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【本日最終日】庵野秀明セレクション「ウルトラマン」4K特別上映

2022年06月30日 | ウルトラ関連

 
 庵野秀明セレクション「ウルトラマン」4K特別上映 


 庵野秀明が『ウルトラマン』から選りすぐった4つのエピソードを、6月3日(金)から高精細4K映像にて期間限定上映中。

 観客動員好調により、上映期間が6月30日(木)まで再延長され、新規劇場(※)も追加されていますが、本日が最終日。

 ウルトラマンを高精細4K映像、大画面、大音量で観れるのは、今日が最後です――。

 ※TOHOシネマズ錦糸町TOHOシネマズららぽーと磐田TOHOシネマズファボーレ富山広島バルト11イオンシネマ新利府



        



 





 

 第18話「遊星から来た兄弟」



 東京に放射能を含んだ霧が発生し、人々は次々に倒れた。それは、地球征服を企む第8銀河系のザラブ星人の仕業だった。





 地球と友好関係を築くと見せかけて科特隊と宇宙局を懐柔しつつあったが、拠点にしていた土星探検ロケットの偵察に来たハヤタに本性を暴かれる。





 怒ったザラブ星人はハヤタを監禁してウルトラマンに変身できなくさせて、にせウルトラマンとなって街を破壊し始めた――。





【制作裏話】

 作品後半のウルトラマンがにせウルトラマンの頭にチョップをするシーン。

 ウルトラマンのスーツアクターの古谷敏氏は、距離感を間違えて思い切り仮面に手刀を当ててしまったそうです。

 小指を骨折したと思ったほどの痛さで、右手を振って痛みに堪える人間的な動きになってしまいましたが、監督の意向でそのまま使われています。







 ザラブ星人の名前は、兄弟の英訳のブラザーを逆から読んだもの。

 ザラブ星人のスーツは、第4話「大爆発五秒前」で登場するラゴンのスーツの改造で、スーツアクターは声を担当した青野武氏。

 ビートル内部でのハヤタとザラブ星人とシーンは、『シン・ウルトラマン』で見覚えがあるものが多々あります。

 「にせウルトラマン」のスーツは、Aタイプのウルトラマンスーツの改造で、靴はつま先が反っているBタイプのものが使われています。





 宇宙局での会議のシーンで画面左端に座っているのは、円谷プロの企画文芸室長で『ウルトラマン』のメインライターだった金城哲夫氏。

 作品の冒頭の霧に覆われる東京の街のシーンは、東宝撮影所の北側にあったオープンセットで撮影されたそうです。

 東宝撮影所での撮影だったため、円谷英二氏が冒頭シーンの演出に関わっているようで、“スモーク円谷”と呼ばれた本領が画面から感じられます。




 
 また、『シン・ウルトラマン』で観たことのあるシーンやBGMがそこかしこに登場するので、それらを知った上でまた観直すのもいいかもしれません。





・第18話「遊星から来た兄弟
 監督:野長瀬三摩地
 脚本:南川竜・金城哲夫



 第26話「怪獣殿下 前編」



 怪獣好きのオサム少年は、怪獣の存在を否定する級友に“怪獣殿下”と呼ばれてバカにされていた。





 そんなある日、生物学者率いる学術調査隊がジョンスン島で古代怪獣ゴモラを発見した。そのニュースは大々的に報じられ、オサム少年も鼻高々だった。





 万国博古代館に出品するため、UNG麻酔弾を打たれて科特隊によって大阪へ空輸されることになったゴモラだったが、途中で麻酔が切れ、六甲山に落下した――。





【制作裏話】

 かつてTBSのネット局だったABCの要請を受けて大阪ロケが実現した作品。

 第8話「怪獣無法地帯」の吸血植物スフランが再び登場し、ここでもスパイダーショットから繰り出される本物の火炎放射によって焼き切られています。

 ちなみに、アラシ隊員のスパイダーのグリップの下の方をよく見ると、ガスを送る黒いコードのようなものが一瞬映ります。

 ロケが行われた団地は調布市にある多摩川住宅で、子供が発する「シオシオノパー」は、当時流行っていたブースカ語。





 作品中で、ウルトラマンがゴモラが繰り出す尻尾攻撃を顔に受けた後、オサム少年の前にベータカプセルが転がります。

 これは、「ウルトラマンが普段、ベータカプセルを孫悟空の如意棒のように耳の中に納めており、それが衝撃で外に飛び出した」とまことしやかに囁かれています。

 (ウルトラマンの耳の中にある突起は、ベータカプセルの先端という 笑)

 「完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦」でも話題に上っていますが、ゴモラは元々、ジョンスン島で眠っていただけの存在でした。

 しかし、人間の身勝手な都合で大阪に空輸され、途中で麻酔が切れて地上に落下し、暴れ始めたので攻撃されるという、よく考えれば哀しい怪獣です。

 なお、ゴモラの頭部は、戦国の武将・黒田長政の兜をモチーフにしてデザインされ、頭部のみ現存しています。


・第26話「怪獣殿下(前篇)
 監督:円谷一
 脚本:金城哲夫・若槻文三


 

 第28話「人間標本5・6」



 奥多摩の日向峠で発生していた原因不明のバス転落事故の調査のため、科特隊のムラマツキャップとイデ隊員が調査に向かった。





 しかし、二人の乗ったバスもがけ下に転落したが、乗客は不思議と軽傷で済んだ。謎の女性の後をつけていったムラマツキャップは宇宙線研究所にたどり着く。





 その建物は6体の人間標本を採取する任務で地球を訪れた三面怪人ダダによって占拠されており、すでに4体の人間標本が捕えられていた――。





【制作裏話】

 宇宙線研究所は、第39話「さらばウルトラマン」のロケ地と同じ東レ基礎研究所

 ダダは、顔がパタパタと入れ替わる構造や、マスクが観音開きで開く構造も考えられていたが、顔面だけ外して取り換える仕組みになりました。

 ダダという名前は、フランス語のダダイズムから採られています。





 この回では、古谷敏氏が「映画を観ていて辛かった」というウルトラマンのスーツ(Bタイプ)の劣化を確認できます。

 ダダのミクロ化器の光線を受けて人間サイズになったウルトラマンのシーンでは、肘の部分に大きな穴が開いてしまっています。

 また、タイプBのスーツは、黒いウェットスーツを銀色に塗って、その上から赤に塗り分けていますが、塗装が剥げて下地の黒色が見えています。

 このスーツの状態が、ウルトラマンと怪獣との戦いの激しさを物語っているといえます。





 なお、この回のウルトラマンは3分を超えて戦っており、四つ足怪獣の時と異なり、低空ドロップキックや回し蹴りなどの多彩な蹴り技を繰り出しています。

 ちなみに、このシーンのロケ地は東宝会館(本館)の屋上で、現在はサミットストア成城店の敷地になっていて建物も解体されており、当時の面影はありません。





・第28話「人間標本5・6
 監督:野長瀬三摩地
 脚本:山田正弘



 第34話「空の贈り物」



 ある夜、東京晴海の埋め立て地に赤い火の玉が落下した。





 通報を受けた科特隊が現場へ急行すると、巨大な落下穴から怪獣が出現し、炎を吐きながら暴れ回った末、眠りについた。





 “スカイドン”と名付けられたその怪獣を宇宙へ還すために、「ワイヤーロック作戦」を実行する科特隊だったが――。





【制作裏話】

 スカイドンは、第14話「真珠貝防衛指令」に登場するガマクジラの改造。名前の由来は、空から“ドン!”と落ちてくる怪獣であるため。

 ハヤタ隊員がベータカプセルと間違えてスプーンを掲げてしまうシーンは台本には書かれておらず、実相寺昭雄監督のその場の思い付きでした。

 常識破りのギャグ演出を許可なく行った実相寺監督は、TBSプロデューサーの栫井巍氏から怒られ、飯島敏宏監督は「なんてことをしてくれたんだ」と頭を抱えたとか。

 また、フジ隊員の顔を「女優の顔を魚眼レンズで撮ってみたかった」という理由だけでドアップで映し、出来上がった映像を観た桜井浩子氏から激怒されています。

 この回はやり過ぎなくらいギャグ演出に振り切っていますが、ちゃんと『ウルトラマン』になっているのが凄いです(笑)

 ちなみに、この回で『シン・ウルトラマン』の神永の机上にあるテトラポッドの置物の由来がわかるシーンが出てきます。




 前衛的な撮影手法と演出で、“鬼才”と呼ばれた監督・実相寺昭雄が多様したカメラアングル「実相寺アングル」。

 画面の手前に物を入れ込んでその奥に被写体を撮影するなめショットや、パースの効いた映像が特徴で、『シン・ウルトラマン』でもオマージュとして多様されています。

 「空の贈り物」でも実相寺アングルだと一目でわかるような映像が多々あるので、意識して観てみるのも面白いかもしれません。

 (実相寺監督は本編の監督ですが、特撮の撮影現場にも顔を出して指示していました)


・第34話「空の贈り物
 監督:実相寺昭雄
 脚本:佐々木守



 ウルトラマンの歌



 『ウルトラマンの歌』は、第1話~第7話、第8話~第30話、第31話~第39話の3パターンあります。

 庵野秀明セレクションの4作品では、最初の3話は「われらーの」、第34話だけ「わーれらーの」という歌い方になっています。

 また、第34話は男性コーラスが無くなっています。





 怪獣の影絵は4話とも同じで、順番にカネゴン、ゴーガ、ゴルゴス、アントラー、マグラー、ネロンガ、ギャンゴ、ガラモン、バルタン星人となっています。

 (カネゴン、ゴーガ、ゴルゴス、ガラモンはウルトラQに登場する怪獣)


【制作裏話】

 1966年3月16日に『ウルトラマン』がクランクインした際、主題歌のタイトルバックのことを誰も考えていなかったことが判明。

 そのため、監督を最初に務めた飯島敏宏氏が撮影監督を担当することになりました。

 セットに平台を敷いてドライアイスを流し、照明を吊っている天井部分に監督と撮影クルーが上って俯瞰で撮影する手法がとられました。

 そして、飯島監督のかけ声のタイミングで照明部が色フィルターを差し込んで撮影したため、音楽と色の変わりが微妙にずれています。




 編集後記



 56年前に制作されたテレビ番組「ウルトラマン」。

 1960年代のテレビ番組が全国の映画館で上映され、休みの日は満員、平日でも大入りになっているという奇跡的な現実。

 また、半世紀以上前の作品にも関わらず、演出やデザインなどに古さやダサさをほとんど感じず、大人の鑑賞にも耐え得る内容になっているのは凄いことです。

 特に、ビートルの飛行シーンや火薬の爆発シーン、精巧に造り込まれたセットとその中で暴れ回る怪獣の迫力、リアリティは圧巻です。

 ウルトラマンのデザインやカラーリング、頭身、アクションに至っては、非の打ち所が無いほど洗練され、完成されています。

 『4Kウルトラマン』がヒットしているのは、閉塞感や先行き不透明感が漂う今の世の中において、“力強い明るさ”が作品に内包されているからなのかもしれません。

 鑑賞料金は1200円なので、1話あたり300円で4K化されて高精細になった4作品を大画面、大音量で観れるのはかなりお得です。

 なお、古谷敏氏の「夢道TV」によると、にせウルトラマンの仮面にチョップした時、目のアクリル樹脂部分が割れて破片が飛び散るのが見えるとのこと。

 ダダとの戦いのシーンのミニチュアセットの森の作り込みも素晴らしかったそうです。




 本放送から半世紀以上経っても色褪せない奇跡の番組を生み出した円谷プロ初代本社と、ウルトラ作品の撮影所「美セン(東宝ビルト)」。

 現在は両方とも現存していませんが、その伝説の建物があった跡地周辺に何の顕彰物も建立されていないのが我が国の悲しい現実。

 クールジャパン戦略を国策として推し進め、世界を熱狂させるコンテンツ大国に住んでいる日本人の一人として、無念でなりません。

 自分が子供の頃にワクワクする夢を与えてもらった作品、そして、それを生み出した場所への“感謝報恩”は、人としての基本だと思います。

 「卓越した功績を顕彰し、その栄誉を称え、歴史的遺産を後世に伝えていく」そんな当たり前のことが普通に行われる世の中になることを願います。

 “ウルトラ作品と円谷プロ初代本社、撮影所への感謝報恩” 私の好きな言葉です――。




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