わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

ああ微動だにせず=与良正男

2008-05-03 | Weblog

 「しかし、この結果によって今後の国会運営は微動だにしない。基本方針に変わりはない」

 最近、どこかで聞いたと思う人は多いだろう。だが、実はこれ、1987年3月、売上税が大争点となった参院岩手補選で自民党候補が大敗した翌日、時の中曽根康弘首相が語った言葉である。

 中曽根氏は補選後もなお売上税の導入を進めようとするが、自民党はその後の統一地方選でも不振続き。徹夜国会や議長あっせんなどを経て、売上税は結局、廃案となる。

 衆院山口2区補選で敗北しながらガソリン税の暫定税率復活に突き進んだ福田政権。今後、どんなしっぺ返しが来るのか、あるいは来ないのかは、無論まだ分からない。

 でも、当時は廃案に至るまでには金丸信副総理が「このまま、おしん(!)の心境でいればいいというわけにゆかぬ。国民の半数以上が賛成するよう考えねばならない」と大幅見直しを提案し、軌道修正をはかる場面もあった。

 そんな柔軟さや余裕、知恵さえ今の政権党にはない気がしてならない。

 何より、国民生活に直結する政策を実施する場合には、よほど政治家や官僚らが自ら身を削る姿を見せないと納得してもらえないことは、売上税後の消費税導入の際にも痛いほど知ったはずだ。

 私には不思議でならない。なぜ、まず先に政治不信の根源といえる税金の無駄づかいや天下りにもっと具体的にメスを入れようとしないのだろう。20年余、まるで学んでいないともいえるし、それが自民党の限界なのだとみることも可能かもしれない。(論説室)




毎日新聞 2008年5月1日 東京朝刊


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