トリノオリンピックでも、日本スキージャンプ陣は、世界から大きく差を開けられた。まさに、科学と技術のぶつかり合い…。トリノのニュースが毎日テレビから流れる中で、ジャンプの世界を舞台に描かれた東野圭吾の「鳥人計画」を読んだ。
物語は、ある企業のスキー部のジャンプチームのエース楡井が起こす不慮の事故から幕を開ける。折りしもジャンプの世界では、フィンランドの鳥人「ニッカネン」が表彰台を独占していた時代。日本のニッカネンと呼ばれる楡井の死は、巧妙に仕組まれたものだった…。
この作品は、1989年に発表されている。そして、その9年後の長野オリンピックで日本ジャンプ陣は金メダルを獲得する。原田の2本目のジャンプを終えた時、日本中が感動の渦に巻き込まれた。しかし、その後ルールの改正に乗り遅れた日本は低迷を続けている。「一度手にした栄光は、取り戻さねばならない」まるでジャンプが日本の競技であるかのような錯覚に陥った日本は、今、日本のジャンパーたちにまた過酷なノルマを課している。
この物語のテーマは、スポーツから、だんだんと人間らしさが失われていくことに対する警笛だ。勝つために科学や技術を用いることで、どんどん人間の楽しむスポーツから遠ざかってしまったのではないか。たしかにそうかもしれない。