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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(9)CG

2008-07-13 21:35:54 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(9)CG

そんな六月の中旬、私は一人で商談で伊豆のホテルにいた。夕方からプレゼンを始めて、夕食を挟んで終わったのが零時近かった。明日の朝一番で商談があり、泊まる訳にはいかなかった。
そして伊東から亀石峠を抜けて帰ろうと夜中の霧の中を走らせていた。
霧が濃かった事もあり、行き交う車は少なかった。
そして亀石峠の蛇行した頂上付近に行くと、ボヤ~ット明かりが見えて近付くと車のライトが妙な方向を照らしていた。
一台の乗用車が林の中に突っ込んで大破していた。
私は車を降りて近付くと、車は松の木に正面から突っ込んでボンネットはめくり上がって白煙を上げていた。

前に回って見ると、ボンネットの上にはフロントガラスを突き破って男が二人、血まみれになっていた。良く観ると髪は丸刈り、スーツは派手でヤクザ風である事が分かった。恐る恐る脈をとると、既に亡くなっていた。
警察へ電話しようと戻ろうとすると、足元にジェラルミンのケースが転がっていた。そしてトランクが空いていた。
覗くと、中には同じジェラルミンケースが一つと黒いブリーフケースが入っていた。ジェラルミンケースを持ち上げるとかなり重かった。
そのとき、不意に中身に興味が涌いた。
私は急いで二つのケースを自分の車のトランクに入れるとブリーフケースを積んでUターンして走り去ってしまった。
胸は高鳴り、ドキドキしながら時折ルームミラーで後ろを見ながら走った。
しかし対向車も後続車もなく、宇佐見に出た。
俺は何て事をしてしまったのか、後悔しながらも元には戻れないと胸が騒いだ。
そして熱海に向かった。そこから熱函道路を走り、函南町に出た。そして沼津へ出ると沼図インターから東名高速に乗り、四時半過ぎには静岡に着いた。
私はどうしてあんな事をしてしまったのか、また心が騒いだ。
後ろめたさと罪悪感に胸は苦しい程に波打っていた。
二度三度と深呼吸して、私は間が指したんだと自分に言い聞かせた。そしてアパートに帰ると世が明けていた。
急いでジェラルミンケースを下ろし、物置の鍵を開けて中に入れると部屋に入った。
「お帰りなさい、遅くて心配しちゃった」。と美保が抱きついた。
「ただいま、おきていたの?・・・」」抱きしめてキスして抱き上げた。
ベッドを見ると乱れがなく、美保は寝ないで待っていたようだった。でもその顔はうたた寝していた顔だった。
私は美保を抱き締めるとそっと口付けを交わしてまた抱き上げた。
「ごめん、霧が凄くてね、熱海を回って帰って来たから遅くなっちゃった。美保の好きな干物買ってきたからね。さあ、寝ようか」。
「うん、有り難う。凄く心配だったんだからね」。
「ごめんごめん、携帯バッテリー切れだし、公衆電は無いし、本当にごめん」
瞳が涙で滲んでいた。そんな美保を抱き締め、美保を脱がし、抱き上げてシャワーを浴びてベッドに入った。
しかし、あの血だらけで死んでいた姿が目に浮かんで中々寝付けなかった。
すると、ごそごそと美保は動いて全裸になると抱き着いてきた。
柔らかな乳房が胸に密着し、腰に股を擦り寄せて柔らかなヘアーが言い知れぬ快感を感じて欲望を駆り立てた。

「わたし京平さんの赤ちゃんを生みたい。私をお嫁さんにして」。
「うん、改めて言うよ。美保、私と結婚してくれ」。
「うん、嬉しいです。私良い奥さんになるから。京平さん」。
美保は私の胸に顔を沈めると涙を流していた。そっと美保を横に寝かせ、美保は私の腕を枕にそのまま眠ってしまった。
翌朝、急に目が覚めた。美保は台所で朝食の支度をしていた。起き上がるとパンツを穿いていなかった。
「そうか、あのまま寝てしまったのか」すると、横にトランクスとシャツが揃えて置いてあった。
トランクスとシャツを着てテーブルの上の新聞を取った。
「お早よう京平さん。アジの干物焼いているからね、すぐに食事出来るから」。
「うん、良い匂いだ。やっぱり日本人だな」。
「うん、ねえ夕べ遅く亀石峠で事故があったんだって。テレビのニュースでやっていたよ。二人即死で一人は意識不明の重体ですって、京平さん通らなくてよかったね」。
私はその話に身体が震えた、もう一人いたのか。もしかしたら見られていたかもしれない。もとバレたら!
「どうしたの?・・・寝不足で顔色悪いよ、大丈夫」?
NO-9


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