青梅市の吉野梅郷に咲く「鎌倉の梅」。秩父と鎌倉を結ぶ旧鎌倉街道沿いにあり、見事な枝ぶりで春の白い花だけでなく夏の梅、秋の紅葉、冬の雪景色と人々の目を楽しませてきた。樹齢400年と推定されているが、いつのころからか「鎌倉の梅」と呼ばれるようになったという。
「鎌倉の梅」は、花が咲き終わったら4月には伐採される。プラムポックスウイルスに感染されているためだ。梅郷には約2万本の梅の木があったが、もうその半分の1万本は伐採された。東西4キロに及ぶ梅郷の里は、昨年までこの季節にはすべて梅の花と香りの中に埋もれていた。いまは梅林跡の空き地が目立つ。
近くには青梅市梅の公園があり、感染樹木が幸い少なかったため、今年も観梅客でにぎわっている。いまがちょうど見ごろだ。しかし公園の梅と里の梅が一体となった、あの梅郷はもうそこにはない。「ああ、梅郷」とため息をつく。
