【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会副会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

火神主宰 俳句大学学長 Haïku Column代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜 季語で一句 44 〜2023年『くまがわ春秋』7月号(第88号)

2023年07月07日 13時11分18秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜 季語で一句 44 〜
 
◆2023年『くまがわ春秋』7月号(第88号)が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
・info@hitoyoshi.co.jp 
 ☎ 0966-23-3759
 
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R5.7月号)
雨蛙(あまがえる《あまがへる》)     「夏-動物」
大工原一彦
雨蛙付きの借家を内覧す
【永田満徳評】
「蛙」は昔から親近感が持てる生き物。「借家」を見ていたら、雨蛙の鳴き声が聞こえたのである。「雨蛙付き」だと表現したのがおもしろい市街地にある、まだ自然が残る「借家」の佇まいがよく描かれている。
【季語の説明】
「雨蛙」は体長4センチメートルほど。体は面が緑色,下面は白色。目の後ろに黒線がある。葉の上では緑色であるが、木の幹や地上に移ると茶色になる。雄は喉に声囊があり,夕立の降る前に高い声で、キャクキャクと鳴く。木の葉や草の上に棲む。四肢の指に吸盤があって吸い付き、枝の葉の上にとまることができる。
蟷螂生る(とうろううまる《たうらううまる》)  「夏-植物」
大工原一彦
危険物所持にはならぬ子かまきり
【永田満徳評】
生まれたばかりの「子蟷螂」は成虫とそっくりの仕草をする。子蟷螂の前脚(斧)を「危険物所持」と思ったのである。生まれたての子蟷螂であるので、大目に見てほしいという気持が込められている点がいい。
【季語の説明】
「蟷螂」の卵は泡のような、麩菓子のような見た目。卵鞘と言い、保温効果があり、卵を寒さから守っている。卵鞘から100~300の子蟷螂は薄い皮を被った状態で生まれ、卵から出て宙づりになったまま、薄皮から脱皮する。成虫になるのは2、3個体だという。生まれてすぐに前脚(斧)をかざす仕草は愛嬌がある。
青梅(あおうめ《あをうめ》)   「夏-植物」
中野千秋
青梅や悩みて無駄にせし若さ
【永田満徳評】 
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」のように、若さゆえ、「悩みて無駄にせし」と思うことがある。しかし、「青梅」と取合せることで、「悩み」も年を経るに従って「無駄」ではなかったのだと思うところがいい。
【季語の説明】
「青梅」は 熟さない硬くて青い梅の実。熟しても甘くならず、強い酸味が特徴。梅酒や梅干しにされる事が多く、古くから親しまれてきた果物。梅の実は花後膨らみ始め、6月の初めに収穫が行われる。「梅雨」は梅の実の収穫期に降る雨ということによる。黄色く熟した実を「実梅」と呼ぶ。「梅」は花を指し、春の季語。
コメント
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