
ウルトラマン第1話・30話
ハイビジョン・デジタルリマスター
1966年7月17日に本放送を開始した国民的特撮番組『ウルトラマン』。
6月18日(土)に、第1話と第30話のハイビジョン・デジタルリマスター版が放送されるということで、制作の裏話とともに簡単に紹介します――。
第1話「ウルトラ作戦第1号」
科学特捜隊のハヤタ隊員は、小型ビートルでパトロール中に謎の青い球体を発見。

追跡を開始した矢先、続いて出現した赤い球体と衝突して森に落下。ビートルは大破し、ハヤタは命を落としてしまう。

しかし、M78星雲から来た宇宙人に命をもらって生き返り、ウルトラマンと一心同体となったハヤタにベータカプセルが託され、宇宙怪獣ベムラーとの闘いが始まった――。

【制作裏話】
ベムラーの回は第1話となっていますが、1966年3月16日のクランクインから2か月後の制作第5話として撮影されました。
また、第1話の最終脚本は、金城哲夫氏が1966年5月11日から13日にかけて祖師ヶ谷大蔵にあった旅館はなぶさに泊まり込んで書き上げました。

著名な脚本家に依頼した脚本が不評で、ほとんどを書き直すことになったためで、最終的には共同脚本という形になりました。
また、赤い球の中でハヤタに語りかけるウルトラマンの声は、本来の声優だった中曽根雅夫がアフレコに遅刻したため、編集技師の近藤久が当てています。
水のシーンは美センのプールのあるステージで撮影しており、普段は水を抜いてその上に平台を置いて使っていました。
ベムラーがいる所だけ水深が1.8m位で、ベムラーが潜る時に浮いてしまうため、スタッフ総出で押し込んだそうです。
[ベムラー撮影秘話 Part2]
特技監督:高野宏一
第30話「まぼろしの雪山」
雪山で遭難した漁師が救助され、その漁師は「伝説の怪獣ウーを見た」と怯えながら話した。

村人から“雪ん子”と呼ばれている少女が猟の邪魔をするのを懲らしめていると、“まぼろしの雪山”と呼ばれている山付近に現れたという。

そんな中、スキー場にウーが現れてスキー客がパニックになったため、スキー場の経営者は科特隊を呼び、ウーを退治してくれるよう依頼するが――。

【制作裏話】
この回からウルトラマンのスーツが新調され、Cタイプとなっている。ウーという名前の命名者は金城氏で、怪獣スーツはエクスプロで製作。
沖縄の代表的織物「芭蕉布 (ばしょうふ) 」の原料となっている“苧(ウー)”と呼ばれる糸芭蕉の幹からとった繊維に由来するとされています。
ウーの体毛は石膏の補強材として使われるサイザルという植物繊維で、東宝撮影所の前にあった自転車屋に頼んで特別に長いものを用意してもらったそうです。
協力クレジットにはTBS東丸山スキー場と書かれていますが、実際に撮影が行われたのは石打丸山スキー場とのこと。
撮影当時は数年に一度の大雪が積もり、一歩歩くにも息が上がって大変だったとか。
科特隊でスキーが滑れる人間がおらず、止まるカットでもすぐに倒れてしまうため、監督は「2mでいいから滑って」とお願いして、後はスタンドインとなったそうです。
作品中に出てくる飯田山は、新潟県・越後湯沢を代表する名峰「飯士山(いいじさん)」です。
なお、このウーの回は、毎回怪獣を殺すのが嫌になり、やりきれなくなったウルトラマンのスーツアクター・古谷敏氏の意向が反映されています。
「たまには怪獣を殺さない優しいウルトラマンの話があってもいいんじゃないか」と古谷氏から頼まれた金城氏によって書き上げられたそうです。
ゆきの母親の魂の化身であるウーが、ウルトラマンとの戦いの途中で消えたのは、ゆきが亡くなって守るべき存在が無くなったため。
ゆきの魂とともに、天国へと旅立ったのでしょう。
・第30話「まぼろしの雪山」
監督:樋口祐三
脚本: 金城哲夫
特殊技術:高野宏一
ウルトラマンの歌
怪獣の影絵は、第1話「ウルトラ作戦第1号」がネロンガ、M1号、ペギラ、カネゴンの4種類で、ネロンガが2パターンあります。

第30話「まぼろしの雪山」はカネゴン、ゴーガ、ゴルゴス、アントラー、マグラー、ギャンゴ、ガラモン、バルタン星人の8種類となっています。
(M1号、ペギラ、カネゴン、ゴーガ、ゴルゴスは『ウルトラQ』に登場する怪獣)
これは、怪獣の影絵が第12話から変更になっているためです。

また、主題歌は第1話~第7話、第8話~第30話、第31話~第39話の3パターンあるので、第1話と第30話ではみすず児童合唱団の歌い方や声質が異なります。
第1話は「わーれらーの」、第30話は「われらーの」と歌っており、第1話の歌唱はややおとなしめになっています。
【制作裏話】
1966年3月16日に『ウルトラマン』がクランクインした際、主題歌のタイトルバックのことを誰も考えていなかったことが判明。
そのため、監督を最初に務めた飯島敏宏氏が撮影監督を担当することになりました。
セットに平台を敷いてドライアイスを流し、照明を吊っている天井部分に監督と撮影クルーが上って俯瞰で撮影する手法がとられました。
そして、飯島監督のかけ声のタイミングで照明部が色フィルターを差し込んで撮影したため、音楽と色の変わりが微妙にずれています。
編集後記
TBSから提示された『ウルトラマン』の予算は『ウルトラQ』と同じだったため、白黒からカラーになるという意味で実質的な予算減額でした。
そのため、造形の経費削減が求められ、廃物利用による改造で怪獣を作ることが多く、ベムラーやゴモラなどの人気怪獣のスーツが残っていないのが残念。
ただ、1973年に二子玉川園にて行われた怪獣供養で焼かれる運命にあったので、いずれにしても残っていないんですが。。
(ゴモラやバニラ、アボラスの頭部は残っているようですが、経年劣化によってミイラのような状態になっているようです)
また、放送尺の関係でカットになったシーンやNGになったシーンのフィルムも保管スペースの関係で廃棄されていて残っていないのも残念。
しかし、一番残念なのは、円谷プロダクション初代本社とウルトラシリーズの撮影所だった美セン(東宝ビルト)がすでにこの世に存在していないこと。
さらに、日本人のDNAの一部になっていると言っても過言ではない国民的特撮作品を生み出した場所に、何の顕彰物も無いという寂しすぎる現実。
クールジャパン戦略を国策として推し進めている国に住んでいる者として、無念でなりません。
「卓越した功績を顕彰し、その栄誉を称え、歴史的遺産を後世に伝えていく」そんな当たり前のことが普通に行われる世の中になることを願います――。
【出典】「NHKドラマ | @nhk_doramas」
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