【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会副会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

火神主宰 俳句大学学長 Haïku Column代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜季語で一句 ⑱〜

2021年05月15日 10時13分01秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

俳句大学投句欄よりお知らせ!

 

〜季語で一句 ⑱〜

 

◆『くまがわ春秋』5月号が発行されました。

◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。

◆お求めは下記までご連絡下さい。

 (info@hitoyoshi.co.jp ☎0966-23-3759)

 

「くまがわ春秋」

【季語で一句】(R3・5月号)

永田満徳:選評・野島正則:季語説明

 

霾(つちふる)「春-天文」

 

藤野富士雄

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自らの撒きし罪ほど黄沙降る

【永田満徳評】

「黄砂」が発生すると、日射量が減り、空が混濁し、あちらこちらがじゃりじゃりとして、まことに鬱陶しい。掲句は、その「黄砂」を「罪」と感じて、自らのことと考えているところに発想のおもしろさがある。                 

【季語の説明】

「黄砂」はアジア内陸部のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠などの乾燥地帯の砂塵が強風で巻き上げられ飛来する。空が黄色く霞んで見えることから、黄砂現象ともいう。春に雪解けが進み、低気圧が発生すると、砂が舞い上がった黄砂が偏西風に乗って日本付近にやってくる。日本で黄砂の観測が多いのは4月である。

 

 

汐干狩(しおひがり《しほひがり》)「春-生活」

             

飯沼 鼎一

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妻の尻ひと目で分かり汐干狩

【永田満徳評】

「潮干狩」は目の高さに貝を掘る人の尻がある。「尻ばかり谷津の干潟や潮干狩 栄太郎」もいいが、掲句の方が「尻」に焦点が当たり、「妻の」という措辞に、妻への親しみとともに俳味が感じられて、いい。

【季語の説明】

「汐干狩」は干潮時の潟で蛤・浅蜊などの貝をとって遊ぶこと。旧暦の三月三日のころの大潮は潮の干満の差が大きく、干潟が大きくなるので潮干狩りに適している。旧暦3月初めの巳の日に、海辺でみそぎをする習慣に始まったという。近年は、日は固定せず、単なる個人の遊びで、春の風物詩となっている。

 

(ふじ《ふぢ》)「春-植物」

 

藤野富士雄

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揺れる影さへ匂ひたる藤の花 

【永田満徳評】

「藤」は華やかさから、古来親しまれてきた。藤房が垂れている、懸かり藤はその多数の花と花の間の「影」までも巻き込み、「匂ふ」と言っても大袈裟ではなく、掲句は豪奢な藤の様をうまく表現している。

 【季語の説明】

「藤」はマメ科の蔓性の落葉低木。山野に自生し、つるは右巻き。晩春の頃、紫色の蝶形の花が総状に垂れ下がって咲くことから藤房ともいう。懸かり藤は、蔓を木から木へ掛けて咲き、滝のようである。風に揺られて、芳香がある姿は優雅である。藤独特の優しい色味があり、藤の花言葉は「優しさ」である。

 

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