知らず知らずのうちに「キャラ社会」にどっぷりつかっていないだろうか。
「キャラクターは現在の『見た目第一主義』の社会を最も端的に表す言葉」「キャラは自分で決めるのではなく、他人からの印象で決められるレッテルのようなものです」
かつて「デブキャラ」とみなされた評論家の岡田斗司夫さんが昨年、日本経済新聞で、117キロあった体重をわずか1年で50キロも落とした経験をもとにキャラ社会を語っていた。
見た目第一のキャラ社会の風潮を反映させてはならない制度が間もなく始まる。国民が司法に参加する裁判員裁判だ。国民から選ばれた裁判員が殺人や強盗致死傷などの重大事件で裁判官とともに有罪・無罪のみならず量刑も決める。当然、死刑を選択するケースもある。
大阪高裁の裁判長で退官した弁護士の石松竹雄さんは職業裁判官に惑わされてはいけない、とアドバイスする。
「裁判の迅速化の名目で裁判員が参加しない公判前整理手続きで争点が決まると職業裁判官は経験上、筋読みができる。予断につながる危険がある」というのだ。では、どうするか。
「弁当屋さんが天気予報を見て作る弁当の数を決めるように市民は社会生活の中で日々、真剣に判断している。これは刑事裁判の事実認定をしているようなもの。良心に従い自信をもって裁判にのぞめばいい」。40年の裁判官生活のうち30年以上も刑事裁判に携わった83歳の言葉は説得力がある。
裁判官キャラなどない。勝手にレッテルを張らないことが裁判員が法廷のお飾りにならない第一歩と心得たい。(論説室)
毎日新聞 2009年3月1日 大阪朝刊
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