政治への不信や怒りは今、まず先に公務員に向けられているのではなかろうか。その公務員に対して、まるでモノを言えない政治家の情けなさが不満に拍車をかける。多くの国民がそう感じているように思えてならない。
組織をあげてサボり続けた社会保険庁。ゴルフ接待漬けの前防衛事務次官。そして道路特定財源からマッサージチェアを購入したり、豪華旅行をしたり。もちろん、バッシングさえしていれば済むわけではない。だが、公務員への強い憤りは、この国の政治が依然として官僚主導で動いているという本質を人々が見抜いているからだと思う。
にもかかわらず、官僚組織を改編し、権限を縮小しようとすると待っているのはいつもの抵抗だ。「官僚お友だち内閣」と見られているのが支持率低迷の要因の一つのはずなのに、福田康夫首相も公務員改革に力が入っているようには見えない。一方、官庁側から聞こえてくるのは「このまま冬の時代が続けば優秀な人間が入ってこなくなる」といった、あたかも被害者のような声ばかりなのだ。
「ゆとり教育」の旗振り役だった元文部官僚、寺脇研氏が近著「官僚批判」(講談社)で「官僚という職業に人気があり、だれもがなりたがるなどということが、そもそもおかしい」と書いている。
上意下達型から住民参加型の行政へ。国民の意識は確実に変わっている。その行政を担う意欲に燃える者こそ「優秀な人材」なのであり、「ヤワな連中は来なくていい」と寺脇氏は言い切る。
もう、そろそろ発想を変える時だと私も思う。(論説室)
毎日新聞 2008年4月24日 東京朝刊
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