goo blog サービス終了のお知らせ 

太田裕美について少し真面目に語ってみようか

35年の時が過ぎ、太田裕美についてあらためてもう一度考えてみようと思っています。

仮・こけてぃっしゅ

2009年12月09日 | アルバム「こけてぃっしゅ」
さて「こけてぃっしゅ」である。どうも私にとってこの「こけてぃっしゅ」というアルバムが鬼門のようなのである。このアルバムさえなければ、「背中あわせのランデブー」とか、「エレガンス」とか、いい悪い好き嫌いはさておき、なんとかついてゆけただろうし、同じ夏の感じでも「Feelin' Summer」とかまでくれば「いい感じ」に思えるので、まあその後もなんとかなったのだが、このアルバム一発で「もういいや」状態になってしまったのである。

「カジュアル」だの、「きれいなおねえさま」だの適当に名づけているが、じつのところそんなパブリックイメージはその当時もそれほど重要でなく、この「こけてぃっしゅ」というアルバムの音楽がピンと来なかったのだ。ましていまや50過ぎのおじさんである。アルバムジャケット見たって「きれいなネーちゃんじゃん」程度のことしか思わない。いま聴いてどうかなのだが、やっぱりピンと来ない。困った.....

なぜ困るかというと、この「こけてぃっしゅ」を高く評価する人が多いからである。松本隆もインタビューで「いい!」と言っている。まあこのさい松本隆がどう言おうと知ったことではないが、困るのは太田裕美本人もそれに同調するようなことを言っているらしい....ま、このさい本人もなにを言おうと横に置いておくかぁ(笑)

問題なのはやはり多くのファンである。中には松本隆や太田裕美が気にっているというだけで盲目的に従うファンもいるのだろうが、圧倒的大多数のファンは、私なぞより耳が肥え、音楽的教養も豊富な方たちである。太田裕美のファンというほどでもないという人も多いだろう。そのみなさんが評価しているのである。中には「最高傑作」とまで評価する人もいる。弱った......

これはきっと私の耳か、脳かがおかしいに違いない。そう思って繰り返し繰り返し聴くことにした。私はいま音楽を聴きながら仕事することができる。たしかに耳障りな音楽というわけではない。まあ快適な曲が多い。多いのだが、右から左へすり抜けて行く。実際には両耳で聴いているのだから、耳から入ってどこか亜空間へ消えていってしまう。一片の言葉も、ひとひらの旋律も残らない。ますます弱った......

やっぱこれは自己暗示をかける以外ない、と「『こけてぃっしゅ』はすばらしい」と10回唱えてから聴いてみた。う~ん。正座して聴いてみるか、そうだスピーカーで聴いているからいけないのだ、と思い携帯機器に録音して街を歩きながら聴いてみた。う~ん。水ごりでもするか.....

「だいたい邦楽は洋楽に近づくと、それなら洋楽聴いたほうがよくないかとなって、つまらくなるんだよな。歌謡曲とかニューミュージックでも邦楽でしか手に入らないから存在価値があるんだよな」というへ理屈も考えてみるが、このアルバムに近い洋楽が思い浮かばない。なんかこういうはっきりしない音楽を私は嫌いなのかもしれない。それでは高評価しているみなさまに申し訳ないので、しばらくは一日に一回聴くことにしよう。

とりあえずここで止まっていると先に進まなくなるので、またいつか「『こけてぃっしゅ』はすばらしい」と思える日がきたら、とりあげることにしよう。なんか四国巡礼のような感じになってきた。

続・九月の雨

2009年11月24日 | アルバム「こけてぃっしゅ」
さて「九月の雨」に登場する「公園通り」とはいったいどこだろうか。Googleあたりで検索してみると日本中に公園通りがある。公園があれば、それに接した道路をみんな公園通りと呼んでいるようだ。

たしか横浜の山下公園の前の通りも公園通りだったはずだがと思い、調べてみると山下公園通りと呼ぶことがわかった。たしかにあそこの通りなら公園の中の椅子が見える。しかし、1977年ころあの公園はいまとはまるで違ったはずで、いまある低い生垣のようなものでなく、塀に近いものがあったような記憶がある。違ったかな....塀があっては公園の中の椅子は見えない。そもそもあのあたりは役所関連の建物が多く、どうも会社の事務所が多いようには思えない。それとも主人公の女性は、ザ・ホテルヨコハマにでも泊まっていたのか?
(ザ・ホテルヨコハマは、その後ザ・ヨコハマノボテルに変わり、さらにホテルモントレ に変わったらしい)

日本一有名な公園通りと言えば、渋谷の公園通りか.....あのへんならたしかに職場は多いはず。1977年当時にタクシーをためらいなく利用できるとなると、学生とは思えない。学生ならよほどあまやかされて育てられた学生で、太田裕美作品の登場人物にはふさわしくない。たぶん仕事をしていて、自分で自由に使えるお金がある女性だろう。1977年当時の渋谷は繁華街ではあったが、「若者の街」ではなかったはずで、このころ「若者の街」と言えばやはり新宿だったはず。調べてみたら、パルコPART1が1973年、同PART2が1975年、西武劇場(現PARCO劇場)が1973年と西武系の建物が相次いで建てられていた。東急系は東急ハンズが1978年に建てられ、その後相次ぐようなので、新宿から渋谷へと移りゆく途中だったようだ。

あれこれ調べていたら、場所は渋谷で、女性はデパートガールである(笑)とするブログにぶちあたった。いきおいのある論評でおもしろかったが、やはり歌詞だけの情報だけでどこまでたどり着けるかが大切なので、そこまで私には断言できない。

ま、結局舞台がどこなのかわからなかったが、かなり歌謡曲よりのこの曲では太田裕美のボーカルを追いかけるように、かならずチャラチャラチャラーみたいな演奏が入る。めずらしく編曲も筒美京平が手がけていて、この編曲が夜の街を行く車の疾走感みたいなものを感じさせる。それとも車よりも速く走って行きたい彼女の不安感を表現しているのだろうか。



九月の雨

2009年11月24日 | アルバム「こけてぃっしゅ」
「九月の雨」の歌詞をあらためてながめてみた。これは「たんぽぽ」と関係あるのかなぁと思った。「たんぽぽ」では、あなたの声が聞きたくて電話をかけたら話し中だった、だれと話し中なのだろうかと考え始めて不安になってゆく....というような個所がある。「九月の雨」では、さすがに話し中くらいで不安にはならないが、電話から漏れて聞こえてきた女の存在におびえている。ほかにも「たんぽぽ」では公園を見て目隠しをされたことを思い出しているが、「九月の雨」ではたぶん公園にある椅子を見て、二人でその椅子に座ったことを思い出している。

う~ん。関係があるようなないような....ま、あってもなくても、「たんぽぽ」と「九月の雨」では決定的に大きな違いがある。「たんぽぽ」では不安に襲われながらもただ「どうぞ あなたのはずむ声で涙けして下さい」と乞い、「そんな小さな花のようにそばにおいて下さい」と願うだけだったのに対して、「九月の雨」では雨の中タクシーをとめ、彼の家へと向かう。

荒井由美作品の「青い傘」をのぞけば、松本隆作品に登場するほとんどの女性はいつも受身で、男側からの行動に対してリアクションをすることはあっても、自分のほうから行動することがなかった。せいぜい別れの電話をかけてみるくらいだった(青いサングラス)。それが「九月の雨」ではみずからの愛のため行動を起こしている。アルバム6枚目にして初めて行動する女性が登場したのだ。パチパチ(笑)

シングル「たんぽぽ」が発売されたのが1975年4月21日(太田裕美20歳)で、シングル「九月の雨」が発売されたのが1977年9月1日(同22歳)。その間、2年と4カ月ほど。現時点の2年半ほど前というとWindows Vistaが発売されたころで、年をとって月日がたつのが早くなったせいか、つい最近のように思える。太田裕美をWindowsにたとえるのもなんだが、Vistaが発売されたころ「たんぽぽ」を歌っていた少女が、いまでは「九月の雨」を歌っている。裕美ちゃんも大人になったわけだ。

と思ったが、シングル発売直前に「夜のヒットスタジオ」で「九月の雨」を歌う太田裕美の姿をYouTubeで見ることができた。たぶん1977年8月29日放送分で、司会の井上順と「歌いすぎでちょっと傷めた」(太田)、「ポリープができた」(井上)、「ポリープはできなかった。できる寸前に治った」(太田)というやりとりをしている。その話し方がやはりまだ幼いというか若い。人間も50歳を過ぎると、22歳も26歳もたいして変わって見えないが、この時期の太田裕美に「九月の雨」の世界はちょっと荷が重いんでねぇの? と素朴な感想が出る。

とにかく、だれかが(たぶん松本隆が)急ハンドルを切った、というよりアクセルをグッと踏み込んだようだ。かつて私はそれで振り落とされてしまい、「いいやいいや」と引きこもりしてしまったが、今度は振り落とされないようついていってみよう。「九月の雨」はもう一度とりあげたい。

作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平

車のワイパー透かして見てた
都会にうず巻くイリュミネーション
くちびる噛みしめタクシーの中で
あなたの住所をポツリと告げた

September rain 九月の雨は冷たくて
September rain 想い出にさえ沁みている

愛はこんなに辛いものなら
私ひとりで生きていけない
September rain 九月の雨は冷たくて

ガラスを飛び去る公園通り
あなたと座った椅子も濡れてる
さっきの電話であなたの肩の
近くで笑った女(ひと)は誰なの?

September rain 九月の雨の静けさが
September rain 髪のしずくをふるわせる

愛がこんなに悲しいのなら
あなたの腕にたどりつけない
September rain 九月の雨の静けさが