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P の本棚

自分が読んだ本や見た映画の記録として。
ストーリーの紹介や感想ではありません。
あしからず。。。(__)

死神の精度 伊坂幸太郎

2005年11月23日 | 伊坂幸太郎
「死は怖いか?」
そう聞かれたら、どう答えるだろうか?
選ばれたものが死ぬべきかそうでないかを調べる、それが死神の役割・・・。
しかし、千葉が生かしたのは、第1話の藤木一恵だけだった。あとは皆、あっけなく、人生を閉じていく。
伊坂ワールド独特のキャラクターとして出てくる、感情の起伏のない冷静な男。その男が出会う人間はみな、人生を生きながら、どこかで死を感じている。生と死は隣りあわせなのだ。物語に出てくる「もう死んでもいい」という台詞は、それほどに幸せであるということなのだ。

言葉尻だけで、その言葉の本当の意味を死神はどれだけ正しく、調査できているんだろうか・・・。

アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎

2005年11月15日 | 伊坂幸太郎
「一緒に本屋を襲わないか?」
あいかわらず、伊坂ワールドには、こんな突拍子もない台詞がよく似合う。
大学に入学して東京に上京、他愛のない生活をスタートさせた主人公・椎名は、アパートの隣人、河崎から本屋強盗を持ちかけられる。
「なぜ?」「何を盗むの?」
「アパートに住む外国人が辞書を欲しがってるんだ」「広辞苑さ」
最初は訝しがって相手にしなかった椎名も、訳の分からないうちに、河崎と共に書店に向かう…。
「そんな、あほな…」な展開が、物語が進むにつれて、だんだんとリズムを形作っていく。まるで、音楽に踊らされているように、物語を読み進めている自分に気付いた。
途中クロスしないはずの時間軸が、クロスする違和感を覚える。
「あれ、何かおかしい」
そして、真実が明らされる。突拍子もない台詞の後ろに隠れていた心の声と共に。



グラスホッパー

2005年06月22日 | 伊坂幸太郎
人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いな…
人は誰でも、死にたがっている…

何回も出てくるこの言葉。グラスホッパーは3人の殺し屋が、流れの中で人を殺しながら、何を求めているのかを追い続けた物語。出てくる登場人物が次々と死んでいき、やがて幽霊となって自分を殺した相手の元に現れる。そして、自分を殺した相手をなじる。
しかし殺し屋たちは自分が存在するために、人を殺し続ける。唯一生き残る押し屋は、死ぬためにではなく生き残るために、そして生かすために人を殺す。

なんとなくこの作品はほかの伊坂ワールドとは少し違う感じがする。

チルドレン

2005年05月25日 | 伊坂幸太郎
陣内と彼を取りまく人々の日常は、「あれ?」の連続である。冷静沈着なはずの永瀬君ですら、「面白いから…」と、かばんを抱える中年男を探りに行ってしまう。陣内の思い切りのいい生き方に憧れ、無意識のうちに影響を受けてしまうのだ。

この作品は、陣内くんの生き方に影響を受ける人々の物語。実際に家裁で働く人をモデルにしたようだが(最後のあとがきにお礼が載っています)、武藤君と陣内君のやり取りが実に面白い。めちゃくちゃなようで、計算し尽くされているようで、しかしこんなの偶然しかありえないという展開(笑)。ミステリーではない、ミステリーって感じ。
しかし、陣内のバンドのボーカルが明の親父って言う設定がでてくるとは…。たぶんおふくろさんも出てきて、みんなが鉢合わせ!かと思っていたのだが、見事に裏切られた。このサプライズも伊坂ワールドの魅力です。


陽気なギャングが地球を回す

2005年05月21日 | 伊坂幸太郎
「さて、みなさん。今日は記憶の話をしましょう!」

伊坂幸太郎作品「陽気なギャングが地球を回す」にでてくる銀行強盗は、客や従業員に向かって銃口を向けながら、突然、語り始める、とにかく愉快な4人組だ。
いつも冷静沈着で、人の嘘をすべて見破ってしまう公務員の成瀬、無邪気な辣腕すりの久野、その口から出る言葉は半分以上が嘘と妻にも言われてしまう喫茶店マスター響野、そして正確な体内時計と凄腕の女性ドラーバーでもある雪子。登場する誰もが、軽快なジョークを飛ばしながら、それぞれの能力を発揮して、楽しく銀行強盗を実行する。雪子の息子である慎一や、響野の喫茶店で働く妻の祥子といった脇役もなかなかいい味を出していて、あいかわらず、伊坂ワールドの人たちは楽しい人たちばかりだ!

ストーリーは、4人はいつものように予定通り、完璧な筋書きで銀行強盗に成功する。しかし雪子の運転する車で逃げる途中、せっかく苦労して手にした4000万円を、飛び出してきたRV車の別の銀行強盗の男たちに奪われてしまう…。しかし、その事故は偶然起こったものではなかった。巧妙に仕込まれた罠だったのだ。
久遠が犯人から掏り取った財布や雪子の息子慎一の子供同士のいざこざに巻き込まれた響野たちは、偶然にも犯人たちの影を踏むことになるのだった…。

重力ピエロ

2005年05月18日 | 伊坂幸太郎
「春が2階から落ちてきた」
そんな叙情的なセリフから始まる伊坂幸太郎の作品。二人の兄弟の名前は泉水と春。英語にすると両方ともが「スプリング」。ちょっと変わった性格の弟の春とその兄が、街の落書きと放火事件の関連性から犯人探しを進めていく中で、いろんな登場人物が現れる。
もともと春は泉水とは母親は同じだが、父親が違う。とはいっても連れ子での再婚とかではない。父は一見目立たないまじめな公務員だが、とても心の広い人。母は容姿端麗でモデルをしていたが、ひょんなことからその父親にほれ込んで押しかけ結婚をしてしまった。泉水がまだ幼い頃に、その母が泉水といっしょに家にいるときに、近所の金持ちの息子にレイプされてしまう。そして妊娠。犯人の子供を宿してしまったことを告白した母に父は「君がよければ、生んで育てよう」といった。それが春だ。そして2人は大人になり、母親は病気で泣くなり、とうとう父も転移したガンで余命幾ばくもない。
そんな設定の中物語は進んでいく。

井坂作品に触れてかじるのは、登場人物が実にチャーミングなところだ。一種独特な空気を持ったまさに井坂ワールド。もともとの設定がすごくひどい話な訳で、読んでいて重いものがあってもおかしくないのに、どこか淡々としている。それでいてみんな魅力的な人たちなのだ。だから読んでいてとても楽しい。「ラッシュライフ」「オーデュボンの祈り」もそうだったが、あっという間に読んでしまう。
この「重力ピエロ」には「ラッシュライフ」「オーデュボン…」を読んだ人がほくそえんだしまうキャラクターが2人出てくる。そんないたずら心も井坂ワールドの魅力なのかもしれない。

よんでごらん。おもしろいよ!

オーデュボンの祈り

2005年05月10日 | 伊坂幸太郎
伊坂幸太郎作品は、GW中に「ラッシュライフ」を読んだところだったのだが、今日日帰り東京出張の行き帰りの新幹線の中で、あっという間に読んでしまいました。ラッシュライフの時に頂いたTB等にもあった「オーデュボンの祈り」。コレはいい作品です。ちょっと感動。
ストーリーに出てくるそれぞれのキャラクターがとても立っていて、すぐにはまり込んでいけました。伊坂さんという人は、とても人が好きなんだなあ。この作家いいです。
今日帰りに新大阪の駅の本屋で、彼の作品を探しましたが、すでに読んでしまった2作品しかなかった。代わりに、亡国のイージスのジョンヒを描いた橋口さんの本見つけたのでそれを買いましたが…。明日仕事の合間に、ジュンク堂行けるかなあ。

さて、「オーデュボン…」ですが、コレは、ふとしたきっかけから(?)コンビニ強盗をしてしまった主人公・伊藤が知らず知らずに連れてこられた不思議な島の物語です。そこには150年にわたって外界から遮断されたままの暮らしがあって、とても変わった人たちが変わった価値観で暮らしている。これまで自分が暮らしてきた現実社会から逃避したかった伊藤にとっては、最初は違和感のあった島の暮らしも、なぜか楽しいものになってきて…。
しかし一方で、次々とあふれ出してくるたくさんの疑問。
「なぜ?」
言葉をあやつり世の中の出来事や未来の事まで知っている「かかし」に問いかけると、「かかし」の存在について、そこに暮らす人々について、また伊藤の過去についても語り始める。両親が死んだ後、自分を育てた祖母のこと、そして大人になって警察官になり、自分を逮捕した「城山」という残虐な男について…、そんな伊藤の回想シーンとともにストーリーは進んでいく。

「城山」の登場するシーンでは、人間としてはあまりにも薄汚く残虐な性格に反吐が出る気分だったが、その重い気分も一瞬で吹き飛ばしてくれるような、「桜」の明確なジャッジ。ある意味、この展開が、伊坂幸太郎という作家の「人」「命」「人生」に対する思いの現われではないだろうかと感じた。しかし、欠けたものについては、最後の最後まで、気づかなかった。惜しむらくは、「桜」という存在以外に、「音楽」を妨げてしまった背景が無かったこと。ここをもっと深められれば、いっそう感動は深いものになったのでは…と思う。

ラッシュライフ

2005年05月05日 | 伊坂幸太郎
伊坂幸太郎のラッシュライフを読んだ。本の最初にラッシュの英語が並んでいた。
1.lash(むち打つこと、激しく動かすなど
2.lush(豊富な、華麗な、酒、飲んだくれ)
3.rash(無分別な、軽率な、吹き出物)
4.rush(突進する、殺到する、ご機嫌取り)
そしてエッシャーの城の階段を兵士たちがぐるぐる回っている騙し絵。

この物語には、黒澤、豊田、河原崎、京子という4人の主役がいる。そして彼らを取り巻く佐々木や、老犬、塚本、青山というパートナーがいる。そしてそれぞれがそのパートナーに道を教えられたり、また導いたり、裏切られたり、殺してしまう者も…。
そんな彼らの人生は微妙に交わったり、微妙にすれ違ったり。そしてみんな特別な日にタワーに上っていく…。

この作品は、ミステリー?それとも純小説?そんな不思議な世界を醸し出している。彼の作品の「グラスホッパー」、「チルドレン」も読んでみたいなあ。もう読んだ人、いますか?