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太田裕美について少し真面目に語ってみようか

35年の時が過ぎ、太田裕美についてあらためてもう一度考えてみようと思っています。

茶いろの鞄

2009年12月07日 | アルバム「手作りの画集」
「茶いろの鞄」はシングル「赤いハイヒール」のB面として1976年6月1日に発表されている。アルバムなら「手作りの画集」(1976年6月21日)の最後に収録されている曲だ。

「茶いろの鞄」の素材は「青春のしおり」と似ていて、たぶん高校時代を振り返るような話になっている。ただ、「青春のしおり」がCSNYとかウッドストックとか登場することで、「生き方」みたいなものが問われた時代が背景になっているのに対して、「茶いろの鞄」では「のばした髪」や「煙草かくして代返させてサボった」りしているが、そこまでの背景はなく、まあ、いわゆる不良の話である。「人間らしく生きたいんだ」とか歌詞に登場してくる「あいつ」は言っているようだが、思春期のそんなころはそんな台詞のひとつも吐いてみたくなるものである。

全共闘運動が活発だった当時、高校全共闘というものがあって、都内のいくつかの高校はかなり激しかったようだが、もちろん私はそれを知らない。この高校全共闘で活動した著名人として、坂本龍一(1952年1月17日生)や四方田犬彦(1953年生)、矢作俊彦(1950年生)らの名前をみかけることができる。松本隆(1949年7月16日生)よりもあとの世代のようにも思えるが、「青春のしおり」にそういった背景が実際あったかどうかはわからない。

太田裕美公式オフィシャルサイトの中で、「青春のしおり」のなかでCSN&Yを登場させたことについて尋ねられ、松本隆本人はCSN&Yでは「変わりはしない」(まあ影響を受けなかった程度の意味か)とし、影響を受けたのはビートルズであるとしたあとで、「ちゃんとユーザーを考えてるよね、当時の」と答えている。「ユーザー」という言葉に私は違和感を感じるが、それはともかく、「青春のしおり」でCSNYを登場させたように、「茶いろの鞄」ではユーザーにあわせて高校の管理システムみたいなものがターゲットになっているようだ。

作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:萩田光雄

路面電車でガタゴト走り
橋を渡れば校庭がある
のばした髪に帽子をのせた
あいつの影がねえ見えるようだわ
人は誰でも振り返るのよ
机の奥の茶色の鞄
埃をそっと指でぬぐうと
よみがえるのよ 懐しい日々

学生服に煙草かくして
代返させてサボったあいつ
人間らしく生きたいんだと
私にだけは ねえやさしかったわ
もう帰らない遠い日なのに
あの日のままね茶色の鞄
大人になって変わる私を
恥ずかしいよな気持にさせる

(略)

あらためて「茶いろの鞄」の歌詞をながめていて、ふと荒井由美の「卒業写真」を思い出した。曲調も歌詞の内容もまったく違うのだが、なんとなく関係あるような気がしている。

作詞・作曲:荒井由美

悲しいことがあると 開く革の表紙
卒業写真のあの人はやさしい目をしてる
町でみかけた時何も言えなかった
卒業写真の面影がそのままだったから
人ごみに流されて 変わってゆく私を
あなたはときどき 遠くで叱って

(略)

「青い傘」に「かわい」さんが「この曲の詩に対抗して松本隆氏は『九月の雨』を書いたのでしょうか?」と問いかけてきていただいた。私としてはまったく思いがけない問いだったが、それ以降、荒井由美と松本隆の歌詞の関係がみょうに気になっている。もちろんこれはどちらかがパクったというような話ではなく、できあがった曲はまったく似通っておらず、相似点を探すほうのがむずかしいのだが、テーマみたいなものがなんか似ているような気がする。とくに松本隆は荒井由美の世界をかなり意識していたのではないかと思えてならない。もっとも、あの当時、荒井由美の作品世界を無視するほうがむずかしい状況だったのだとも思う。

荒井由美の「卒業写真」は、1975年2月5日にHiFi-Setのシングル盤として発表され、1975年6月20日にアルバム「COBALT HOUR」で荒井由美がセルフカバーしている。WikiPediaによるとその後もカバーするミュージシャンが数多く、2000年以降で11人もいる。「卒業写真」に登場する「あなた」は同性だったいうことを今日私ははじめて知った。



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