恋する気持ちは
ねぇ
何ものかに
ふりかけられた
魔法ね
乙女の頃から
いい歳した 分別ついたであろう
つい先頃までも
いつ魔法が消えるの
と、願った頃も
いつ魔法が消えてしまうの
と、怖れた頃も
それは
私のものであっても
私のものではない
恋する気持ちは
ねぇ
魔法に操られた
自由の利かない
私 だったの
恋する気持ちは
ねぇ
何ものかに
ふりかけられた
魔法ね
乙女の頃から
いい歳した 分別ついたであろう
つい先頃までも
いつ魔法が消えるの
と、願った頃も
いつ魔法が消えてしまうの
と、怖れた頃も
それは
私のものであっても
私のものではない
恋する気持ちは
ねぇ
魔法に操られた
自由の利かない
私 だったの
虫眼鏡で見る きみは
私の知っているきみと
寸分たがわず
きちんと歳を重ねては
いるけれど。
右の口角をちょっとあげて
笑う顔なんぞ
そのままで
その笑顔が
キムタクそっくりと
その昔
友に言ってみたら
全否定されちゃったけど。
虫眼鏡で見る
きみの隣のその人よ
ねぇ
この笑顔はやっぱり
キムタクそっくりよね
ほら
今度は賛同の声が
聞こえるわ。
***
九州のおれんじ鉄道の
“おれんじ食堂”
という観光列車に乗ってきました
東シナ海を見るのは 初めて
すてきな体験をしてきました
そのとき
願って 托して そして
信じて
きみの しあわせを
わたしではない
別の誰かの
手に。
*
年賀状を 交換するたびに
おのおのの それぞれの だけど べつべつの
しあわせを 確認しあう
それは しあわせと 言う言葉に
置き換えられるのでしょう
ね。
迷うことなど
なかったのに、ね。
と
前置きしてみる
それほどのことでも
なかったのに、ね。
と
いいわけしてみる
でも
それは たぶん 確かに
歩まなけれなならない
道のひとつで
知らずにはいられない
未知のひとつで
きみには 見えている
泣き言なんで
言わなくても
涙声なんて
出さなくても
きみには 見えている
たとえ
それが
季節の挨拶の
ひとつだって
たった
一行だって
何の変哲もない
唐突な便りの
ほんとうに書きたい
その 本文を
月日を無駄には
使っていなかったと
この幾年を振り返れば
そう思うだろう
後退ではなく
停滞でもなく
でも
前進かと問われれば
素直に肯定は
できなくとも
大きな石と
小さな石とが
小さな音
静かに動き出すような
そんな
手応えの
幾年を