世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

外務省が消した日本人

2008年05月17日 | 移民関連の本や映画
table>外務省が消した日本人―南米移民の半世紀
若槻 泰雄
毎日新聞社

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現在アジア各国の海外出稼ぎ斡旋業者と仕事をしている。アジアからの出稼ぎがこれだけ拡大したのはリクルーターと呼ばれる彼らの果たした役割が大きい。ただ、斡旋業者も海千山千。労働者から一切斡旋料をとらないような倫理観をもった業者もあれば、もう取れるだけとってしまおうというかなり悪徳業者までいろいろだ。

アジア各国は海外出稼ぎの促進に躍起で業者の取り締まりに関してはまた手薄い。政治家や官僚が直接・間接的にからんだ斡旋業者が多いことから取り締まりがされにくいという難点もある。斡旋料に関してはアジア各国上限をもうけているがこれがきちんと遵守されているケースはまれだ。通常こういった上限は1か月分の給与が目安になっているが、実情は航空運賃を含めると1年分くらいになっていることが多い。1年も働いてやっとコストが回収できる、これはまるでむかしの奉公人のような状態だ。足かせをつけて仕事をしているようなものだ。

「外務省が消した日本人」という本を読んだ。日本人の南米への移住政策についてするどい指摘をする本だが、これを読むとまるで現在のアジア各国の労働者送り出し政策をみているようだ。とにかく送り出すことが先行して、あとはあとで考えるという状態。労働者に対してきちんと情報提供をしたか、行き先の安全性は確認したか、渡航の過程で搾取はないか、そういうことはまったく労働者まかせ。出稼ぎ労働者や移民は二つの国家をまたいでおきる事象であり、送り出し国ばかりがやっきになってもあまりよい結果が期待できないし、受入国は大体にして送り出し国に比べて無関心な場合が多いのだが。

日本人の南米への移住政策に関しては現在訴訟などまで発展した。アジア労働者の中には業者や政府を相手取って訴訟を起こすケースもまだまだ少ないが増えてきており、フィリピンなど斡旋業者の責任範囲を多くとっている国では訴訟が起こしやすくなってきている。とかく弱い立場に置かれがちな労働者が適正に出稼ぎができるシステムの重要な一部をなしているといえる。




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