「Dear My Hero」
(第一回)
長いようで短い――誰もがそういう中学生活。
私の周りでも皆そう言っていた。
「三年間なんて,あっと言う間に過ぎちゃうよね」
「そうそう,そんなもんだよな」
「うん。そうだね」
皆にはそう相槌を打っておいたが,私はそうは思っていなかった。――そう,今日という日を……卒業を迎えるまでは……。
「――卒業生退場」
その言葉にそれまで出てこなかった涙がせきを切ったように,流れ出した。
――私も,こんな風に,泣けたんだ
“私”を冷静に見つめている自分がいた……。
私は昔から,どことなく冷めた人間だった。
上辺だけで人付き合いをして勉強も運動も何をするにも一生懸命になんてなれなかった。
そんな生活をしていた私は,友達も思い出も作らないままに小学校生活を送り,当然一滴の涙も流すこともなく卒業式を終えた。
皆が涙を流している中で,一人浮いていた私。
それでも何の感慨も抱かなかった私。
――何でこうなんだろ……? そんな風に“私”を見つめる自分に気づいていた。だけど……
ドッチガホントノワタシ?
私の中で何かが変わり始めたのはきっと,中学生活がスタートしてから。
新しい学校。
新しい先生。
新しい教室。
新しいクラスメート。
変わらない私……。
数週間と経たないうちに,私はクラスから浮き始めていた。
初めのうちは話しかけてくる子もいたけれど,私の冷めた態度に今ではせいぜい挨拶程度。
でも一人だけ……たった一人だけ――
「おはよう,瀬戸さん。今日はどんな本読んでるの?」
そう言って,毎日話しかけてくる子がいた。
私が相手にしなくても,毎日毎日話しかけてきて,
「遼,いい加減止めとけよ。それよりこっちこいって」
「そうそう,放っておけばいいのよ」
周りから何を言われたって気にする素振りもなく,
「ああ。でも今,瀬戸さんと話してるからもう少し待ってくれ」
――私はそんな彼に何も言えなかった……。
彼は――長野君というのだけれど――いたって平凡な中学生だった。
勉強も運動も目立ってできるわけじゃなくて,これといってずば抜けた特技なんかがあるわけじゃなくて,クラスとかで中心にいるわけじゃなくて……。
でも彼は私と違って何にでも一生懸命だった。みんなからも好かれていた。
だから私は,そんな彼が毎日話しかけてくることが不思議でならなかった。――(続く)(2へ)
――ということで『短期連載小説』です。なんかこの記事のタイトルって,冷やし中華始めましたを思い出すなぁ。……それはいいとして,とりあえずこの長さで切ってみたのですが,どうでしょう? ちなみに下の記事の『連載シナリオ』過去三回分のまとめとほぼ同じ長さです。そこでも書いているんですが,やはりこれぐらいの長さがちょうどいいんでしょうかね? その辺りについてコメントいただきたいと思います(長いとか短いとかこれでいいとか)。それによって今後のシナリオの一回の公開の長さを決めたいと思いますので,よろしくお願いします。
この小説はこの長さで行くと,後2~3回続く予定です。よければお付き合い願います。それでは。
(第一回)
長いようで短い――誰もがそういう中学生活。
私の周りでも皆そう言っていた。
「三年間なんて,あっと言う間に過ぎちゃうよね」
「そうそう,そんなもんだよな」
「うん。そうだね」
皆にはそう相槌を打っておいたが,私はそうは思っていなかった。――そう,今日という日を……卒業を迎えるまでは……。
「――卒業生退場」
その言葉にそれまで出てこなかった涙がせきを切ったように,流れ出した。
――私も,こんな風に,泣けたんだ
“私”を冷静に見つめている自分がいた……。
私は昔から,どことなく冷めた人間だった。
上辺だけで人付き合いをして勉強も運動も何をするにも一生懸命になんてなれなかった。
そんな生活をしていた私は,友達も思い出も作らないままに小学校生活を送り,当然一滴の涙も流すこともなく卒業式を終えた。
皆が涙を流している中で,一人浮いていた私。
それでも何の感慨も抱かなかった私。
――何でこうなんだろ……? そんな風に“私”を見つめる自分に気づいていた。だけど……
ドッチガホントノワタシ?
私の中で何かが変わり始めたのはきっと,中学生活がスタートしてから。
新しい学校。
新しい先生。
新しい教室。
新しいクラスメート。
変わらない私……。
数週間と経たないうちに,私はクラスから浮き始めていた。
初めのうちは話しかけてくる子もいたけれど,私の冷めた態度に今ではせいぜい挨拶程度。
でも一人だけ……たった一人だけ――
「おはよう,瀬戸さん。今日はどんな本読んでるの?」
そう言って,毎日話しかけてくる子がいた。
私が相手にしなくても,毎日毎日話しかけてきて,
「遼,いい加減止めとけよ。それよりこっちこいって」
「そうそう,放っておけばいいのよ」
周りから何を言われたって気にする素振りもなく,
「ああ。でも今,瀬戸さんと話してるからもう少し待ってくれ」
――私はそんな彼に何も言えなかった……。
彼は――長野君というのだけれど――いたって平凡な中学生だった。
勉強も運動も目立ってできるわけじゃなくて,これといってずば抜けた特技なんかがあるわけじゃなくて,クラスとかで中心にいるわけじゃなくて……。
でも彼は私と違って何にでも一生懸命だった。みんなからも好かれていた。
だから私は,そんな彼が毎日話しかけてくることが不思議でならなかった。――(続く)(2へ)
――ということで『短期連載小説』です。なんかこの記事のタイトルって,冷やし中華始めましたを思い出すなぁ。……それはいいとして,とりあえずこの長さで切ってみたのですが,どうでしょう? ちなみに下の記事の『連載シナリオ』過去三回分のまとめとほぼ同じ長さです。そこでも書いているんですが,やはりこれぐらいの長さがちょうどいいんでしょうかね? その辺りについてコメントいただきたいと思います(長いとか短いとかこれでいいとか)。それによって今後のシナリオの一回の公開の長さを決めたいと思いますので,よろしくお願いします。
この小説はこの長さで行くと,後2~3回続く予定です。よければお付き合い願います。それでは。
読み足らず読み余らずざんす。
これからも楽しみにしてるざんす。