二〇〇五年度の政府予算案が、自民・公明両党の賛成多数で衆院を通過し、参院に送られました。
予算案は所得税の定率減税の半減を盛り込んでいます。消費税の二ケタ化への大増税路線に踏み出す中身です。若者にはフリーター課税を強化し、高齢者の住民税の非課税措置を段階的に廃止します。
社会保障では、介護保険で利用者の負担を増やし、生活保護の母子加算を削減、障害者福祉に利用者負担を導入します。国立大学の授業料値上げなど、あらゆる分野で庶民に痛みを強いています。
まともに影響を考えず
雇用保険や年金の保険料値上げ、中小業者への消費税の課税強化など、すでに決まっているものを合わせると、〇五、〇六年度の国民負担増は合計で七兆円に及びます。
雇用者所得が毎年数兆円も減り続け、貯蓄の取り崩しで貯蓄ゼロの世帯が二割を超えて増えています。家計部門が資金不足に陥る前代未聞の事態も起きています。家計の窮迫が急速に進んでいるときに大増税に踏み出すのは、あまりにも無謀です。
低所得の高齢者に対する住民税の非課税措置の廃止や、住民税の配偶者特別控除の廃止などによって、住民税が非課税であった世帯も課税されるようになります。課税世帯になると国民健康保険料や介護保険料が連動して値上げされ、負担増は雪だるま式に膨らみます。
影響は自治体によって違います。例えば京都市では―。配偶者特別控除の廃止に伴い、新たに住民税課税となる夫婦二人世帯(所得百六十三万円)の税と社会保険料の負担は、十六万五千円から三十九万円に二十二万円も跳ね上がります。
衆院審議で明らかになったのは、小泉内閣が負担増の影響をまともに考慮していないということです。
七兆円もの負担増をかぶせたら、九兆円負担増を引き金に大不況に落ち込んだ八年前の二の舞いになるとの指摘に対して、小泉首相は「当時の状況と違う」「企業の業績は改善している。不良債権処理も進んでいる」と答弁しました。
八年前との最大の違いは大企業が過去最高益を上げていること、それにもかかわらず賃金の総額が減り続けていることです。大企業向けの法人税減税をやめるというのなら分かりますが、定率減税の半減・廃止で中低所得層の賃金をさらに目減りさせるというのでは筋が通りません。
雇用者所得について首相は、増えるような「状況になってもらいたいなあ」と答弁しています。願望をのべるだけで、根拠のある見通しを語ることができません。
大銀行の不良債権は数字の上では減りました。巨額の公的資金の注入を受け、中小企業を中心に借り手企業にしわ寄せした結果です。
竹中大臣の金融政策が、大銀行の利益第一主義をいっそうあおり立ててきました。大銀行の収益力は高まりましたが、貸し出しの減少には歯止めがかかっていません。
「この程度は」と竹中氏
定率減税の廃止について、竹中大臣は「この程度の負担増は甘受すべきだ」と言い放っています。
政府税制調査会でも、定率減税など「気軽にやめてしまえばいい」、「(廃止の)『どこが大変なんだ、おまえ』って言いたい」と複数の委員が「率直」にのべています。
小泉内閣のなかで、国民のくらしは羽根より軽く扱われているようです。国民、納税者の怒りの世論を、参院での審議に集めましょう。
2005年3月3日(木)「しんぶん赤旗」