わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

「夜明け前」と信じたい=与良正男(論説室)

2008-03-20 | Weblog

 小泉純一郎元首相に対する評価は今も分かれる。でも、政権が長持ちしたのは、そこそこの支持率を維持したのに加え、「変人はいつ衆院を解散するか分からない」という恐怖心が与野党問わずにあったからだったと思う。

 常識の人・福田康夫首相は双方を持ち合わせていないから苦しいのである。支持率は低迷。与党も野党も「首相は当面解散はできない」とたかをくくっている。例えば日銀総裁人事。民主党はこの問題で解散に追い込もうというのではなく、解散なしと踏んだから、思う存分反対できたような気がする。

 その民主党の小沢一郎代表も顔が見えない。日銀人事で小沢氏は当初、元財務次官、武藤敏郎氏の起用を容認する腹だったが、元々、小沢氏をよく思わない人たちからの反対論を抑えられなかったというのが実相ではなかろうか。

 両党のトップが求心力を失う中、国会が何も決められない一方で経済不安が強まる。先月の本欄で、そんな状況になれば新聞や経済界の一部から「与野党対立をしている場合か」と再び、大連立論が強まるだろうと書いた。私の悪い予感だけは結構当たるのである。しかし、外野席で大連立をはやしても、現実には難しい。私は大連立は大反対だけれど、ダイナミックに動かすエネルギーさえ今の政界にはないと言っていい。

 政治は今、危機的状況にある。それでも「次」に進むための「夜明け前」の状況だと思いたい。「日銀解散」はどうかと思うが、やはり衆院選を通じて有権者が政治を立て直すほかないではないか。そう考えるのは楽観的過ぎるか。




毎日新聞 2008年3月20日 0時02分


コメントを投稿