何年ぶりかなと思いながら、雨の降る日、倉敷市の大原美術館を訪ねた。モネ、ゴーギャン、ピカソ、藤田らの作品を見つめながら、一つの作品に足が止まった。「陽の死んだ日」(熊谷守一)。「ああ、ここにあったのか」と驚かされた。日曜美術館(NHK)で見て、記憶の奥にとどまっていた。
死んだ息子の顔を描く。怒り、苦しみ、悲しみ。盛り上がった絵具と絵筆が狂う。まるで昨日描いたよう。タイトルには「昭和3年2月28日」とある。これ以上の悲しみはない、と訴えてくる。気になっていた絵画に出会えた幸運に驚きつつ、あまり見たくはなかったなとも思う。
この日、売店で買った絵葉書は、アンリ・ル・シダネルの「夕暮れの小卓」。作家も作品も知らなかったけれど、運河と家と部屋の明かりと、橋の上の小卓がとてもいい感じだ。ずっと座っていたいなと思う。
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