ハルキ文庫
2013年6月 第1刷発行
2017年5月 第15刷発行
314頁
みをつくし料理帖シリーズ 第八弾
残月 ―― かのひとの面影膳
彼岸まで ―― 慰め海苔巻
みくじは吉 ―― 麗し鼈甲珠
寒中の麦 ―― 心ゆるす葛湯
特別収録 ―― 秋麗の客
吉原の大火で又次を失った喪失感の中、新たな道を歩み始めるつる家の面々
芳と澪が江戸へ出てきてからずっと同じ長屋で暮らしてきた伊佐三とおりょう一家が伊佐三の親方の家に同居することになり「いつまでも同じでは居られない」寂しさと時の流れを実感する2人でした
ある日、医師の源斎の計らいで吉原再建まで仮住まいをしている家であさひ太夫=野江との再会が叶う澪
しかし、野江として澪と再会したいというあさひ太夫の手前、幼馴染としてではなく、ひとりの料理人として、今のあさひ太夫に欠けている「ものを美味しく食べる気力を養う」ため暫し時を共に過ごし語りあいます
ここの7頁余りはティッシュが手放せませんでした
様々な苦難を乗り越えてきたあさひ太夫を身請けする日のため、あれこれ考える澪
経営者としての片鱗もみえ、料理人としてだけでなく、ひとりの人間として、ずいぶんとしっかりしてきたと思いました
そして驚くことに芳に一柳の店主から自分のところに来て欲しいという申し出が!
再婚するということは亡き夫・嘉兵衛の遺言である天満吉兆の再興を諦めることになりますし、行方知れずになったひとり息子・佐兵衛のこともあり決心できないでいる芳の背中を押してくれたのは、またまたりうばあさんの言葉
「子の幸せと親の幸せを混同しないことです。いっぱしに成長したなら、子には自力で幸せになってもらいましょうよ。そして、親自身も幸せになることです。ひとの幸せってのは、銭のあるなし、身分のあるなしは関係ないんです。生きていて良かった、と自分で思えることが何より大事なんですよ」
第七弾「夏天の虹」で散々辛い思いをした澪に明るい希望がみられる第八弾
ほっとしました
子の幸せの件、だいぶ以前に若い二人から結婚相談を受けたことがあり、親の面倒をみる心配の前に、まず自分たちが幸せになろうと決心することが第一だろう、と話したことを思い出しました。彼らはすでに三児の親、それぞれ活躍中のようでなによりです。
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/b0545492cca79c7254ccc47374d60100
そうそう、佐兵衛は料理人の道には戻らないのかな~~~?
源斎先生と佐兵衛の先が気になります^^
相談を受けたというお二人、今は幸せに暮らしておられるのですね。人生の先輩としては一安心といったところでしょうか。