世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

2010年/平成22年 日本で働く外国人労働者の数

2011年07月04日 | 移民に関する統計・データ



2010年/平成22年度 外国人雇用状況の届出状況


「外国人雇用状況 (厚生労働省)」は、日本で労働に従事する外国人の総数をまとめたものだ。発表によれば、2010年10月末現在、その数は649,982人で前年度比で15.5%増。外国人労働者を雇用している事業所数は108,760か所で前年度比で14.1%増ということだ。労働者のうち、44%が中国出身、次いでブラジル(17.9%)フィリピン(9.5%)だ。

外国人労働者の統計というのは、外国人登録統計に比べ、その数集めが一筋縄ではいかないところがある。法務省の外国人統計からは断片的な情報しか引き出せない。ある外国籍の人の在留許可の資格(ヴィサ)が「国際業務」であるなら、就労していることが予想される。しかし在留資格が「日本人の配偶者」となっている外国籍の人は就労を実際にしているかはわからない(法律上就業に制限はない)。同じように、中南米から来日した日系人も、おそらく多くの人が就労しているであろうが、配偶者と同じように労働に直結する資格で入国していないため、その労働者数はわからない。家族単位で暮らす日系人も多いので、子供や主婦を含む場合も多く、日系人の総数=労働者とはならない。

まとめると、①外国人が「就労」を理由として来日しているパターンと②その「身分(配偶者、日系人など)」によって来日した上で就労するパターン、また③留学生が資格外活動でアルバイトをしているパターンなど、来日の資格上の「目的」が様々で、資格と就労が直接結びつかない部分が多い。よって、行政データ(外国人登録データ)からは外国人労働者の総数が把握できない。

だからと言って、日本で働く外国人の数がわかりません、となるとそれはそれで問題だ。厚生労働省は、この統計の空白を、雇用者からの届け出を義務付けることで埋めようとしている。平成19年から、外国人を雇用する事業所の届け出が義務化されたのだ。ただ、あくまで届け出であること、またこの取組を始めてまだ日が浅いことなどから、この数字の正確度については未知な部分が多い。外国人登録統計のように、行政の持つデータにもとづく統計ではなく、あくまで届け出ベースの数値なのだ。

数値を読むにあたり、気を付けなければいけないことがある。それは、外国人登録統計(法務省)と外国人労働者数(厚生労働省)、それぞれ対象とする外国人の定義が異なることだ。後者のほうがより限定的な外国人労働者の定義をしており、特別永住者や公用の在留資格を持つ外国人などは雇用の届出の対象にならない。よって、単純に約213万人いる登録外国人のうち、64万人が働いているとは厳密にはいえない。また、外国人登録統計が年度末現在(3月)の数を発表しているのに対して、外国人雇用状況は年度内10月現在の数値を公表しているので、タイムラグがある。

担当省庁も数値の出所も、対象外国人も発表時期も異なる二つの外国人に関する統計、上のような理由から数合わせをして比較検討することが難しい。それを承知で、並べて比べてみる。すると2010年度末(2011年3月)時点での外国人登録統計(法務省)」によれば、日本に居住登録する外国人は前年度比で約5万人(2.4%)の減少をみせた。しかし、同年度の労働者数では増加(8万7千人ほど)を見せていることがわかる。

2010年度末、なぜ外国人総人口は減って、労働者数は増えたのか? 3月末時点で外国人登録の数が減っていることは、おそらく3月の震災の影響であろう。労働者統計はすでにその前年の10月までに発表されているので震災の影響は来年の統計に反映されることになる。ただ、2010年10月時点において外国人労働者が増えている、という点が、現在の日本の経済状況から考えてもやや理解しにくい。2009年の金融危機によりブラジルやペルーに帰国する日系人(主に定住者など)の姿が報道されたのが記憶に新しい。そうなると、労働者の増加は、単なる数字のトリックかもしれないと考える。最近の法改正により外国人研修生も労働者としての権利を行使できるようになった。よって、すでに在留する研修生を労働者として届け出をする事業者が増えたということも考えられる。また、経済危機のあおりで、就業を始めた外国人が増えた可能性も十分ありうるし、掛け持ち就労をする外国人が増えれば、ダブルカウントなどが起きないものか、気になったりもする。あくまで憶測・推測なので、この点については詳細を知る方のコメントを頂ければ幸いだ。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。