わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

火に油を注ぐ=野沢和弘

2008-05-08 | Weblog

 こういうのを火に油を注ぐというのかもしれないが、批判を承知で言いたい。ガソリン1リットル25円の暫定税率復活はそんなに騒ぐことか。

 ガソリンが値下げになった。1カ月間だけであることは分かっていた。それで消費者が混乱した? 混乱の中で廃業した給油所もあるというが、この10年間、毎年1000カ所以上のスタンドが廃業し続けている現実も見なければ公平を失するだろう。

 <政治に振り回される庶民>という表層的なとらえ方では、この問題の深刻で重要な本質に迫れない。

 少子高齢化の進展で社会保障費は毎年9200億円ずつ増える。このままでは国がつぶれる。それで毎年2200億円を削ることが政府の至上命令になっている。必要な介護サービスがなかなか受けられないのも、障害者が自己負担を強いられるのも、生活保護費がカットされるのもそのためだ。悪評高い後期高齢者医療制度もそうだ。このままでは医療保険そのものが破綻(はたん)すると言って小泉政権が決めたことではなかったか。

 もはや毎年2200億円を削るという前提が間違っている。乾いたぞうきんを切り刻んでも一滴も出ない。消費税について本気で考えないと手遅れになると思う。そうでなければ10年で59兆円を投じる道路計画を見直し、道路特定財源の一般財源化を完全実施するしかないではないか。

 介護や医療を受けられず生命を脅かされている老人は日本中にいる。それはあなたの親かもしれない。近い将来のあなた自身かもしれない。25円の税金に騒いでいる場合じゃない。(夕刊編集部)




毎日新聞 2008年5月4日 東京朝刊


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