P の本棚

自分が読んだ本や見た映画の記録として。
ストーリーの紹介や感想ではありません。
あしからず。。。(__)

チルドレン

2005年05月25日 | 伊坂幸太郎
陣内と彼を取りまく人々の日常は、「あれ?」の連続である。冷静沈着なはずの永瀬君ですら、「面白いから…」と、かばんを抱える中年男を探りに行ってしまう。陣内の思い切りのいい生き方に憧れ、無意識のうちに影響を受けてしまうのだ。

この作品は、陣内くんの生き方に影響を受ける人々の物語。実際に家裁で働く人をモデルにしたようだが(最後のあとがきにお礼が載っています)、武藤君と陣内君のやり取りが実に面白い。めちゃくちゃなようで、計算し尽くされているようで、しかしこんなの偶然しかありえないという展開(笑)。ミステリーではない、ミステリーって感じ。
しかし、陣内のバンドのボーカルが明の親父って言う設定がでてくるとは…。たぶんおふくろさんも出てきて、みんなが鉢合わせ!かと思っていたのだが、見事に裏切られた。このサプライズも伊坂ワールドの魅力です。


キャットウーマン

2005年05月22日 | スクリーン
猫は自由に生きる動物の象徴のように言われる。

その猫の能力を持って生まれ変わった主人公の恋と戦いの物語です。話の流れは、どこかスパイダーマンを思い出させるストーリーです。あまりぱっとしない生活を送っていた主人公がひょんな事から大きな事件に巻き込まれる。それは自分が勤めていた化粧品会社の新製品の発売に関わるものだった。見てはいけないものを見てしまった主人公は、犯人に殺されてしまう。その彼女を生き返らせたのが、不思議な力を持つ
猫だった…。

陽気なギャングが地球を回す

2005年05月21日 | 伊坂幸太郎
「さて、みなさん。今日は記憶の話をしましょう!」

伊坂幸太郎作品「陽気なギャングが地球を回す」にでてくる銀行強盗は、客や従業員に向かって銃口を向けながら、突然、語り始める、とにかく愉快な4人組だ。
いつも冷静沈着で、人の嘘をすべて見破ってしまう公務員の成瀬、無邪気な辣腕すりの久野、その口から出る言葉は半分以上が嘘と妻にも言われてしまう喫茶店マスター響野、そして正確な体内時計と凄腕の女性ドラーバーでもある雪子。登場する誰もが、軽快なジョークを飛ばしながら、それぞれの能力を発揮して、楽しく銀行強盗を実行する。雪子の息子である慎一や、響野の喫茶店で働く妻の祥子といった脇役もなかなかいい味を出していて、あいかわらず、伊坂ワールドの人たちは楽しい人たちばかりだ!

ストーリーは、4人はいつものように予定通り、完璧な筋書きで銀行強盗に成功する。しかし雪子の運転する車で逃げる途中、せっかく苦労して手にした4000万円を、飛び出してきたRV車の別の銀行強盗の男たちに奪われてしまう…。しかし、その事故は偶然起こったものではなかった。巧妙に仕込まれた罠だったのだ。
久遠が犯人から掏り取った財布や雪子の息子慎一の子供同士のいざこざに巻き込まれた響野たちは、偶然にも犯人たちの影を踏むことになるのだった…。

ホテルビーナス

2005年05月21日 | スクリーン
最果ての、とある街。心に傷を持つ人たちが集まる…ホテルビーナス。
そこで働くチョナン(草なぎ剛)と、「ビーナスの背中」でくらす、心に傷を抱えた住人たちとの物語。

最初はスロースタートでこのペースになれなかったけど、じっくりと見れば、なかなか味わい深い作品でした。草薙君もいい味出してましたが、そのほかの出演者のみなさんも良かったです。
特に最後の方でガイが連れて行かれるときのサイの涙のシーンでは、思わず、涙が…。

「強いってどういうこと?」
ボウイが何度もくちずさむ言葉は、誰しも心の中で問いかけたことのあること。人はどうやったら強くなれるのか?強いとはどういうことなのか?人は強くなくてはいけないのか?
「誰もそばに来ないでほしい。でも誰もいなくならないでほしい…」そんな目をしたサイの心を開いたのは、強く生きようと自分を立ちあがらせることではなく、自分の心に正直に生きようとする飾らない気持ちだったように思う。

それは信じるということなのかもしれない。自分の愛する人を、そして自分自身を。

重力ピエロ

2005年05月18日 | 伊坂幸太郎
「春が2階から落ちてきた」
そんな叙情的なセリフから始まる伊坂幸太郎の作品。二人の兄弟の名前は泉水と春。英語にすると両方ともが「スプリング」。ちょっと変わった性格の弟の春とその兄が、街の落書きと放火事件の関連性から犯人探しを進めていく中で、いろんな登場人物が現れる。
もともと春は泉水とは母親は同じだが、父親が違う。とはいっても連れ子での再婚とかではない。父は一見目立たないまじめな公務員だが、とても心の広い人。母は容姿端麗でモデルをしていたが、ひょんなことからその父親にほれ込んで押しかけ結婚をしてしまった。泉水がまだ幼い頃に、その母が泉水といっしょに家にいるときに、近所の金持ちの息子にレイプされてしまう。そして妊娠。犯人の子供を宿してしまったことを告白した母に父は「君がよければ、生んで育てよう」といった。それが春だ。そして2人は大人になり、母親は病気で泣くなり、とうとう父も転移したガンで余命幾ばくもない。
そんな設定の中物語は進んでいく。

井坂作品に触れてかじるのは、登場人物が実にチャーミングなところだ。一種独特な空気を持ったまさに井坂ワールド。もともとの設定がすごくひどい話な訳で、読んでいて重いものがあってもおかしくないのに、どこか淡々としている。それでいてみんな魅力的な人たちなのだ。だから読んでいてとても楽しい。「ラッシュライフ」「オーデュボンの祈り」もそうだったが、あっという間に読んでしまう。
この「重力ピエロ」には「ラッシュライフ」「オーデュボン…」を読んだ人がほくそえんだしまうキャラクターが2人出てくる。そんないたずら心も井坂ワールドの魅力なのかもしれない。

よんでごらん。おもしろいよ!

猛スピードで母は

2005年05月15日 | BOOKS
長嶋有の芥川賞受賞作品。文庫本で、文学会新人賞を受賞した「サイドカーに犬」と2作品が収められています。
「猛スピードで母は」は、お母さんと2人暮らしの慎の話。母や祖父母、学校に一緒にいく同級生や、母の恋人として現れた男…。いろんな人とのやり取りの中で、自分をさらけ出せずにいる慎が、人(とどのサクラも)はそれぞれの人生を生きており、いつまでも今と一緒じゃないんだということを感じながら、成長していく様が描かれている。細かな描写から、感情を押し殺した登場人物の顔が浮かんでくる。言葉ではなく、その場面に一緒にいるような空気観から、慎の気持ちが伝わってきました。

「サイドカーに犬」。これは会社を辞めた父に怒って家を出た母と入れ替わりに、主人公の女の子の家にやってきた洋子さんとのふれあいを綴った話。堅くまじめな母と対照的に、おおらかで明るい洋子さんに主人公も読者もだんだんと惹かれていく。そんな彼女のふと見せた本音に、女性としての憧れを抱き始めたとき、突然帰ってきた母のビンタとともにストーリーは、突然の幕切れを迎える。

私は、「サイドカー…」のほうが面白かったかも…。

水平線の光の中、また逢えたら~橋口いくよ

2005年05月14日 | BOOKS
「亡国のイージス」でヨンファの妹であり、北朝鮮の工作員「ジョンヒ」の物語。ジョンヒは「亡国」では、自分が乗り込んだ旅客機を爆破し、イージス艦のヨンファにブツを届ける。その後、行と死闘を演じ、スクリューに巻き込まれ、海の藻屑となる運命…。
この「水平線…」では、ジョンヒが日本に潜入してから、日本人の女の子になりすましながら生活している様子を、ジョンヒに一目ぼれしてストーカーのように付きまとう純粋な青年、古屋研太との2人称でまとめた物語になっている。
「亡国」の中で、ヨンファと行の間で、より強い暗殺者としての自分を求めて、揺れ動くジョンヒは、完全冷徹な殺人マシーンだ。行のような元の生活から逃れるために工作員になった人間とは根本的に成り立ちが違う。そのジョンヒに対して対照的な能天気男、古屋研太をぶつけることで、その心の動きからジョンヒの人となりを引き出せるのかと期待させながらも、結局は中途半端な結果に…。期待していただけに、チョット物足りなかったかなあ。

オーデュボンの祈り

2005年05月10日 | 伊坂幸太郎
伊坂幸太郎作品は、GW中に「ラッシュライフ」を読んだところだったのだが、今日日帰り東京出張の行き帰りの新幹線の中で、あっという間に読んでしまいました。ラッシュライフの時に頂いたTB等にもあった「オーデュボンの祈り」。コレはいい作品です。ちょっと感動。
ストーリーに出てくるそれぞれのキャラクターがとても立っていて、すぐにはまり込んでいけました。伊坂さんという人は、とても人が好きなんだなあ。この作家いいです。
今日帰りに新大阪の駅の本屋で、彼の作品を探しましたが、すでに読んでしまった2作品しかなかった。代わりに、亡国のイージスのジョンヒを描いた橋口さんの本見つけたのでそれを買いましたが…。明日仕事の合間に、ジュンク堂行けるかなあ。

さて、「オーデュボン…」ですが、コレは、ふとしたきっかけから(?)コンビニ強盗をしてしまった主人公・伊藤が知らず知らずに連れてこられた不思議な島の物語です。そこには150年にわたって外界から遮断されたままの暮らしがあって、とても変わった人たちが変わった価値観で暮らしている。これまで自分が暮らしてきた現実社会から逃避したかった伊藤にとっては、最初は違和感のあった島の暮らしも、なぜか楽しいものになってきて…。
しかし一方で、次々とあふれ出してくるたくさんの疑問。
「なぜ?」
言葉をあやつり世の中の出来事や未来の事まで知っている「かかし」に問いかけると、「かかし」の存在について、そこに暮らす人々について、また伊藤の過去についても語り始める。両親が死んだ後、自分を育てた祖母のこと、そして大人になって警察官になり、自分を逮捕した「城山」という残虐な男について…、そんな伊藤の回想シーンとともにストーリーは進んでいく。

「城山」の登場するシーンでは、人間としてはあまりにも薄汚く残虐な性格に反吐が出る気分だったが、その重い気分も一瞬で吹き飛ばしてくれるような、「桜」の明確なジャッジ。ある意味、この展開が、伊坂幸太郎という作家の「人」「命」「人生」に対する思いの現われではないだろうかと感じた。しかし、欠けたものについては、最後の最後まで、気づかなかった。惜しむらくは、「桜」という存在以外に、「音楽」を妨げてしまった背景が無かったこと。ここをもっと深められれば、いっそう感動は深いものになったのでは…と思う。

川の深さは

2005年05月08日 | 福井晴敏
福井晴敏の「川の深さは」を読みました。「亡国…」や「トゥエルブ…」に続く原点がここにありました。トゥエルブに続く登場人物たちも最後に登場。重なり合う背景は一貫して、福井氏がメッセージを発していることの表れですね。
桃山や保の設定は、亡国の仙石と行の設定に通じるものがあって、福井氏の好きな人間関係というものも垣間見えました。

私は、話の中で何度も出てくる自分の前にある川の深さのイメージは、膝ぐらいのものでした(笑)。そんなに情に薄いつもりはないつもりなんですが、ある意味、仕事上では、情に薄い自分をあえて取り繕っている自分がいるような気もするけど。

しかし、そのときの心理状態によって川の深さは変わってくるのではないかなあ。私にとっては川の深さが浅いときの方が、自分自身は落ち着いた状態であるような気がする。目の前に深い川が横たわっているときというのは、精神的にも余裕がないことの表れ。しかし、どんな深い川でも渡らねばならない時、目をつむって足を踏み入れるのか、目をかっと見開いて入っていくのか…。
そんなとき冷静に自分の頭で、そして自分の心で、判断できるようになりたいものです。

アイ・ロボット

2005年05月08日 | スクリーン
ウィル・スミス主演の近未来アクション作品。映画館で見た予告編で、是非見たいと思いながらも、DVDで見ることになりました。
ウィルスミスが演じるスプーナー刑事は大のロボット嫌い。その手元に、ロボットを設計した博士の自殺後のメッセージが託される。彼の研究室を捜索していた時、隠れていた最新型のロボットが暴れだす。そのロボットは、ロボットの3原則である人の指示に従わず、自分の感情を持つロボットだった。最初は、サミーと名乗ったそのロボットが博士を殺したのではとにらんでいたが、サミーと触れ合ううちに、なにかもっと大きな流れを感じるようになる。そんなときスプーナーは突然、無数のロボットに襲われる…。博士が殺されたのはなぜか。誰が殺したのか?

期待通り、面白い作品でした。登場人物も絞られていて、シンプルで分かりやすい。それでいて、最後までどんでん返しの連続。ぜひお勧めです。

ラッシュライフ

2005年05月05日 | 伊坂幸太郎
伊坂幸太郎のラッシュライフを読んだ。本の最初にラッシュの英語が並んでいた。
1.lash(むち打つこと、激しく動かすなど
2.lush(豊富な、華麗な、酒、飲んだくれ)
3.rash(無分別な、軽率な、吹き出物)
4.rush(突進する、殺到する、ご機嫌取り)
そしてエッシャーの城の階段を兵士たちがぐるぐる回っている騙し絵。

この物語には、黒澤、豊田、河原崎、京子という4人の主役がいる。そして彼らを取り巻く佐々木や、老犬、塚本、青山というパートナーがいる。そしてそれぞれがそのパートナーに道を教えられたり、また導いたり、裏切られたり、殺してしまう者も…。
そんな彼らの人生は微妙に交わったり、微妙にすれ違ったり。そしてみんな特別な日にタワーに上っていく…。

この作品は、ミステリー?それとも純小説?そんな不思議な世界を醸し出している。彼の作品の「グラスホッパー」、「チルドレン」も読んでみたいなあ。もう読んだ人、いますか?

トウェルブ.Y.O

2005年05月01日 | 福井晴敏
亡国のイージスの福井さんのメジャーデビュー作品。この作品が、ローレライや亡国のイージスにつながっていくんだなあと分かる作品。根底に流れている世界観などは。亡国と同じ…。
この作品でも、このストーリーを裏で糸を引いている人間は誰なのかを考えさせられながら、ストーリーは進んでいくのだが、それが次々と裏切られていく…。

東京の渋谷の街中で、掲示版に貼られた自衛官募集のポスターの前で立ち止まる青年達の肩をたたくスカウト、地連の仕事をする平。彼ももともとは一級のヘリ運転手であったが、ある事故をきっかけに二度とヘリには乗れない体になってしまっていた…。そのかれが声をかけた少年、護は、自衛官になりたい自分に反対する姉を平に説得してくれと言う。「お姉さん、きれいか?」そんな質問をする平を伴い、護は自分達の宿泊先であるビジネスホテルに入っていく。そこで平が出会った女性とは…。