集英社文庫
2003年7月 第1刷
2007年3月 第7刷
解説・細谷正充
532頁
8世紀末
東北で、大自然と共生し自由に暮らす誇り高き人々、蝦夷
彼らを服従させるため侵攻してくる大和朝廷
東北蝦夷連合の長・アテルイの人生を軸に描かれた壮大な歴史小説です
当時の詳しい史実は詳しくわかっていない為、ほとんどが作者によって脚色された内容らしいのですが
まるで「大河ドラマ」のように楽しく読ませてもらいました
長引く戦いの中アテルイは何度も自問を繰り返します
蝦夷連合の指導層と一般の民の間に溝が生まれつつあるのではないか
昔の蝦夷村にはなかった身分格差、階層化が進んでいる事実
大和に対抗するために気づかぬうちに大和に酷似しつつある連合
いったい蝦夷と大和は何が違うのか
違うから争いが起きるのか
それとも違いなどないのに争っているに過ぎないのか
そもそも違うからといって争う必要があるのか
英雄としてだけでなく、ただ一人の女性に思いを寄せ続け強さも弱さも持ち合わせた一人の人間として描かれているアテルイがとても魅力的
大和朝廷軍の将、坂上田村麻呂との邂逅は出来すぎのように感じましたが、優れた者同士は理解し合える部分が多いということでしょう
余談ですが
この頃には渡来人が人口のかなりの割合を占めています
彼らが持ち込んだ文明や文化が今日の日本の礎となっているのに
日本は先の戦争で彼らの国を侵略しました
大和民族についての認識はおおいに改められるべきだと思います
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます