるけど死なない」という現在の脚本に変更になったそうです。
【ゼットンを倒すゾフィ】
ゾフィがゼットンを倒すシナリオもあったようです。以下、第39話「さらばウルトラマン」準備稿より引用します。

ウルトラマンの仲間、上空からゼットンに対してシュペシューム光線を発しながら急降下してくる。ゼットン、光線を浴びて、そのまま火の海に埋没する!
ガーウオオ!断末魔の叫び!
と、平野の大型円盤が飛び立つ!ウルトラマンの仲間、目から光線を発射する。大型円盤吹っ飛ぶ!
ウルトラマンの仲間、それを見届けると、ウルトラスピンでクルクル回転をはじめ、みるみる赤い球(第1話で登場の)に変わる。
【叩き潰されるカラータイマー】
金城氏が書いた第39話の脚本の決定稿では、ゼットンがウルトラマンのカラータイマーを叩き潰すシーンがありました。
しかし、“残酷すぎる”ということで光線に変更になっています。以下、「金城哲夫シナリオコレクション」より引用します。

ゼットンに組み伏せられているウルトラマン。
カラータイマーが激しく点滅する。
N(ナレーション) 「ウルトラマンの体は地球上では急激に消耗する。エネルギーがなくなると胸のカラータイマーが鳴る!ウルトラマン立て!」
よろよろと立ち上がるウルトラマン。
と、ゼットンが、ウルトラマンのカラータイマーをグシャッと叩きつぶす。
ウルトラマンの悲鳴!動きが止まってしまう。
氷水を浴びたように立ちつくす隊員たち。言葉はもとより、声さえ失う。
ゼットンの1発目と2発目の光線では、ウルトラマンの立ち位置が違っています。(後ろのホリゾントに描かれている雲の見え方が変わっている)
カラータイマーを叩き潰すシーンを光線をカラータイマーに受けて倒れるシーンに差し替えた痕跡なのかもしれません。

赤い玉の中でのシーンのウルトラマンのカラータイマーも表面状態がおかしく、壊れているように見えます。
ゼットンがカラータイマーを叩き潰すシナリオで途中まで撮影していた痕跡なのかもしれません。

ちなみに、カラータイマーが止まり、うつ伏せに倒れた次のシーンで、ウルトラマンが仰向けになっています。
「ゼットンがうつ伏せに倒れているウルトラマンを仰向けにしてカラータイマーを叩き潰すシーンがあったが、残酷すぎるとカットされたから」
実際は違うようですが、このような都市伝説も生まれています。
【絶命するウルトラマン】
金城氏の「ウルトラマンは死ななければならない」という言葉通り、準備稿ではウルトラマンはハヤタに命を譲って絶命します。

声 「迎えに来たのだ。さあ、私と一緒に光りの国へ帰ろう、ウルトラマン」
ウルトラマン 「仲間、私の体は、私だけのものではない。私が帰ったら一人の地球人が死んでしまうのだ」
(中略)
ウルトラマン 「仲間、それならば、私の命をハヤタにあげて、地球を去りたい」
声 「お前は死んでもいいのか?」
ウルトラマン 「かまわない、私はもう二万年も生きたのだ。地球人の命は非常に短い。それにハヤタはまだ若い!彼を犠牲には出来ない」
声 「よろしい!では、そうしよう」
準備稿では「私の命をハヤタにあげたい」というウルトラマンの申し出に対するゾフィの返答は、「よろしい!ではそうしよう」となっています。
しかし、本編でのゾフィの台詞は「私は命を2つ持ってきた」に変わっています。
これは、子供達から寄せられた「ウルトラマンを殺さないで!」という懇願の声を反映したものと言えるでしょう。

実際、ゾフィが本編でこの台詞を言う時のシーンは、カメラの位置や照明の状態、画面の色合いも変わっています。
「よろしい!ではそうしよう」というゾフィの台詞を撮り直した痕跡なのかもしれません。
・第39話「さらばウルトラマン」
監督:円谷一
脚本:金城哲夫
特殊技術:高野宏一
視聴率:37.8%
視聴率:37.8%
編集後記
ウルトラマンは第39話でフィナーレを迎えましたが、大人気だったため、もう1クール放送を続けようとしていたようです。
しかし、連日の徹夜で撮影スタッフの疲労が限界を超えていたため、3クール39話での終了が決まりました。
そんな中で、当時のスタッフだった満田かずほ監督はこう述べています。
「もし、あの時ウルトラマンが終わらず、続けることができていたら、きっと他のウルトラシリーズは無かったと思う。初代ウルトラマンのまま今も続いていたと思うんだよ」
【ウルトラマンの歌】
『ウルトラマンの歌』は、第1話~第7話、第8話~第30話、第31話~第39話の3パターンあります。
第39話は、「わーれらーの」という歌い方で、男性コーラス(コーロ・ステルラ)が無くなっているバージョンです。

タイトルバックは、セットに平台を敷いてドライアイスを流し、照明を吊っている天井部分に飯島敏宏監督と撮影クルーが上って俯瞰で撮影する手法がとられました。
飯島監督のかけ声のタイミングで照明の色を変えて撮影したため、音楽と色の変わりが微妙にずれています。
【シン・ウルトラマン】
『シン・ウルトラマン』では、ウルトラマンは神永に自らの命を託して絶命しました。
ウルトラマン第39話 (最終回)「さらばウルトラマン」も、最初はウルトラマンがハヤタに自らの命を託して絶命する設定でした。
つまり、本来のカラータイマーが無いデザインと、最後にウルトラマンが死ぬ本来の最終回の設定に立ち返ったのが、『シン・ウルトラマン』なのです――。

ウルトラマン第39話 (最終回)「さらばウルトラマン」も、最初はウルトラマンがハヤタに自らの命を託して絶命する設定でした。
つまり、本来のカラータイマーが無いデザインと、最後にウルトラマンが死ぬ本来の最終回の設定に立ち返ったのが、『シン・ウルトラマン』なのです――。
