核燃料サイクル開発機構は、福井県知事の了解を受けて、高速増殖炉「もんじゅ」改造の準備工事を始めました。一九九五年十二月のナトリウム漏れ・火災事故以来、運転停止していたのを、二〇〇七年度中に再開しようというのです。無駄と危険を増殖させる愚挙です。
国民の批判を無視
改造は、事故の原因となった温度計の交換とナトリウム漏れや蒸気発生器破損への若干の対策などに限られます。これらの事故対策だけで安全が確保されるものではありません。
「もんじゅ」は、核燃料にプルトニウムを利用することや、冷却材にナトリウムを使うことから、既存の原発とは異なる危険性を持ちます。ナトリウムは空気や水と激しく反応するため、取り扱いが極めて難しいものです。九五年の事故では、その危険性の一端が現実になりました。
また、プルトニウムは、ウランよりもけた違いに強い放射能毒性をもち、核兵器にも転用できる危険な物質です。プルトニウムを取り出すための再処理も、強い放射能を持つ使用済み核燃料を溶かし出すことによる大きな危険をともないます。
それだけに、「もんじゅ」の危険性に対する国民の不安と開発への批判が大きく高まったのは当然です。「もんじゅ」再開反対署名は二十二万人にのぼりました。運転再開に向けた改造は、こうした批判をまったく無視するものです。
なにより政府の安全審査そのものが問われています。〇三年一月の名古屋高裁金沢支部判決は、「もんじゅ」の設置許可を無効としました。ナトリウム漏れ事故、蒸気発生器破損事故、炉心崩壊事故のそれぞれについて、審査に「重大な瑕疵(かし)」があるとし、審査の「全面的なやり直し」を求めました。改造についても、「審査の瑕疵」を「是正するに足るものではない」と断じています。
政府は、この判決を不服として上告しましたが、最高裁の審理はこれからです。そうしたなかで改造を強行し、運転再開への既成事実をつくろうというのは、許されるものではありません。
高速増殖炉は、発電しながらウランをプルトニウムに転換し、消費した以上のプルトニウムをつくるとされています。ウラン資源の利用効率が「一〇〇倍以上」(〇三年版「原子力白書」)になる「夢の原子炉」といわれました。しかし最近の原子力委員会の資料でも、プルトニウムが二倍に増殖するだけで四十六年かかることがわかっています。
にもかかわらず、「もんじゅ」には、これまでに八千億円以上の資金が投入されてきました。関連経費を含めれば、約一兆八千億円になります。今後は、改造費だけで百七十九億円、運転再開後の維持費に十年で約二千億円が必要です。研究開発の全体では一兆円規模となります。高速増殖炉開発を続けることは、さらなる税金の無駄遣いです。
改造・再開は断念を
世界を見ても、日本より先行して高速増殖炉開発に取り組んだアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどでは、ナトリウムの取り扱いを含めた技術的困難や経済性の問題から、開発をやめています。日本政府の立場は、世界の流れにも逆行しています。
「もんじゅ」の改造と運転再開はきっぱり断念すべきです。危険な核燃料サイクル政策を根本的に見直し、安全優先のエネルギー政策へと転換することこそ必要です。
2005年3月9日(水)「しんぶん赤旗」
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